54 / 118
hage.54
しおりを挟む
「だから、大丈夫ですって。本多リツキはオレとつき、…つき、…付き合って、…」
改めて口にすると恥ずい。
「…チビざる~、慰めるなら、もう少しマシな嘘つけよ」
おいっ
下駄箱で大号泣の早乙女先輩を何とか3年の教室まで引きずって行ったものの、いじいじしていてなかなか離れない。
「イイよな、お前は。タカヤがいて」
人の話を聞けよ!
「だから!オレはタカヤじゃなくて!リツキとっ!…付き合って、…るんです」
なにこの、こそばゆい感じ。
自分で言っちゃうって猛烈恥ずかしいんだけど。
「…もういいよ、チビざる。お前の気持ちはよく分かった。俺たちは解団しても同士だ!つらい時は慰め合おう!」
先輩が両手でオレの手を握りしめる。
「うお~~~んっ、本多リツキが相手じゃ、俺に勝ち目はない~~~」
だから、話聞けって。
「あんな遅い時間に親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして!本多~っ、けだもの~~っ、清純なミクちゃんにナニ教えてんだよ~~~っ」
「早乙女!テスト始まるから早く中に入れ。そこの女子も、…古町か?早く自分の教室に行けよ」
早乙女先輩が再び吠え始めて心底げんなりしたところに、テスト監督の先生がやってきて、オレはようやく解放された。
やべーって!
1時間目のテスト、英語じゃんよ!
急いで自分のクラスまで走ったら。
廊下の曲がり角で前から来た誰かにぶつかった。
あれ…
「きゃあ」
「あ、…わりー」
慌てて立ち上がって跳ね飛ばしてしまった相手を助け起こそうとすると、渦中の西本ミクだった。
「私こそ、すみません、アイ先輩。テスト、頑張ってください」
ニシモトはふんわりと可愛らしい笑顔を向けて、軽やかに立ち去る。
この香り。
ぶつかった時にニシモトからかすかに漂った香りは。
『親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして』
…この前、リツキからしたのと同じ?
オレが知らない香り?
「アイ、遅かったじゃん。もう、心配したよ。頑張ろうね!」
「…あ、…うん」
「アイ?」
英語のテストが始まった。
チナツが応援してくれたけど、全然集中出来ない。
覚えたはずの知識が、端からこぼれ落ちて、代わりに得体の知れない灰色のモヤモヤに覆われていく。
テスト監督で見回りにきたカワシマが、オレの隣に立って、威圧的にオレを見下ろしているのがわかったけど、応える元気がなかった。
オレ、なんのために勝負してたんだっけ。
『間違えてるよ!間違いだらけだよ!』
オレ、やっぱり間違えたのかな。
オレの席から見えるリツキの後ろ姿が、果てしなく遠い気がした。
改めて口にすると恥ずい。
「…チビざる~、慰めるなら、もう少しマシな嘘つけよ」
おいっ
下駄箱で大号泣の早乙女先輩を何とか3年の教室まで引きずって行ったものの、いじいじしていてなかなか離れない。
「イイよな、お前は。タカヤがいて」
人の話を聞けよ!
「だから!オレはタカヤじゃなくて!リツキとっ!…付き合って、…るんです」
なにこの、こそばゆい感じ。
自分で言っちゃうって猛烈恥ずかしいんだけど。
「…もういいよ、チビざる。お前の気持ちはよく分かった。俺たちは解団しても同士だ!つらい時は慰め合おう!」
先輩が両手でオレの手を握りしめる。
「うお~~~んっ、本多リツキが相手じゃ、俺に勝ち目はない~~~」
だから、話聞けって。
「あんな遅い時間に親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして!本多~っ、けだもの~~っ、清純なミクちゃんにナニ教えてんだよ~~~っ」
「早乙女!テスト始まるから早く中に入れ。そこの女子も、…古町か?早く自分の教室に行けよ」
早乙女先輩が再び吠え始めて心底げんなりしたところに、テスト監督の先生がやってきて、オレはようやく解放された。
やべーって!
1時間目のテスト、英語じゃんよ!
急いで自分のクラスまで走ったら。
廊下の曲がり角で前から来た誰かにぶつかった。
あれ…
「きゃあ」
「あ、…わりー」
慌てて立ち上がって跳ね飛ばしてしまった相手を助け起こそうとすると、渦中の西本ミクだった。
「私こそ、すみません、アイ先輩。テスト、頑張ってください」
ニシモトはふんわりと可愛らしい笑顔を向けて、軽やかに立ち去る。
この香り。
ぶつかった時にニシモトからかすかに漂った香りは。
『親密そうに寄り添って、微笑みあって、抱き合ったりして』
…この前、リツキからしたのと同じ?
オレが知らない香り?
「アイ、遅かったじゃん。もう、心配したよ。頑張ろうね!」
「…あ、…うん」
「アイ?」
英語のテストが始まった。
チナツが応援してくれたけど、全然集中出来ない。
覚えたはずの知識が、端からこぼれ落ちて、代わりに得体の知れない灰色のモヤモヤに覆われていく。
テスト監督で見回りにきたカワシマが、オレの隣に立って、威圧的にオレを見下ろしているのがわかったけど、応える元気がなかった。
オレ、なんのために勝負してたんだっけ。
『間違えてるよ!間違いだらけだよ!』
オレ、やっぱり間違えたのかな。
オレの席から見えるリツキの後ろ姿が、果てしなく遠い気がした。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

【完結】あの日、君の本音に気付けなくて
ナカジマ
青春
藤木涼介と清水凛は、中学3年のバレンタインで両片思いから両想いになった。しかし高校生になってからは、何となく疎遠になってしまっていた。両想いになったからゴールだと勘違いしている涼介と、ちゃんと恋人同士になりたいと言い出せない凛。バスケ部が楽しいから良いんだと開き直った涼介と、自分は揶揄われたのではないかと疑い始める凛。お互いに好意があるにも関わらず、以前よりも複雑な両片思いに陥った2人。
とある理由から、女子の好意を理解出来なくなったバスケ部男子と、引っ込み思案で中々気持ちを伝えられない吹奏楽部女子。普通の男女が繰り広げる、部活に勉強、修学旅行。不器用な2人の青春やり直しストーリー。

実在しないのかもしれない
真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・?
※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。
※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。
※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
「史上まれにみる美少女の日常」
綾羽 ミカ
青春
鹿取莉菜子17歳 まさに絵にかいたような美少女、街を歩けば一日に20人以上ナンパやスカウトに声を掛けられる少女。家は団地暮らしで母子家庭の生活保護一歩手前という貧乏。性格は非常に悪く、ひがみっぽく、ねたみやすく過激だが、そんなことは一切表に出しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる