【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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「円形脱毛症ですね」

テスト第一日目が終了し、オレは半ば逃げるように学校を後にした。
込み上げるもやもや感と紛れもない敗北感から逃避して、英語のテスト以外に、やろうと決めていたことを決行した。

そう。

「はい、ちょっと撮りま~す」

バイト代も入ったことだし、ついに勇気をふりしぼって皮膚科の門をたたいた。
たのもー。

「あ、動かないで。測りますね~。う~ん、3センチ×2.5センチ」

その結果、ハゲを激写された上にハゲを測定されるという新たな辱めに屈している。

「とりあえず、飲み薬と塗り薬を処方しますから、使ってみてください。あとは、良く食べて、良く寝て、ストレスをためないことですね」

皮膚科医はふちなし眼鏡をくいっと上げると、眼鏡の奥の切れ長の目を細めてニッコリ笑った。

ストレス、…な。

処方された薬を受け取って薬局から出ると、見覚えのある後ろ姿に遭遇した。

なんでオレ、遠くからでも分かるんだ。

リツキの姿。

リツキの隣にいる小柄で長い髪がふわふわしてるのは、ニシモトだろう。

『あんな遅い時間に親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして』

団長。
まだ夕方デスけど。
リツキは強化練のはずデスけど。

親密そうに寄り添って。

風が、ニシモトの髪をかきあげて、横顔をさらす。
頬を染めて、とろけそうに甘く、慕わしげに、リツキを見上げる横顔。

微笑みあって。

この距離じゃ、あり得ないのに、ニシモトの甘い香りがリツキを包んでオレの所まで漂ってくるような気がした。

スマホを取り出して貼られたプリクラを見たら、濡れていた。

なんで、オレ。
泣いてんだ。

リツキは強化練だから、ここんとこ帰りはずっと、バラバラだった。
リツキは強化練だから、一緒に病院に行ってほしいなんて思わなかった。

なのに。

なんでこんなトコでニシモトに寄り添って笑ってんの。
オレがバカみたいにアルファベット漬けになってた間、リツは何してたの。

涙の膜でリツキの後ろ姿がにじむ。

「見るな」

そんなオレの目を、ひんやりした手のひらが覆った。

「…言ったのに」

次いで後ろからふんわり優しい腕が、オレを抱きしめた。

「帰ろう、コマチ」

リツキが見えないようにオレの頭を胸の中に抱え込んで、

「…明日の数学、一緒に勉強しよ」

タカヤがオレの髪をなでた。

「なんで、…」
「買い物してたら、コマチが見えたから」

タカヤが話すと、タカヤの胸が小さく揺れる。
タカヤの胸はニシモトの香りはしないけど、リツキの匂いもしない。
それが、嬉しくて、悲しかった。
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