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hage.50
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「間違えてるよ!間違いだらけだよ!」
朝イチで、チナツにダメ出しされた。
「なんでだよ?」
「中庭を見てごらんよ」
教室の窓から中庭を見下ろすと、チビ猫にミルクをやるリツキと西本ミクの姿が見える。
リツキと学校に来たら、昇降口でニシモトが待っていて、
『リツキ先輩、見てください。ヒメ、こんなにきれいになりましたよ』
洗われて首に銀色のリボンを結んだチビ猫が得意満面にオレを見てきた。
なんだよ、その偉そうな態度は。
オレが応戦すると、チビ猫はさっさとリツキに飛び乗り、奴らは連れ立って朝のミルクタイムに行ってしまった。
「姫と王子、急接近じゃん!悠長に英語なんてやってる場合なの?」
「…だって、タカヤがこれだけ覚えろって」
「もおぉぉ~、鷹谷くんと接近してる場合じゃないでしょ~~」
リツキは動物が好きなんだよ。
団地じゃ飼えねーからいつも悲しそうだったし。
「ちょ、…あの2人、寄り添ってるじゃん!アイも一緒に中庭行った方がいいよ」
チナツがそう勧めてくれるけど、どう考えてもチビ猫はオレを目の敵にしているから歓迎されねーし。
「あのチビ猫、ニシモトが飼うことにしたんだってさ」
「う~ん、敵ながらあっぱれ。押さえるツボを心得てるね…」
チナツが複雑そうに窓の外をにらむ。
中庭では、リツキに撫でられて、チビ猫が喉を鳴らしている。
チビ猫の首にある銀色のリボンは、リツキが結んだんじゃねーよな。
オレの髪に結ばれた金色のリボンと、…同じじゃねーよな。
無理やり英語に向き直り、
「…なぁ、仮定法の意味がさっぱりなんだけどさ、この問題どうなんの?」
昨日タカヤと勉強したノートをチナツに見せた。
オレは、リツキのペットでもおもちゃでもねー。
受けた勝負は勝たなきゃ意味がねー。
チナツはちょっと切なそうな顔をして窓から目を離し、オレの前の椅子に座って、
「As he was sick, he couldn't play soccer. を仮定法過去完了の文にする?
なんでそんなことしなくちゃいけないんだって話だよね」
憤りながら、一緒に難問に挑んでくれた。
「あー、違うよ、コマチ。それだと意味が分からなくなるから…」
「いや、最初から意味なんて分かんねーんだけど…」
部活終了後、公立図書館。
当たり前のようにタカヤがオレを待っていて、グループ学習室なるものをゲットしていた。
おかげでギャーギャー言いながら、勉強できるけど、タカヤは激しくスパルタで、みっちり英語漬けになって、ストレスでハゲが広がりそうな危機に陥った。
「はー、アルファベット恐怖症になりそうだぜ」
オレが机に突っ伏すと、タカヤが慰めるようにオレの頭をなでた。
「今日はここまでにして、帰ろうか」
リツキはテストまでサッカー選抜メンバーの強化練で別グランドに行っている。
アイツ、勉強する暇なんてないと思うんだけど、なんで成績イイんだろう。
リツキ七不思議に頭を悩ませながら図書館を出ようとしたら、出口でばったりハセガワに会った。
「お、…前!アイ!また浮気か。ちょっとは学習しろよ」
「やりすぎてハゲそう…」
あ!やべー、疲れのあまり禁句を口走ってしまった。
けど、ハセガワはこの重要なヒミツに気付いた様子は全くなく、
「お前、教わる相手を選べよ。よりによってタカヤはねーだろ」
オレの手をつかんでタカヤから引き離し、たたみかける。
「よりによって、俺で悪かったね。本多は1年の女子と楽しそうにしてるしね」
朝イチで、チナツにダメ出しされた。
「なんでだよ?」
「中庭を見てごらんよ」
教室の窓から中庭を見下ろすと、チビ猫にミルクをやるリツキと西本ミクの姿が見える。
リツキと学校に来たら、昇降口でニシモトが待っていて、
『リツキ先輩、見てください。ヒメ、こんなにきれいになりましたよ』
洗われて首に銀色のリボンを結んだチビ猫が得意満面にオレを見てきた。
なんだよ、その偉そうな態度は。
オレが応戦すると、チビ猫はさっさとリツキに飛び乗り、奴らは連れ立って朝のミルクタイムに行ってしまった。
「姫と王子、急接近じゃん!悠長に英語なんてやってる場合なの?」
「…だって、タカヤがこれだけ覚えろって」
「もおぉぉ~、鷹谷くんと接近してる場合じゃないでしょ~~」
リツキは動物が好きなんだよ。
団地じゃ飼えねーからいつも悲しそうだったし。
「ちょ、…あの2人、寄り添ってるじゃん!アイも一緒に中庭行った方がいいよ」
チナツがそう勧めてくれるけど、どう考えてもチビ猫はオレを目の敵にしているから歓迎されねーし。
「あのチビ猫、ニシモトが飼うことにしたんだってさ」
「う~ん、敵ながらあっぱれ。押さえるツボを心得てるね…」
チナツが複雑そうに窓の外をにらむ。
中庭では、リツキに撫でられて、チビ猫が喉を鳴らしている。
チビ猫の首にある銀色のリボンは、リツキが結んだんじゃねーよな。
オレの髪に結ばれた金色のリボンと、…同じじゃねーよな。
無理やり英語に向き直り、
「…なぁ、仮定法の意味がさっぱりなんだけどさ、この問題どうなんの?」
昨日タカヤと勉強したノートをチナツに見せた。
オレは、リツキのペットでもおもちゃでもねー。
受けた勝負は勝たなきゃ意味がねー。
チナツはちょっと切なそうな顔をして窓から目を離し、オレの前の椅子に座って、
「As he was sick, he couldn't play soccer. を仮定法過去完了の文にする?
なんでそんなことしなくちゃいけないんだって話だよね」
憤りながら、一緒に難問に挑んでくれた。
「あー、違うよ、コマチ。それだと意味が分からなくなるから…」
「いや、最初から意味なんて分かんねーんだけど…」
部活終了後、公立図書館。
当たり前のようにタカヤがオレを待っていて、グループ学習室なるものをゲットしていた。
おかげでギャーギャー言いながら、勉強できるけど、タカヤは激しくスパルタで、みっちり英語漬けになって、ストレスでハゲが広がりそうな危機に陥った。
「はー、アルファベット恐怖症になりそうだぜ」
オレが机に突っ伏すと、タカヤが慰めるようにオレの頭をなでた。
「今日はここまでにして、帰ろうか」
リツキはテストまでサッカー選抜メンバーの強化練で別グランドに行っている。
アイツ、勉強する暇なんてないと思うんだけど、なんで成績イイんだろう。
リツキ七不思議に頭を悩ませながら図書館を出ようとしたら、出口でばったりハセガワに会った。
「お、…前!アイ!また浮気か。ちょっとは学習しろよ」
「やりすぎてハゲそう…」
あ!やべー、疲れのあまり禁句を口走ってしまった。
けど、ハセガワはこの重要なヒミツに気付いた様子は全くなく、
「お前、教わる相手を選べよ。よりによってタカヤはねーだろ」
オレの手をつかんでタカヤから引き離し、たたみかける。
「よりによって、俺で悪かったね。本多は1年の女子と楽しそうにしてるしね」
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