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hage.58
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「あのさっ、リツ!き、昨日さっ…!」
「ん~?」
翌朝。
緊張にうち震えるオレとは対照的にあくびをかみ殺すリツキ。
「…眠いの?」
「ああ、ちょっと。昨日あんま寝てないから」
…寝てない。
寝ないでナニしてたんだってハナシだしーーーーーっ
「で? なに?」
リツキがオレに目を向ける。
眠そうでも横顔が様になってるって、リツキってマジでマジでずりーよ。
リツキを見上げると、前髪が光に透けて、妙にきれいだった。
コイツ、ホントに、オレのこと好きなんだよな?
つないだ手に力を込めたら、
「ん?」
リツキがうかがうようにオレを見て、何を思ったかそのまま近づくと、朝の通学中、道の真ん中でハグしてきた。
「なんだよ、アイ。さみしかった?」
オレを腕の中に閉じ込めたまま、ハゲに頬ずりする。
「なんか目も腫れてるし。さみしくて泣いちゃった?」
リツキがオレの髪をなでながら、ふざけて瞼にキスしてきた。
リツキの腕の中は、リツキの匂いがした。
ニシモトの香りはなくて、それが嬉しくて、オレの壊れた涙腺はあっという間に緩みそうになる。
「え。お前ホントに、…」
リツキが驚いたようにオレを見た時、
「リっく~~~~~んっ」
前方から猛然ダッシュでカワシマが登場した。
「リっくん。今日から私が公認の彼女よ~っ」
カワシマはオレとリツキの間に割って入ると、リツキの腕にしがみつき、
「いやん。キスする?しちゃう?」
驚異のスピードでリツキに迫る。
「ちょっ、離せ」
リツキに振り払われてもまるでひるまず、
「リっくん。愛は勝ったの。私の方がふさわしいって証明されたの。お茶漬けは追放よっ」
ビシッとオレに向かって人差し指を突きつけた。
「アイ。お前、もしかして、…」
カワシマに跳ね飛ばされて道路にうずくまるオレに、リツキの信じられないものを見るような視線が注がれる。
「平均点は52点。お茶漬けコマちゃんは51点。あらぁ残念~」
てめー、カワシマ。
かけらも残念そうじゃねーし。
オレはお茶漬けじゃねーし。
「…俺を賭けてたワケね。挙句に、負けたワケか」
リツキの声が冷たい。
怖くて、リツキを見れねー。
「…わかった」
リツキの言葉は、オレを切り捨てたみたいに響いて、急いで顔を上げると、リツキが腕にカワシマを絡みつかせたまま、歩き出していた。
「リツ…っ」
リツキは振り返らない。
カワシマがオレを見て勝ち誇ったように笑った。
「大丈夫よ。コマちゃんにはつきっきりで勉強みてくれる優しいタカちゃんがいるから。ねっ」
「へぇ…」
それを聞いたリツキの低い声が、鋭い刃になって、オレの心臓を突き刺した。
「ん~?」
翌朝。
緊張にうち震えるオレとは対照的にあくびをかみ殺すリツキ。
「…眠いの?」
「ああ、ちょっと。昨日あんま寝てないから」
…寝てない。
寝ないでナニしてたんだってハナシだしーーーーーっ
「で? なに?」
リツキがオレに目を向ける。
眠そうでも横顔が様になってるって、リツキってマジでマジでずりーよ。
リツキを見上げると、前髪が光に透けて、妙にきれいだった。
コイツ、ホントに、オレのこと好きなんだよな?
つないだ手に力を込めたら、
「ん?」
リツキがうかがうようにオレを見て、何を思ったかそのまま近づくと、朝の通学中、道の真ん中でハグしてきた。
「なんだよ、アイ。さみしかった?」
オレを腕の中に閉じ込めたまま、ハゲに頬ずりする。
「なんか目も腫れてるし。さみしくて泣いちゃった?」
リツキがオレの髪をなでながら、ふざけて瞼にキスしてきた。
リツキの腕の中は、リツキの匂いがした。
ニシモトの香りはなくて、それが嬉しくて、オレの壊れた涙腺はあっという間に緩みそうになる。
「え。お前ホントに、…」
リツキが驚いたようにオレを見た時、
「リっく~~~~~んっ」
前方から猛然ダッシュでカワシマが登場した。
「リっくん。今日から私が公認の彼女よ~っ」
カワシマはオレとリツキの間に割って入ると、リツキの腕にしがみつき、
「いやん。キスする?しちゃう?」
驚異のスピードでリツキに迫る。
「ちょっ、離せ」
リツキに振り払われてもまるでひるまず、
「リっくん。愛は勝ったの。私の方がふさわしいって証明されたの。お茶漬けは追放よっ」
ビシッとオレに向かって人差し指を突きつけた。
「アイ。お前、もしかして、…」
カワシマに跳ね飛ばされて道路にうずくまるオレに、リツキの信じられないものを見るような視線が注がれる。
「平均点は52点。お茶漬けコマちゃんは51点。あらぁ残念~」
てめー、カワシマ。
かけらも残念そうじゃねーし。
オレはお茶漬けじゃねーし。
「…俺を賭けてたワケね。挙句に、負けたワケか」
リツキの声が冷たい。
怖くて、リツキを見れねー。
「…わかった」
リツキの言葉は、オレを切り捨てたみたいに響いて、急いで顔を上げると、リツキが腕にカワシマを絡みつかせたまま、歩き出していた。
「リツ…っ」
リツキは振り返らない。
カワシマがオレを見て勝ち誇ったように笑った。
「大丈夫よ。コマちゃんにはつきっきりで勉強みてくれる優しいタカちゃんがいるから。ねっ」
「へぇ…」
それを聞いたリツキの低い声が、鋭い刃になって、オレの心臓を突き刺した。
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