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hage.34
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体育祭は、朝から晴天だった。
チナツが障害物レースでなかなかの俊敏さを見せ、リツキは青軍で短距離走に出て、ぶっちぎりに速かった。
「リツキく~んっ」
「かっこいい~~っ」
青軍と親衛隊からもれなく黄色い歓声が上がる。
よく見るとカワシマも混ざっていた。
…復活したらしい。
赤軍は団長がムカデ競争でお約束のコケっぷりを披露し、オレはパン食いで楽勝のゴールテープを切った。
今年は売店で人気の焼きそばパンだったから、もう一個食べたかったけどな。
午後は応援団の演舞から始まる。
赤軍がトップだ。
団長の掛け声で赤軍集結。入場。
太鼓の音と、はためく軍旗と、団長の声と、団員の振りと、…全部がピッタリそろって、繰り出す手足がゾクゾクした。
締めが決まると、会場から指笛と歓声が沸き起こる。
鉢巻に汗がにじんで、すげー爽快な気分だった。
退場してからタカヤが「やったな」って手を出してきて、ハイタッチした。
青軍、黄軍もかなりかっこよくて、チナツが生き生きしてたからつい声援を送ってしまい、団長にはたかれた。
でもやっぱり赤軍が一番で、体育祭史上最高得点を叩き出した。
「やったぁ~~~」
飛び上がって喜んでたら、いきなり団長が、
「うおおおおーーーっ」
怒号を上げて突進してきてオレを肩に担ぎ上げ、団員全員でわめきながら校庭を凱旋した。
たまらない達成感だった。
午後のプログラムには教員も巻き込んだ借り人競争があって、お題のカードに該当する人を連れて走る。
「ナイスバディ」では、カワシマが引っ張りだこで、
「頭がさみしい」では、ハゲヤマが自ら身を乗り出していた。
み、…見習わなければっ
「好きな人」とかももちろんあって、友だちでも先生でもいいんだけど、学年問わず女子がリツキに殺到していた。
どさくさに紛れて「本気です!」とか「遊びでもいいです!」とか告ってたり、抱き着いてたりするやつもいた。
そこにもカワシマが混ざっていて、先生方に連れ戻されていた。
「相変わらずすごいな、本多は」
その光景をタカヤと見ながら、破裂しそうに盛り上がっていた胸の内に少しだけ穴が開いたような気がした。
リツキはオレの「好き」なんて、いらないのかもしれない。
でも。だけど…
「チビざる!片づけ終わったら、解団式な。駅前のカラオケ」
団長に肩を叩かれた。
「…あ、はい」
今日はリツキと、帰れねーな…
体育祭の片づけが終わって、リツキを探したけどどこにも見当たらなかった。
タカヤと一緒に解団式に向かおうとして、
「…好きです」
下駄箱脇の奥の方で、告白されているリツキを見つけた。
無言でタカヤがオレの手を引いた。
「…タカヤ?」
タカヤはそのまま振り返らず、痛いくらいの力でオレを引きずりながら、足早に校門を出る。
学校からだいぶ離れるまで、タカヤは呼んでも応えず、速度も緩めなかった。
解団式のカラオケ屋近くで、やっとタカヤが止まった。
夕闇が迫る繁華街は、遊びに繰り出す人、家路を急ぐ人でにぎわっている。
タカヤはオレの手をつかんだまま向き直ると、
「本多じゃなきゃダメ?」
まっすぐにオレの目をのぞきこむ。いつもと様子の違うタカヤに戸惑っていると、
「俺のファーストキス、コマチだよ」
タカヤが衝撃の爆弾発言をかました。
チナツが障害物レースでなかなかの俊敏さを見せ、リツキは青軍で短距離走に出て、ぶっちぎりに速かった。
「リツキく~んっ」
「かっこいい~~っ」
青軍と親衛隊からもれなく黄色い歓声が上がる。
よく見るとカワシマも混ざっていた。
…復活したらしい。
赤軍は団長がムカデ競争でお約束のコケっぷりを披露し、オレはパン食いで楽勝のゴールテープを切った。
今年は売店で人気の焼きそばパンだったから、もう一個食べたかったけどな。
午後は応援団の演舞から始まる。
赤軍がトップだ。
団長の掛け声で赤軍集結。入場。
太鼓の音と、はためく軍旗と、団長の声と、団員の振りと、…全部がピッタリそろって、繰り出す手足がゾクゾクした。
締めが決まると、会場から指笛と歓声が沸き起こる。
鉢巻に汗がにじんで、すげー爽快な気分だった。
退場してからタカヤが「やったな」って手を出してきて、ハイタッチした。
青軍、黄軍もかなりかっこよくて、チナツが生き生きしてたからつい声援を送ってしまい、団長にはたかれた。
でもやっぱり赤軍が一番で、体育祭史上最高得点を叩き出した。
「やったぁ~~~」
飛び上がって喜んでたら、いきなり団長が、
「うおおおおーーーっ」
怒号を上げて突進してきてオレを肩に担ぎ上げ、団員全員でわめきながら校庭を凱旋した。
たまらない達成感だった。
午後のプログラムには教員も巻き込んだ借り人競争があって、お題のカードに該当する人を連れて走る。
「ナイスバディ」では、カワシマが引っ張りだこで、
「頭がさみしい」では、ハゲヤマが自ら身を乗り出していた。
み、…見習わなければっ
「好きな人」とかももちろんあって、友だちでも先生でもいいんだけど、学年問わず女子がリツキに殺到していた。
どさくさに紛れて「本気です!」とか「遊びでもいいです!」とか告ってたり、抱き着いてたりするやつもいた。
そこにもカワシマが混ざっていて、先生方に連れ戻されていた。
「相変わらずすごいな、本多は」
その光景をタカヤと見ながら、破裂しそうに盛り上がっていた胸の内に少しだけ穴が開いたような気がした。
リツキはオレの「好き」なんて、いらないのかもしれない。
でも。だけど…
「チビざる!片づけ終わったら、解団式な。駅前のカラオケ」
団長に肩を叩かれた。
「…あ、はい」
今日はリツキと、帰れねーな…
体育祭の片づけが終わって、リツキを探したけどどこにも見当たらなかった。
タカヤと一緒に解団式に向かおうとして、
「…好きです」
下駄箱脇の奥の方で、告白されているリツキを見つけた。
無言でタカヤがオレの手を引いた。
「…タカヤ?」
タカヤはそのまま振り返らず、痛いくらいの力でオレを引きずりながら、足早に校門を出る。
学校からだいぶ離れるまで、タカヤは呼んでも応えず、速度も緩めなかった。
解団式のカラオケ屋近くで、やっとタカヤが止まった。
夕闇が迫る繁華街は、遊びに繰り出す人、家路を急ぐ人でにぎわっている。
タカヤはオレの手をつかんだまま向き直ると、
「本多じゃなきゃダメ?」
まっすぐにオレの目をのぞきこむ。いつもと様子の違うタカヤに戸惑っていると、
「俺のファーストキス、コマチだよ」
タカヤが衝撃の爆弾発言をかました。
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