【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

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…冷て。

冷たい水が喉に流れ込んできて、夢中で飲んだ。

もう1ミリも、1ミクロンも動けねー。
小指一つ、動かせる気がしねー。

「…アイ」

口移しで水を飲ませてくるリツキに抵抗する気力もねー。

「アイ」

リツキがオレを抱き寄せて、頭をなで、

「…フロ入ったら、もっかいしような」

額に口付けた。

バカじゃね?
こいつ、マジでバカじゃね?

「ぜってー、ヤダ」

もはやリツキを見る元気もねー。
新聞部とかオレのこと言いたい放題だったけど、…

「お前がサルじゃね?」

間違いねーな。エロサルリツキ。

「は? うるせーよっ、樋口からのメールを見た時の、俺の気持ちが、わかってたまるか!」

キレ気味に吠えるリツキが、オレを抱きしめる腕に力を込めた。
押しつぶされそうなほど、強く。

ヒグチ…

「そういや、オレ、ヒグチと居たような気がすんだけど?なんでお前とこんなことになってんの?」

聞いたとたん、ピキピキ音が聞こえてきそうな勢いで、リツキのこめかみが脈打った。

「お前のスマホで、樋口が俺にメールしてきた。…ハゲがバスローブで豪快に寝てる写真付き」

言って、またもや怒りがよみがえったのか、リツキが悪態をつく。

「お前、マジでいい加減にしろよ?オトコとラブホで酒飲んで、なんもないわけねーだろっ!?」

もはやひねり潰そうとしているとしか思えない強さで、リツキがオレを締め上げる。
…苦しい。

酒なんか飲んだっけ?

「…ヒグチは?」

「帰った。オレにタクシー代とココの支払いを命じて」

苦虫を噛み潰したような、すげームッツリしたリツキの声。

『大丈夫だよ。…俺、優しいから』

オレ、ヒグチにわりーことしたな。

「お前、樋口とヤるつもりだったんじゃねえだろうな?」

言い逃れを許さない勢いでリツキがオレを、鋭く睨み下ろす。

「…知らね」

リツキが、オレのこと、もういらないって、…

やべー、記憶がよみがえってきたら、感情もよみがえってきて、声が震えた。

「おっ、前なぁ!!そんなの絶対許さねえぞ!?」

リツキが感情むき出しでオレをベッドに押し付けて、…

「…アイ?」

オレの涙に気づいたらしく、力をゆるめてオレをのぞきこんだ。

「なんでか、言え」

言ったら、確実に涙が落ちる。
オレ、多分、目の周りがすげーことになってる。

「アイ?…言って?」

リツキが目尻に優しく口付けて、オレの髪を指で梳く。

「…アイ?」

リツキはずるい。
そんな優しい顔して、まぶたにも頬にも鼻にもキスして、…

オレが抵抗出来ないって分かってる。

「お前が…っ」

涙が溢れてこめかみを伝う。

「オレとはヤリたくねー、とかっ、…」

リツキから顔を背ける。
クソ、オレはもう「泣いてるオンナノコ」にはなりたくねーのに。

「…アイ」

なのに、リツキがオレの顔を両手ではさんで、

「お前、何、聞いたの?」

オレをリツキに向き直らせる。

「ハセガワと、…部室…っ、…」

嗚咽が込み上げてきて、ダセー。
リツキの視線から逃れたくて、頭をやみくもに振リ回すと、リツキが上からオレを抱きしめた。

「…バカ」

肩にリツキの頭が乗って、柔らかい髪がオレの首筋をくすぐる。

「お前とヤりたくないわけないだろ。…お前を抱いたら、こうなるの、分かってたから」

リツキがオレの涙を舐めながら、低くて甘い声を落とし、

「離せなくなる、って」

また隙間なくぴったりと、オレを抱きしめた。
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