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hage.53
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「I my me you your you she her her…」
「それ、中学英語じゃね?」
「うるせー、よけーなこと言うな。知識が抜けるっ」
期末テスト当日。
朝の登校中。
この土日に詰め込めるだけ詰め込んだアルファベットを一つも漏らさないように、オレは必死だ。
涼しい顔で隣を歩くリツキにこの苦しみは分かるまい。
「he his him…」
だがしかし!
バイト以外はタカヤとハセガワと図書館で猛勉強したから、間違いなく、オレの頭は過去最高潮にグローバル化している。
「ふふ、…ふっ!?」
一皮むけまくりのオレに浸っていたら、
急に、リツキがオレの頭を両手でわしづかみ、ぐらんぐらん揺さぶってきた。
「てめー、何すんだ!抜けるだろ!」
「そうかよ!髪じゃなくって良かったな」
リツキが冷たく言い放って横を向く。
「…リツ?」
怒ってる?
「お前、何か様子変だし、なんで今回に限ってそんな気合入れてんだよ?なんか賭けてるわけ?」
リツキの冷たい視線が刺さる。
やべー。
「や。まさか、そんな、…」
「はよー、リツキ。聞いてくれよ、俺、昨日アルファベットに追いかけられる夢見た」
もごもご言い訳を探していたらハセガワが現れた。
ナイス登場!
「は?なに、お前も勉強したの?」
「俺は友情に厚い男だぜ。礼はゴリゴリくんチーズ味でいい」
「…ふざけんな」
リツキの注意がそがれた隙に、ポイントノートを読み返す。
英語だけは絶対負けられねー。
「おはよ、コマチ。頑張れよ」
「おー、まかせろ」
下駄箱でばったりタカヤと会った。
タカヤとハセガワが一瞬だけ顔を見合わせて、すぐに背け、タカヤは駆け足で教室に向かっていった。
「いてっ」
なぜか突然リツキにリボンを引っ張られ、抗議しようと見ると、さっさと歩いていく後姿しかなかった。
…不機嫌?
「おい、リツ!ま、…」
「悪夢だ」
リツキを追いかけようとしたら、目の隈が激しすぎてもはや人相まで変わっている赤軍団長、早乙女先輩がオレの前を通過した。
「あ、おはよござ、…」
近寄らない方がいいような気もするけど、一応形ばかりの挨拶をしてみると、
「チ、チビざる~~~~~~っっ」
オレにしがみついて大音量で泣きだした。挙句、
「なんてむごい現実なんだ!ミクちゃんが、ミクちゃんが、あの本多リツキとデキてるなんて~~~~~~~っっ」
校舎中に響き渡るような絶叫に、下駄箱付近にいた人々は、みんなぎょっとして振り返り、注目の的になったオレは、あんなに必死に詰め込んだアルファベットが根こそぎ抜けていくのを感じていた。
「それ、中学英語じゃね?」
「うるせー、よけーなこと言うな。知識が抜けるっ」
期末テスト当日。
朝の登校中。
この土日に詰め込めるだけ詰め込んだアルファベットを一つも漏らさないように、オレは必死だ。
涼しい顔で隣を歩くリツキにこの苦しみは分かるまい。
「he his him…」
だがしかし!
バイト以外はタカヤとハセガワと図書館で猛勉強したから、間違いなく、オレの頭は過去最高潮にグローバル化している。
「ふふ、…ふっ!?」
一皮むけまくりのオレに浸っていたら、
急に、リツキがオレの頭を両手でわしづかみ、ぐらんぐらん揺さぶってきた。
「てめー、何すんだ!抜けるだろ!」
「そうかよ!髪じゃなくって良かったな」
リツキが冷たく言い放って横を向く。
「…リツ?」
怒ってる?
「お前、何か様子変だし、なんで今回に限ってそんな気合入れてんだよ?なんか賭けてるわけ?」
リツキの冷たい視線が刺さる。
やべー。
「や。まさか、そんな、…」
「はよー、リツキ。聞いてくれよ、俺、昨日アルファベットに追いかけられる夢見た」
もごもご言い訳を探していたらハセガワが現れた。
ナイス登場!
「は?なに、お前も勉強したの?」
「俺は友情に厚い男だぜ。礼はゴリゴリくんチーズ味でいい」
「…ふざけんな」
リツキの注意がそがれた隙に、ポイントノートを読み返す。
英語だけは絶対負けられねー。
「おはよ、コマチ。頑張れよ」
「おー、まかせろ」
下駄箱でばったりタカヤと会った。
タカヤとハセガワが一瞬だけ顔を見合わせて、すぐに背け、タカヤは駆け足で教室に向かっていった。
「いてっ」
なぜか突然リツキにリボンを引っ張られ、抗議しようと見ると、さっさと歩いていく後姿しかなかった。
…不機嫌?
「おい、リツ!ま、…」
「悪夢だ」
リツキを追いかけようとしたら、目の隈が激しすぎてもはや人相まで変わっている赤軍団長、早乙女先輩がオレの前を通過した。
「あ、おはよござ、…」
近寄らない方がいいような気もするけど、一応形ばかりの挨拶をしてみると、
「チ、チビざる~~~~~~っっ」
オレにしがみついて大音量で泣きだした。挙句、
「なんてむごい現実なんだ!ミクちゃんが、ミクちゃんが、あの本多リツキとデキてるなんて~~~~~~~っっ」
校舎中に響き渡るような絶叫に、下駄箱付近にいた人々は、みんなぎょっとして振り返り、注目の的になったオレは、あんなに必死に詰め込んだアルファベットが根こそぎ抜けていくのを感じていた。
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