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hage.48
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授業中の校舎は静まり返っていて、時折風に乗って、説明する先生や答える生徒の声が運ばれてきた。
「あら、あなた、さっきの…」
保健室は本日2度目。
オレを見る養護教諭の視線が、なにやらもの言いたげだけど。
「ちびザル、また来、…っ!」
もう起きてベッドに座っていた赤軍団長、早乙女先輩にさえぎられた。
「ミクちゃん!!」
そしてなぜか唐突に、早乙女先輩が立ち上がって直立不動の体勢をとる。
「なに、お前ら、知り合い?」
ニシモトを見ても全く状況が飲み込めないようでぽかんとしているが、
「じっ、自分は、3年E組の早乙女カズマであります!にゅ、…入学式の時からずっと見てました」
早乙女先輩は周りの空気に一切構うことなく、
「好きです!付き合って下さい!」
まさかの告白をした。
「団長さん、やるね~」
昼休みの中庭。
チナツが楽しそうに、タコさんウインナーを口に入れ、オレにも一つ分けてくれる。
「熱で頭沸いたんじゃね?ニシモトは逃げ出すし、団長はショック受けてまた寝込むし、保健の先生には怒られるし」
ため息をつきたい気分だか、チナツのウインナーが美味いので許す。
「で、あれが噂のヒメちゃん」
チナツの指さす方には、リツキに構われるチビ猫とクラスの男子らと、ニシモトの姿が見える。
「どこがヒメなんだよ、あのチビ」
そもそもあのチビは、茂みの下で脚を蔦に絡まれて動けなくなるという失態を冒したらしい。
リツキが無理矢理蔦を切って助け出したけど、片脚に多少怪我をしていて、十分に歩けない状態だ。
保健室で手当してもらい、今はミルクを与えられて、似合わないくせに女王然としている。
「問題は、ヒメじゃなくて、西本ミクだね」
なぜかオレを敵対視してくるチビ猫に遠くから威嚇の視線を送っていると、チナツが不穏な発言をかますから、一気に現実に引き戻された。
「問題って? 団長のこと?」
チナツがくれたほうれん草の胡麻和えも美味い。
チナツは絶対いいお嫁さんになると思う。
「まあ、それはそれで問題だけど」
チナツは言葉を切って咳払いをしてから、
「西本ミクは、今年の1年でダントツ人気NO.1なんだよ。小動物を介した王子との出会いなんてもう、絶好の恋愛シチュエーションじゃん!」
指を立ててそれをぶんぶん振り回し、力説する。
…王子?
「姫が王子に出会っちゃった訳だよ。あの顔を見て、何も思わないの?」
…チビ猫の顔は終始緩みっぱなしだ。
リツキの指まで舐めてやがる。
オレのハゲは容赦無く引っかいたくせに。
「…裏表あり過ぎだな」
「あら、あなた、さっきの…」
保健室は本日2度目。
オレを見る養護教諭の視線が、なにやらもの言いたげだけど。
「ちびザル、また来、…っ!」
もう起きてベッドに座っていた赤軍団長、早乙女先輩にさえぎられた。
「ミクちゃん!!」
そしてなぜか唐突に、早乙女先輩が立ち上がって直立不動の体勢をとる。
「なに、お前ら、知り合い?」
ニシモトを見ても全く状況が飲み込めないようでぽかんとしているが、
「じっ、自分は、3年E組の早乙女カズマであります!にゅ、…入学式の時からずっと見てました」
早乙女先輩は周りの空気に一切構うことなく、
「好きです!付き合って下さい!」
まさかの告白をした。
「団長さん、やるね~」
昼休みの中庭。
チナツが楽しそうに、タコさんウインナーを口に入れ、オレにも一つ分けてくれる。
「熱で頭沸いたんじゃね?ニシモトは逃げ出すし、団長はショック受けてまた寝込むし、保健の先生には怒られるし」
ため息をつきたい気分だか、チナツのウインナーが美味いので許す。
「で、あれが噂のヒメちゃん」
チナツの指さす方には、リツキに構われるチビ猫とクラスの男子らと、ニシモトの姿が見える。
「どこがヒメなんだよ、あのチビ」
そもそもあのチビは、茂みの下で脚を蔦に絡まれて動けなくなるという失態を冒したらしい。
リツキが無理矢理蔦を切って助け出したけど、片脚に多少怪我をしていて、十分に歩けない状態だ。
保健室で手当してもらい、今はミルクを与えられて、似合わないくせに女王然としている。
「問題は、ヒメじゃなくて、西本ミクだね」
なぜかオレを敵対視してくるチビ猫に遠くから威嚇の視線を送っていると、チナツが不穏な発言をかますから、一気に現実に引き戻された。
「問題って? 団長のこと?」
チナツがくれたほうれん草の胡麻和えも美味い。
チナツは絶対いいお嫁さんになると思う。
「まあ、それはそれで問題だけど」
チナツは言葉を切って咳払いをしてから、
「西本ミクは、今年の1年でダントツ人気NO.1なんだよ。小動物を介した王子との出会いなんてもう、絶好の恋愛シチュエーションじゃん!」
指を立ててそれをぶんぶん振り回し、力説する。
…王子?
「姫が王子に出会っちゃった訳だよ。あの顔を見て、何も思わないの?」
…チビ猫の顔は終始緩みっぱなしだ。
リツキの指まで舐めてやがる。
オレのハゲは容赦無く引っかいたくせに。
「…裏表あり過ぎだな」
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