【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

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オレはリツキの些細な一言に一喜一憂するハゲたカピバラで、

…アイツのおもちゃなんだ。

「あー、…分かったよ。リツキ呼んでやるから、泣くなよ?俺が殺されるだろ?リツキにちゃんと聞けよ?」

ハセガワがいそいそとスマートフォンを操作した。

「アイが泣いてんぞ、早く来い」

泣いてねーよっ

「ハセガワ、はったりばっかりかますなよ!」

オレの抗議にハセガワは鼻を鳴らすと、

「バカ、お前、そんな顔して何言ってんだ!さっさとヤることヤって落ち着けよ。今日だって、リツキ、そわそわして調子上がんなかったんだぞ? リツキを高めるのがお前の役目だろ?」

初耳なことを堂々と言い放った。

「…リツキの調子、オレに関係ねーじゃん」

「バ、…っ!マジか。全然通じてねーんだな。リツキ、哀れすぎんだろ」

ハセガワが、心底呆れた顔でオレを見た。

「なぁ、…マジでリツ、来んの?なんか、やな予感しかしねーんだけど…」

なんかもう、居心地悪くて仕方ない。
このまま駅のホームで、待ってろって?

「アイ。お前さ、一人で不安になってないで、ちゃんとリツキと向き合えよ。リツキのこと、好きなんだろ?」

そんなオレを見て、ハセガワが諭すように言った。
それが、やけにすとんと胸に落ちた。

そうか。
オレはずっと逃げてたんだな。

リツキのことがわからなくて、不安で、向き合えなかった。
リツキに切り捨てられるのが怖くて、何も聞けなかった。

でも。
オレはリツキが好きだ。
タカヤでもヒグチでもなくて。

やっぱりリツキが好きだから。

「…うん」

うなずいたオレの頭に手を置くと、ハセガワが励ますように柔らかくバウンドさせた。

「来るまで一緒に待っててやるから」

ハセガワと並んでホームのベンチに座った。
電車から降りる人ごみの中に、リツキを探した。

今からリツキに会うんだと思うと、妙に緊張した。

それでも。
あんな変な電話一本で、試合後疲れてるはずのリツキが来てくれるなら。

逃げないで。
ちゃんと。
今度こそ、ちゃんと。

伝えたい。

降り立つ人並みに、気だるげなリツキの姿を見つけた。
スポーツバックを肩にかけたままで、帰宅途中に引き返してきたのがわかる。

リツキがオレを見つけて、その長い足を繰り出して近づいてくる。

「じゃあな。頑張れよ」

ハセガワがオレの背中を軽くたたき、立ち上がって歩いていく。
リツキとすれ違う時に、肩をたたいて何か言葉を交わしていた。

ハセガワを見送ったリツキが、視線を戻し、オレと目が合った。
そらせないまま、勢いで立ち上がってしまった。

喉が鳴る。
負けんな、オレっ!!
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