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hage.42
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緊張と不安から解放されたせいか、胸の奥につかえていた塊が溶け出して、涙に変わった。
「マジで泣き虫だな」
そう言うリツキは、オレを腕の中に堅く閉じ込めて、頭にキスする。
「ハゲに響くぞ?」
うるせー。
リツキを睨むと、リツキは優しく笑って、オレの目尻に口づけた。
「…キス魔」
悔しくなって、そう言うと、
「お前がもの欲しそうにしてるからだろ」
リツキが平然と言い返す。
「な、…っ」
なんか、コイツ、ハレンチじゃね?
だいたいキスプリとか、さらし者じゃね?
「順番待たせてるから出るぞ」
リツキがオレの手を引いて、プリ機の中からでると、女子らが並んでいて、
「待たせてごめんね」
嘘くさいリツキスマイルに一瞬で赤くなった。
「サッカーの、…」
「本多くんっ!」
「かっこいい~~っ」
「頑張って下さい!」
次々と黄色い歓声が上がる。
居心地悪くて、リツキの手を振りほどこうとしたけど、指をがっちり確保されていて引き抜けなかった。
「あの、…カノジョさんですか」
女子の一人が上目づかいにリツキを見る。
残りの女子らが一斉にオレに目を向けて、緊張でハゲそうになった。
「そうだよ」
無駄に爽やかさを振りまきながら、リツキがうなずく。
なんでリツキは普通なんだ。
オレは絡みつくような視線に身の置き所がねーっつーのに!
「じゃあね」
リツキに引きずられるようにして彼女らから離れた。
「よし、このプリ、スマホケースに入れるか」
リツキは俄然、機嫌がよさそうで、ホントにスマートフォンを取り出して、あろうことかオレのスマホまで奪い取っていたけど、オレはなんかへこんでいた。
「お前、デコにもちゃんと貼っとけよ」
スマホに貼るついでに、リツキがオレの額にまたプリを貼っても、スルーするくらいへこんでいた。
あいつらの視線が語ってた。
「身の程知らずのハゲ」って。
いや、ハゲは知らねーか。
でも。
「いい気になるな、勘違いヤロー」くらいは言ってた。
だいたいリツキは。
「なぁ、ゴリゴリくん、食ってこうぜ」
「…もう食べた」
「ああ?」
オレのどこが好きなんだ?
「アイは10本くらい余裕だろ」
リツキがコンビニでゴリゴリくんを買う姿を見ながら、どうにも自分が空回りしている感じがぬぐえなかった。
ハゲだし。カピバラ体型だし。
オンナノコらしくないし。
ハゲだし。(2回目)
「ほら、イチゴ味」
リツキがオレの口にアイスバーを押し込む。
ゴリゴリくん、イチゴ味も最高っ!じゃなくて。
…バイト代が入ったら、皮膚科に行ってみようかな。
「マジで泣き虫だな」
そう言うリツキは、オレを腕の中に堅く閉じ込めて、頭にキスする。
「ハゲに響くぞ?」
うるせー。
リツキを睨むと、リツキは優しく笑って、オレの目尻に口づけた。
「…キス魔」
悔しくなって、そう言うと、
「お前がもの欲しそうにしてるからだろ」
リツキが平然と言い返す。
「な、…っ」
なんか、コイツ、ハレンチじゃね?
だいたいキスプリとか、さらし者じゃね?
「順番待たせてるから出るぞ」
リツキがオレの手を引いて、プリ機の中からでると、女子らが並んでいて、
「待たせてごめんね」
嘘くさいリツキスマイルに一瞬で赤くなった。
「サッカーの、…」
「本多くんっ!」
「かっこいい~~っ」
「頑張って下さい!」
次々と黄色い歓声が上がる。
居心地悪くて、リツキの手を振りほどこうとしたけど、指をがっちり確保されていて引き抜けなかった。
「あの、…カノジョさんですか」
女子の一人が上目づかいにリツキを見る。
残りの女子らが一斉にオレに目を向けて、緊張でハゲそうになった。
「そうだよ」
無駄に爽やかさを振りまきながら、リツキがうなずく。
なんでリツキは普通なんだ。
オレは絡みつくような視線に身の置き所がねーっつーのに!
「じゃあね」
リツキに引きずられるようにして彼女らから離れた。
「よし、このプリ、スマホケースに入れるか」
リツキは俄然、機嫌がよさそうで、ホントにスマートフォンを取り出して、あろうことかオレのスマホまで奪い取っていたけど、オレはなんかへこんでいた。
「お前、デコにもちゃんと貼っとけよ」
スマホに貼るついでに、リツキがオレの額にまたプリを貼っても、スルーするくらいへこんでいた。
あいつらの視線が語ってた。
「身の程知らずのハゲ」って。
いや、ハゲは知らねーか。
でも。
「いい気になるな、勘違いヤロー」くらいは言ってた。
だいたいリツキは。
「なぁ、ゴリゴリくん、食ってこうぜ」
「…もう食べた」
「ああ?」
オレのどこが好きなんだ?
「アイは10本くらい余裕だろ」
リツキがコンビニでゴリゴリくんを買う姿を見ながら、どうにも自分が空回りしている感じがぬぐえなかった。
ハゲだし。カピバラ体型だし。
オンナノコらしくないし。
ハゲだし。(2回目)
「ほら、イチゴ味」
リツキがオレの口にアイスバーを押し込む。
ゴリゴリくん、イチゴ味も最高っ!じゃなくて。
…バイト代が入ったら、皮膚科に行ってみようかな。
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