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hage.40
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オレはリツキの些細な一言に一喜一憂するハゲたカピバラで、
…アイツのおもちゃなんだ。
「あー、…分かったよ。リツキ呼んでやるから、泣くなよ?俺が殺されるだろ?リツキにちゃんと聞けよ?」
ハセガワがいそいそとスマートフォンを操作した。
「アイが泣いてんぞ、早く来い」
泣いてねーよっ
「ハセガワ、はったりばっかりかますなよ!」
オレの抗議にハセガワは鼻を鳴らすと、
「バカ、お前、そんな顔して何言ってんだ!さっさとヤることヤって落ち着けよ。今日だって、リツキ、そわそわして調子上がんなかったんだぞ? リツキを高めるのがお前の役目だろ?」
初耳なことを堂々と言い放った。
「…リツキの調子、オレに関係ねーじゃん」
「バ、…っ!マジか。全然通じてねーんだな。リツキ、哀れすぎんだろ」
ハセガワが、心底呆れた顔でオレを見た。
「なぁ、…マジでリツ、来んの?なんか、やな予感しかしねーんだけど…」
なんかもう、居心地悪くて仕方ない。
このまま駅のホームで、待ってろって?
「アイ。お前さ、一人で不安になってないで、ちゃんとリツキと向き合えよ。リツキのこと、好きなんだろ?」
そんなオレを見て、ハセガワが諭すように言った。
それが、やけにすとんと胸に落ちた。
そうか。
オレはずっと逃げてたんだな。
リツキのことがわからなくて、不安で、向き合えなかった。
リツキに切り捨てられるのが怖くて、何も聞けなかった。
でも。
オレはリツキが好きだ。
タカヤでもヒグチでもなくて。
やっぱりリツキが好きだから。
「…うん」
うなずいたオレの頭に手を置くと、ハセガワが励ますように柔らかくバウンドさせた。
「来るまで一緒に待っててやるから」
ハセガワと並んでホームのベンチに座った。
電車から降りる人ごみの中に、リツキを探した。
今からリツキに会うんだと思うと、妙に緊張した。
それでも。
あんな変な電話一本で、試合後疲れてるはずのリツキが来てくれるなら。
逃げないで。
ちゃんと。
今度こそ、ちゃんと。
伝えたい。
降り立つ人並みに、気だるげなリツキの姿を見つけた。
スポーツバックを肩にかけたままで、帰宅途中に引き返してきたのがわかる。
リツキがオレを見つけて、その長い足を繰り出して近づいてくる。
「じゃあな。頑張れよ」
ハセガワがオレの背中を軽くたたき、立ち上がって歩いていく。
リツキとすれ違う時に、肩をたたいて何か言葉を交わしていた。
ハセガワを見送ったリツキが、視線を戻し、オレと目が合った。
そらせないまま、勢いで立ち上がってしまった。
喉が鳴る。
負けんな、オレっ!!
…アイツのおもちゃなんだ。
「あー、…分かったよ。リツキ呼んでやるから、泣くなよ?俺が殺されるだろ?リツキにちゃんと聞けよ?」
ハセガワがいそいそとスマートフォンを操作した。
「アイが泣いてんぞ、早く来い」
泣いてねーよっ
「ハセガワ、はったりばっかりかますなよ!」
オレの抗議にハセガワは鼻を鳴らすと、
「バカ、お前、そんな顔して何言ってんだ!さっさとヤることヤって落ち着けよ。今日だって、リツキ、そわそわして調子上がんなかったんだぞ? リツキを高めるのがお前の役目だろ?」
初耳なことを堂々と言い放った。
「…リツキの調子、オレに関係ねーじゃん」
「バ、…っ!マジか。全然通じてねーんだな。リツキ、哀れすぎんだろ」
ハセガワが、心底呆れた顔でオレを見た。
「なぁ、…マジでリツ、来んの?なんか、やな予感しかしねーんだけど…」
なんかもう、居心地悪くて仕方ない。
このまま駅のホームで、待ってろって?
「アイ。お前さ、一人で不安になってないで、ちゃんとリツキと向き合えよ。リツキのこと、好きなんだろ?」
そんなオレを見て、ハセガワが諭すように言った。
それが、やけにすとんと胸に落ちた。
そうか。
オレはずっと逃げてたんだな。
リツキのことがわからなくて、不安で、向き合えなかった。
リツキに切り捨てられるのが怖くて、何も聞けなかった。
でも。
オレはリツキが好きだ。
タカヤでもヒグチでもなくて。
やっぱりリツキが好きだから。
「…うん」
うなずいたオレの頭に手を置くと、ハセガワが励ますように柔らかくバウンドさせた。
「来るまで一緒に待っててやるから」
ハセガワと並んでホームのベンチに座った。
電車から降りる人ごみの中に、リツキを探した。
今からリツキに会うんだと思うと、妙に緊張した。
それでも。
あんな変な電話一本で、試合後疲れてるはずのリツキが来てくれるなら。
逃げないで。
ちゃんと。
今度こそ、ちゃんと。
伝えたい。
降り立つ人並みに、気だるげなリツキの姿を見つけた。
スポーツバックを肩にかけたままで、帰宅途中に引き返してきたのがわかる。
リツキがオレを見つけて、その長い足を繰り出して近づいてくる。
「じゃあな。頑張れよ」
ハセガワがオレの背中を軽くたたき、立ち上がって歩いていく。
リツキとすれ違う時に、肩をたたいて何か言葉を交わしていた。
ハセガワを見送ったリツキが、視線を戻し、オレと目が合った。
そらせないまま、勢いで立ち上がってしまった。
喉が鳴る。
負けんな、オレっ!!
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