42 / 118
hage.42
しおりを挟む
緊張と不安から解放されたせいか、胸の奥につかえていた塊が溶け出して、涙に変わった。
「マジで泣き虫だな」
そう言うリツキは、オレを腕の中に堅く閉じ込めて、頭にキスする。
「ハゲに響くぞ?」
うるせー。
リツキを睨むと、リツキは優しく笑って、オレの目尻に口づけた。
「…キス魔」
悔しくなって、そう言うと、
「お前がもの欲しそうにしてるからだろ」
リツキが平然と言い返す。
「な、…っ」
なんか、コイツ、ハレンチじゃね?
だいたいキスプリとか、さらし者じゃね?
「順番待たせてるから出るぞ」
リツキがオレの手を引いて、プリ機の中からでると、女子らが並んでいて、
「待たせてごめんね」
嘘くさいリツキスマイルに一瞬で赤くなった。
「サッカーの、…」
「本多くんっ!」
「かっこいい~~っ」
「頑張って下さい!」
次々と黄色い歓声が上がる。
居心地悪くて、リツキの手を振りほどこうとしたけど、指をがっちり確保されていて引き抜けなかった。
「あの、…カノジョさんですか」
女子の一人が上目づかいにリツキを見る。
残りの女子らが一斉にオレに目を向けて、緊張でハゲそうになった。
「そうだよ」
無駄に爽やかさを振りまきながら、リツキがうなずく。
なんでリツキは普通なんだ。
オレは絡みつくような視線に身の置き所がねーっつーのに!
「じゃあね」
リツキに引きずられるようにして彼女らから離れた。
「よし、このプリ、スマホケースに入れるか」
リツキは俄然、機嫌がよさそうで、ホントにスマートフォンを取り出して、あろうことかオレのスマホまで奪い取っていたけど、オレはなんかへこんでいた。
「お前、デコにもちゃんと貼っとけよ」
スマホに貼るついでに、リツキがオレの額にまたプリを貼っても、スルーするくらいへこんでいた。
あいつらの視線が語ってた。
「身の程知らずのハゲ」って。
いや、ハゲは知らねーか。
でも。
「いい気になるな、勘違いヤロー」くらいは言ってた。
だいたいリツキは。
「なぁ、ゴリゴリくん、食ってこうぜ」
「…もう食べた」
「ああ?」
オレのどこが好きなんだ?
「アイは10本くらい余裕だろ」
リツキがコンビニでゴリゴリくんを買う姿を見ながら、どうにも自分が空回りしている感じがぬぐえなかった。
ハゲだし。カピバラ体型だし。
オンナノコらしくないし。
ハゲだし。(2回目)
「ほら、イチゴ味」
リツキがオレの口にアイスバーを押し込む。
ゴリゴリくん、イチゴ味も最高っ!じゃなくて。
…バイト代が入ったら、皮膚科に行ってみようかな。
「マジで泣き虫だな」
そう言うリツキは、オレを腕の中に堅く閉じ込めて、頭にキスする。
「ハゲに響くぞ?」
うるせー。
リツキを睨むと、リツキは優しく笑って、オレの目尻に口づけた。
「…キス魔」
悔しくなって、そう言うと、
「お前がもの欲しそうにしてるからだろ」
リツキが平然と言い返す。
「な、…っ」
なんか、コイツ、ハレンチじゃね?
だいたいキスプリとか、さらし者じゃね?
「順番待たせてるから出るぞ」
リツキがオレの手を引いて、プリ機の中からでると、女子らが並んでいて、
「待たせてごめんね」
嘘くさいリツキスマイルに一瞬で赤くなった。
「サッカーの、…」
「本多くんっ!」
「かっこいい~~っ」
「頑張って下さい!」
次々と黄色い歓声が上がる。
居心地悪くて、リツキの手を振りほどこうとしたけど、指をがっちり確保されていて引き抜けなかった。
「あの、…カノジョさんですか」
女子の一人が上目づかいにリツキを見る。
残りの女子らが一斉にオレに目を向けて、緊張でハゲそうになった。
「そうだよ」
無駄に爽やかさを振りまきながら、リツキがうなずく。
なんでリツキは普通なんだ。
オレは絡みつくような視線に身の置き所がねーっつーのに!
「じゃあね」
リツキに引きずられるようにして彼女らから離れた。
「よし、このプリ、スマホケースに入れるか」
リツキは俄然、機嫌がよさそうで、ホントにスマートフォンを取り出して、あろうことかオレのスマホまで奪い取っていたけど、オレはなんかへこんでいた。
「お前、デコにもちゃんと貼っとけよ」
スマホに貼るついでに、リツキがオレの額にまたプリを貼っても、スルーするくらいへこんでいた。
あいつらの視線が語ってた。
「身の程知らずのハゲ」って。
いや、ハゲは知らねーか。
でも。
「いい気になるな、勘違いヤロー」くらいは言ってた。
だいたいリツキは。
「なぁ、ゴリゴリくん、食ってこうぜ」
「…もう食べた」
「ああ?」
オレのどこが好きなんだ?
「アイは10本くらい余裕だろ」
リツキがコンビニでゴリゴリくんを買う姿を見ながら、どうにも自分が空回りしている感じがぬぐえなかった。
ハゲだし。カピバラ体型だし。
オンナノコらしくないし。
ハゲだし。(2回目)
「ほら、イチゴ味」
リツキがオレの口にアイスバーを押し込む。
ゴリゴリくん、イチゴ味も最高っ!じゃなくて。
…バイト代が入ったら、皮膚科に行ってみようかな。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

【完結】あの日、君の本音に気付けなくて
ナカジマ
青春
藤木涼介と清水凛は、中学3年のバレンタインで両片思いから両想いになった。しかし高校生になってからは、何となく疎遠になってしまっていた。両想いになったからゴールだと勘違いしている涼介と、ちゃんと恋人同士になりたいと言い出せない凛。バスケ部が楽しいから良いんだと開き直った涼介と、自分は揶揄われたのではないかと疑い始める凛。お互いに好意があるにも関わらず、以前よりも複雑な両片思いに陥った2人。
とある理由から、女子の好意を理解出来なくなったバスケ部男子と、引っ込み思案で中々気持ちを伝えられない吹奏楽部女子。普通の男女が繰り広げる、部活に勉強、修学旅行。不器用な2人の青春やり直しストーリー。
【完結】限界離婚
仲 奈華 (nakanaka)
大衆娯楽
もう限界だ。
「離婚してください」
丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。
丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。
丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。
広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。
出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。
平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。
信じていた家族の形が崩れていく。
倒されたのは誰のせい?
倒れた達磨は再び起き上がる。
丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。
丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。
丸田 京香…66歳。半年前に退職した。
丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。
丸田 鈴奈…33歳。
丸田 勇太…3歳。
丸田 文…82歳。専業主婦。
麗奈…広一が定期的に会っている女。
※7月13日初回完結
※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。
※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。
※7月22日第2章完結。
※カクヨムにも投稿しています。
放課後はネットで待ち合わせ
星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】
高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。
何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。
翌日、萌はルビーと出会う。
女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。
彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。
初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?
君のために僕は歌う
なめめ
青春
六歳の頃から芸能界で生きてきた麻倉律仁。
子役のころは持てはやされていた彼も成長ともに仕事が激減する。アイドル育成に力を入れた事務所に言われるままにダンスや歌のレッスンをするものの将来に不安を抱いていた律仁は全てに反抗的だった。
そんな夏のある日、公園の路上でギターを手に歌ってる雪城鈴菜と出会う。律仁の二つ上でシンガーソングライター志望。大好きな歌で裕福ではない家族を支えるために上京してきたという。そんな彼女と過ごすうちに歌うことへの楽しさ、魅力を知ると同時に律仁は彼女に惹かれていった………
恋愛、友情など芸能界にもまれながらも成長していく一人のアイドルの物語です。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

嘘だったなんてそんな嘘は信じません
ミカン♬
恋愛
婚約者のキリアン様が大好きなディアナ。ある日偶然キリアン様の本音を聞いてしまう。流れは一気に婚約解消に向かっていくのだけど・・・迷うディアナはどうする?
ありふれた婚約解消の数日間を切り取った可愛い恋のお話です。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる