【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

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緊張と不安から解放されたせいか、胸の奥につかえていた塊が溶け出して、涙に変わった。

「マジで泣き虫だな」

そう言うリツキは、オレを腕の中に堅く閉じ込めて、頭にキスする。

「ハゲに響くぞ?」

うるせー。

リツキを睨むと、リツキは優しく笑って、オレの目尻に口づけた。

「…キス魔」

悔しくなって、そう言うと、

「お前がもの欲しそうにしてるからだろ」

リツキが平然と言い返す。

「な、…っ」

なんか、コイツ、ハレンチじゃね?
だいたいキスプリとか、さらし者じゃね?

「順番待たせてるから出るぞ」

リツキがオレの手を引いて、プリ機の中からでると、女子らが並んでいて、

「待たせてごめんね」

嘘くさいリツキスマイルに一瞬で赤くなった。

「サッカーの、…」
「本多くんっ!」
「かっこいい~~っ」
「頑張って下さい!」

次々と黄色い歓声が上がる。

居心地悪くて、リツキの手を振りほどこうとしたけど、指をがっちり確保されていて引き抜けなかった。

「あの、…カノジョさんですか」

女子の一人が上目づかいにリツキを見る。
残りの女子らが一斉にオレに目を向けて、緊張でハゲそうになった。

「そうだよ」

無駄に爽やかさを振りまきながら、リツキがうなずく。

なんでリツキは普通なんだ。
オレは絡みつくような視線に身の置き所がねーっつーのに!

「じゃあね」

リツキに引きずられるようにして彼女らから離れた。

「よし、このプリ、スマホケースに入れるか」

リツキは俄然、機嫌がよさそうで、ホントにスマートフォンを取り出して、あろうことかオレのスマホまで奪い取っていたけど、オレはなんかへこんでいた。

「お前、デコにもちゃんと貼っとけよ」

スマホに貼るついでに、リツキがオレの額にまたプリを貼っても、スルーするくらいへこんでいた。

あいつらの視線が語ってた。
「身の程知らずのハゲ」って。

いや、ハゲは知らねーか。

でも。
「いい気になるな、勘違いヤロー」くらいは言ってた。

だいたいリツキは。

「なぁ、ゴリゴリくん、食ってこうぜ」
「…もう食べた」
「ああ?」

オレのどこが好きなんだ?

「アイは10本くらい余裕だろ」

リツキがコンビニでゴリゴリくんを買う姿を見ながら、どうにも自分が空回りしている感じがぬぐえなかった。

ハゲだし。カピバラ体型だし。
オンナノコらしくないし。
ハゲだし。(2回目)

「ほら、イチゴ味」

リツキがオレの口にアイスバーを押し込む。

ゴリゴリくん、イチゴ味も最高っ!じゃなくて。
…バイト代が入ったら、皮膚科に行ってみようかな。
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