【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

文字の大きさ
上 下
49 / 118

hage.49

しおりを挟む
あのチビ猫はとんだ食わせ物だ。
うかつに近づいたら、ハゲがバレる気がする。用心に越したことはない。

「わかってるじゃん、アイ!」

チナツがオレの手をつかんで上下に揺らす。

「お、おう」
「油断大敵よ!」

かと思ったら、オレの手を握りしめて、その胸に抱える。

…柔らかい。

「転ばぬ先の杖よ!」
「う、うん」

…柔らかい。

「君子危うきに近寄らずよ!」
「え、…えっと?」
「はぁ、次の古典当たるんだよね。アイ、漢文訳した?」

訳すわけねーじゃん。

チナツの胸の柔らかさがオレから思考力を奪って、呆けているうちに何の話をしていたんだかわからなくなってしまったが、要するにあのチビ猫はオレの敵ってことだよな。

負けるもんか!

「あ!思い出した!」

もう一つ、絶対負けられない勝負があるんだった!

「アイ、今日の帰り、ヒメのグッズ買いに、…」

チビ猫と遊んでいたリツキがオレに向かって歩いてくる。

「わりーけど、オレ、今回マジだから!」

「あ?」

怪訝そうなリツキにしっかりはっきり宣言する。

「来週の期末は、ぜってー平均取るからな!見てろよ、リツ!」

それで、リツキのカノジョとしてちょっとくらいは周りにも納得してもらうんだ。

「なに、お前、勉強すんの?」

「ふ。わりーな。お前と遊んでる暇はねーんだ」

オレだってやればできるってとこを見せてやるぜ!

「あそ。じゃあ俺、今日は寄り道して帰るから」

「おー」

そんな悠長なことを言っていられるのも今のウチだよ、リツキくん。
期末の成績を見て、オレに惚れ直したって遅いんだよ。

「ふふふふ…」

「…面倒くさいことにならないといいけど」

チナツがげんなりした顔でオレを見ていたけど、もちろんオレは気づかなかった。



「ダメだ、さっぱりわからねー。何が分かんないかもわからねー」

テスト前週間で、部活終わりが早いから、終わってから公立図書館なるものに寄って英語のテキストを広げてみたけど、何の効果も得られなかった。

クソ、オレは日本から出ねー。
薄情なチナツはタケダと待ち合わせとかでさっさと帰っちまうし。

「コマチ、英語のテストで川嶋と賭けてんだって?」

すっかりやる気を失って机に突っ伏してるオレの上から声が降ってきた。

「タカヤ!」

勢いよく顔を上げると、爽やかスマイルでタカヤが立っていた。
ちっ、オレより図書館が似合う。じゃなくて!

「お前、妙な場面で妙な発言するなよな!だいたいオレらは、…」

勢い込んでオレが詰め寄ると、近くから咳ばらいが聞こえた。
あ、図書館でした。

「しー。コマチ」

タカヤが人差し指を口に当てて、オレを座らせる。

「俺、英語得意だよ?教えようか」

周りの迷惑にならないよう、タカヤがオレの耳元で話す。

「マジ?天の助け?」

身を乗り出すオレに、タカヤは若干おののきながらも、

「…本多には頼まないの?」

机に片肘をついて俺をのぞき込む。

…頼めるわけねーじゃん。

「あ!お前またリツに余計なこと言うなよ!賭けの対象にされたってバレたら、アイツぜってー怒るし」

オレのお願いに、タカヤは少し困ったように笑って、

「いいけど、…」

オレの前髪を一房つまんだ。

「コマチってホント、…」

な、なんだよ。

タカヤのもの言いたげな視線にちょっとたじろいで頭を引く。
髪がタカヤの指をすり抜けて、オレの額にかかった。

ま、まあ、これでテストは何とかなるだろ。
週末にバイト代が入るから、ハゲ対策にもかかれるし。

「ふさわしいカノジョ」に向かって着々と進んでいるはず。
なのに、なぜか落ち着かない。
…オレ、間違えてねーよな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛さずにはいられない

松澤 康廣
青春
 100%の確実性をもって私たちは未来の行動を選ぶことは出来ません。愛もまた同様です。どれだけ考え抜いたとしても、不確実は確実に存在し、それが私たちを苦しめます。それでも私たちは(私たちの一部)は愛こそが全てであるかのように愛さずにはいられません。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

詩集(ポエム?)

凛音
青春
初めまして、思いつくままに詩(ポエム) を書いていこうと思います。 リクエストもお待ちしております(笑)

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

悪夢なのかやり直しなのか。

田中ボサ
ファンタジー
公爵家嫡男、フリッツ・マルクスは貴族学院の入学式の朝に悪夢を見た。 だが、フリッツは悪夢を真実だと思い、行動を起こす。 叔父の命を救い、病気に侵される母親を救う。 妹の学園生活を悪夢で終わらせないために奔走するフリッツ。 悪夢の中でフリッツは周囲が見えていなかったため、家族や友人を救うことができずにすべてが終わってしまい絶望する。 単なる悪夢だったのか、人生をやり直しているのか、フリッツも周囲もわからないまま、それでも現実を幸せにするように頑張るお話。 ※なろう様でも公開中です(完結済み)

【完結】あの日、君の本音に気付けなくて

ナカジマ
青春
藤木涼介と清水凛は、中学3年のバレンタインで両片思いから両想いになった。しかし高校生になってからは、何となく疎遠になってしまっていた。両想いになったからゴールだと勘違いしている涼介と、ちゃんと恋人同士になりたいと言い出せない凛。バスケ部が楽しいから良いんだと開き直った涼介と、自分は揶揄われたのではないかと疑い始める凛。お互いに好意があるにも関わらず、以前よりも複雑な両片思いに陥った2人。 とある理由から、女子の好意を理解出来なくなったバスケ部男子と、引っ込み思案で中々気持ちを伝えられない吹奏楽部女子。普通の男女が繰り広げる、部活に勉強、修学旅行。不器用な2人の青春やり直しストーリー。

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

靴磨きの聖女アリア

さとう
恋愛
孤児の少女アリア。彼女は八歳の時に自分が『転生者』であることを知る。 記憶が戻ったのは、両親に『口減らし』として捨てられ、なんとかプロビデンス王国王都まで辿り着いた時。 スラム街の小屋で寝ていると、同じ孤児の少年クロードと知り合い、互いに助け合って生きていくことになる。 アリアは、生きるために『靴磨き』をすることを提案。クロードと一緒に王都で靴磨きを始め、生活は楽ではなかったが何とか暮らしていけるようになる。 そんなある日……ちょっとした怪我をしたクロードを、アリアは魔法で治してしまう。アリアは『白魔法』という『聖女』にしか使えない希少な魔法の使い手だったのだ。 靴磨きを始めて一年後。とある事件が起きてクロードと離れ離れに。アリアは靴磨き屋の常連客であった老夫婦の養女となり、いつしかクロードのことも忘れて成長していく。そして、アリアもすっかり忘れていた『白魔法』のことが周りにバレて、『聖女』として魔法学園に通うことに。そして、魔法学園で出会ったプロビデンス王国の第一王子様は何と、あのクロードで……?

処理中です...