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hage.54
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「だから、大丈夫ですって。本多リツキはオレとつき、…つき、…付き合って、…」
改めて口にすると恥ずい。
「…チビざる~、慰めるなら、もう少しマシな嘘つけよ」
おいっ
下駄箱で大号泣の早乙女先輩を何とか3年の教室まで引きずって行ったものの、いじいじしていてなかなか離れない。
「イイよな、お前は。タカヤがいて」
人の話を聞けよ!
「だから!オレはタカヤじゃなくて!リツキとっ!…付き合って、…るんです」
なにこの、こそばゆい感じ。
自分で言っちゃうって猛烈恥ずかしいんだけど。
「…もういいよ、チビざる。お前の気持ちはよく分かった。俺たちは解団しても同士だ!つらい時は慰め合おう!」
先輩が両手でオレの手を握りしめる。
「うお~~~んっ、本多リツキが相手じゃ、俺に勝ち目はない~~~」
だから、話聞けって。
「あんな遅い時間に親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして!本多~っ、けだもの~~っ、清純なミクちゃんにナニ教えてんだよ~~~っ」
「早乙女!テスト始まるから早く中に入れ。そこの女子も、…古町か?早く自分の教室に行けよ」
早乙女先輩が再び吠え始めて心底げんなりしたところに、テスト監督の先生がやってきて、オレはようやく解放された。
やべーって!
1時間目のテスト、英語じゃんよ!
急いで自分のクラスまで走ったら。
廊下の曲がり角で前から来た誰かにぶつかった。
あれ…
「きゃあ」
「あ、…わりー」
慌てて立ち上がって跳ね飛ばしてしまった相手を助け起こそうとすると、渦中の西本ミクだった。
「私こそ、すみません、アイ先輩。テスト、頑張ってください」
ニシモトはふんわりと可愛らしい笑顔を向けて、軽やかに立ち去る。
この香り。
ぶつかった時にニシモトからかすかに漂った香りは。
『親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして』
…この前、リツキからしたのと同じ?
オレが知らない香り?
「アイ、遅かったじゃん。もう、心配したよ。頑張ろうね!」
「…あ、…うん」
「アイ?」
英語のテストが始まった。
チナツが応援してくれたけど、全然集中出来ない。
覚えたはずの知識が、端からこぼれ落ちて、代わりに得体の知れない灰色のモヤモヤに覆われていく。
テスト監督で見回りにきたカワシマが、オレの隣に立って、威圧的にオレを見下ろしているのがわかったけど、応える元気がなかった。
オレ、なんのために勝負してたんだっけ。
『間違えてるよ!間違いだらけだよ!』
オレ、やっぱり間違えたのかな。
オレの席から見えるリツキの後ろ姿が、果てしなく遠い気がした。
改めて口にすると恥ずい。
「…チビざる~、慰めるなら、もう少しマシな嘘つけよ」
おいっ
下駄箱で大号泣の早乙女先輩を何とか3年の教室まで引きずって行ったものの、いじいじしていてなかなか離れない。
「イイよな、お前は。タカヤがいて」
人の話を聞けよ!
「だから!オレはタカヤじゃなくて!リツキとっ!…付き合って、…るんです」
なにこの、こそばゆい感じ。
自分で言っちゃうって猛烈恥ずかしいんだけど。
「…もういいよ、チビざる。お前の気持ちはよく分かった。俺たちは解団しても同士だ!つらい時は慰め合おう!」
先輩が両手でオレの手を握りしめる。
「うお~~~んっ、本多リツキが相手じゃ、俺に勝ち目はない~~~」
だから、話聞けって。
「あんな遅い時間に親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして!本多~っ、けだもの~~っ、清純なミクちゃんにナニ教えてんだよ~~~っ」
「早乙女!テスト始まるから早く中に入れ。そこの女子も、…古町か?早く自分の教室に行けよ」
早乙女先輩が再び吠え始めて心底げんなりしたところに、テスト監督の先生がやってきて、オレはようやく解放された。
やべーって!
1時間目のテスト、英語じゃんよ!
急いで自分のクラスまで走ったら。
廊下の曲がり角で前から来た誰かにぶつかった。
あれ…
「きゃあ」
「あ、…わりー」
慌てて立ち上がって跳ね飛ばしてしまった相手を助け起こそうとすると、渦中の西本ミクだった。
「私こそ、すみません、アイ先輩。テスト、頑張ってください」
ニシモトはふんわりと可愛らしい笑顔を向けて、軽やかに立ち去る。
この香り。
ぶつかった時にニシモトからかすかに漂った香りは。
『親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして』
…この前、リツキからしたのと同じ?
オレが知らない香り?
「アイ、遅かったじゃん。もう、心配したよ。頑張ろうね!」
「…あ、…うん」
「アイ?」
英語のテストが始まった。
チナツが応援してくれたけど、全然集中出来ない。
覚えたはずの知識が、端からこぼれ落ちて、代わりに得体の知れない灰色のモヤモヤに覆われていく。
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オレ、なんのために勝負してたんだっけ。
『間違えてるよ!間違いだらけだよ!』
オレ、やっぱり間違えたのかな。
オレの席から見えるリツキの後ろ姿が、果てしなく遠い気がした。
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