60 / 118
hage.60
しおりを挟む
「リツキ先輩にも付け過ぎだって怒られちゃいました。猫は匂いに敏感なのに、って」
ニシモトが舌を出して、肩をすくめる。
…リツキ。
もうオレ、名前聞くだけで泣けそう。
「そっかぁ。ミクちゃん、リツキくんとよく一緒にヒメちゃんのお世話してるもんね」
「はい。ヒメがリツキ先輩のこと大好きなんで、ヒメを連れて、強化練習の応援にも行ってます」
チナツの言葉に満面笑顔で答えるニシモト。
「やっぱりリツキ先輩、めちゃめちゃカッコいいですよね!」
「うんうん、だよね~」
チナツは笑顔でチビ猫をニシモトに返すと、
「じゃあ、そろそろ行くね。またね」
オレを強制連行して、校舎に戻った。
「アイ!ヘコんでる場合じゃないよ。これはヤバイって!」
ニシモトから離れたとたん、チナツの表情が豹変して、ふぬけてるオレをガクガク揺さぶる。
「姫、本気で王子狙いだよ!敵はちゃっかり強化練習まで押しかけてんじゃん!」
オレだって、ヤバいのはわかってる。
ヒートアップしているチナツに、オレは情けない現状を打ち明けた。
「…最近、あいつら、一緒にいるんだ」
「え?」
「昨日、夕方、リツキがニシモトといるとこ、見た」
『寄り添って、微笑みあって』
思い出すと鉛を飲み込んだみたいに胸の奥が重くなって息が詰まる。
あんなトコ、見たくなかった。
『俺、ホントは、ずっとミクのことが好きで。
…この前、初めて、好きな子にキスした』
あんな夢、見たくなかった。
「リツキから、ずっと、シャンプーの匂いがするんだ…」
ニシモトの香りじゃなかったとしても、リツキとニシモトが近くにいたのは事実で。
匂いが移るほど一緒にいたのは事実で。
「…アイ」
チナツがオレを慰めるようにその胸に抱きしめた。
情けないけど、どうしたらいいのかわからない。
シャンプーの匂いに惑わされて、テストはボロボロだし。
カワシマに負けてリツキを怒らせるし。
「…わざとかもね」
オレを励ますようにくっついていたチナツが、おもむろに口を開く。
「わざと?なにが?」
「…宣戦布告って言うの?わざとシャンプーつけすぎて、リツキくんに匂いが移るようにしたのかも。アイを不安にさせて、二人の仲に亀裂を入れるために」
顔を上げると、チナツが真剣な顔で宙をにらんでいた。
ニシモトが?
あの天使みたいな見てくれで?
「カワシマより西本ミクのが手ごわそうだよ。…でも!」
言葉を切ると、チナツは真正面からオレをしっかりと見据え、
「リツキくんが好きなのはアイだよ。カワシマにも西本ミクにも惑わされちゃダメ!」
力強く言い切った。
ニシモトが舌を出して、肩をすくめる。
…リツキ。
もうオレ、名前聞くだけで泣けそう。
「そっかぁ。ミクちゃん、リツキくんとよく一緒にヒメちゃんのお世話してるもんね」
「はい。ヒメがリツキ先輩のこと大好きなんで、ヒメを連れて、強化練習の応援にも行ってます」
チナツの言葉に満面笑顔で答えるニシモト。
「やっぱりリツキ先輩、めちゃめちゃカッコいいですよね!」
「うんうん、だよね~」
チナツは笑顔でチビ猫をニシモトに返すと、
「じゃあ、そろそろ行くね。またね」
オレを強制連行して、校舎に戻った。
「アイ!ヘコんでる場合じゃないよ。これはヤバイって!」
ニシモトから離れたとたん、チナツの表情が豹変して、ふぬけてるオレをガクガク揺さぶる。
「姫、本気で王子狙いだよ!敵はちゃっかり強化練習まで押しかけてんじゃん!」
オレだって、ヤバいのはわかってる。
ヒートアップしているチナツに、オレは情けない現状を打ち明けた。
「…最近、あいつら、一緒にいるんだ」
「え?」
「昨日、夕方、リツキがニシモトといるとこ、見た」
『寄り添って、微笑みあって』
思い出すと鉛を飲み込んだみたいに胸の奥が重くなって息が詰まる。
あんなトコ、見たくなかった。
『俺、ホントは、ずっとミクのことが好きで。
…この前、初めて、好きな子にキスした』
あんな夢、見たくなかった。
「リツキから、ずっと、シャンプーの匂いがするんだ…」
ニシモトの香りじゃなかったとしても、リツキとニシモトが近くにいたのは事実で。
匂いが移るほど一緒にいたのは事実で。
「…アイ」
チナツがオレを慰めるようにその胸に抱きしめた。
情けないけど、どうしたらいいのかわからない。
シャンプーの匂いに惑わされて、テストはボロボロだし。
カワシマに負けてリツキを怒らせるし。
「…わざとかもね」
オレを励ますようにくっついていたチナツが、おもむろに口を開く。
「わざと?なにが?」
「…宣戦布告って言うの?わざとシャンプーつけすぎて、リツキくんに匂いが移るようにしたのかも。アイを不安にさせて、二人の仲に亀裂を入れるために」
顔を上げると、チナツが真剣な顔で宙をにらんでいた。
ニシモトが?
あの天使みたいな見てくれで?
「カワシマより西本ミクのが手ごわそうだよ。…でも!」
言葉を切ると、チナツは真正面からオレをしっかりと見据え、
「リツキくんが好きなのはアイだよ。カワシマにも西本ミクにも惑わされちゃダメ!」
力強く言い切った。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

実在しないのかもしれない
真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・?
※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。
※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。
※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。
EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。
※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。
魔女の虚像
睦月
ミステリー
大学生の星井優は、ある日下北沢で小さな出版社を経営しているという女性に声をかけられる。
彼女に頼まれて、星井は13年前に裕福な一家が焼死した事件を調べることに。
事件の起こった村で、当時働いていたというメイドの日記を入手する星井だが、そこで知ったのは思いもかけない事実だった。
●エブリスタにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる