【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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「ん、これ、お前のポテトな」

帰りにバーガーショップに寄った。
オレがいくじなしなせいでこの展開になったんだけど、リツキと2人で寄り道なんて久しぶりかも。
ってか、向かいの席で、ポテトとかつまんで、これってちょっと!

付き合ってる、っぽいんじゃ!

思ったら、急にデカ口を開けられなくなって、ものすごくハンバーガーが食べにくい。

「お前、…ついてる」

チマチマ食べてたらリツキが呆れた顔でオレの口の端を指でぬぐった。

で、そのまま舐める。

「お、…っ」

思わず立ち上がると、店内で注目を浴びてしまい、急いで座りなおす。

「なんだよ?」

リツキが怪訝な顔でオレを見る。

「何でもねー、…」

顔が熱い。熱くてリツキを見れない。
オレ、おかしい。
リツキとハンバーガーなんてそれこそ小学生の頃からやってるのに。

リツキってこんなヤツだっけ。
ソース舐めたりしてたっけ。

「そいや、『天使の育毛ケア』だっけ?届いたぜ。お前が心待ちにしてたやつ」

リツキの声が耳をすり抜けていく。
多分オレたち、傍から見たら、付き合ってるっぽく見える。
多分、恋人同士に見える。

「アイ?聞いてんのかよ?」

でもリツキは、何にも変わんねー。

リツキは。
…慣れてる。
今までも『彼女』には、してたのかもしれねーな…

「アイ?食わねーなら、もらうよ?」

「え?」

気づいたらバーガーを持ったままのオレの手にリツキが手を重ねて、そのまま目の前にリツキの顔が迫っていて、

「わっ、…」

後ずさったら勢い余って、イスごと後ろに転がり落ちた。

「おい」

リツキが慌てて引っ張り起こしてくれたけど、店中の注目を浴びていた。

恥ずかしすぎて死ぬ…

「じゃ、帰るか」

リツキは何事もなかったかのようにさっさと片して、オレの手を引いて外に出た。

つないでる手だって。
もう、どのくらい力を入れていいんだかわからねー。

オレはこんなにいっぱいいっぱいなのに、リツキは全然余裕で、
これがオレとリツキの差なんだな。

「応援団、大変なの?」

うつむいて歩いてたら、いつの間にか立ち止まって、リツキがオレを見ていた。

「え、…いや?」

「お前、今日ぼんやりしてねえ?」

リツキがのぞきこんでくる。

「や、…そ、かな」

やべー、リツキが近づくと心拍数が上がる。ってか、息が苦しい。ってか、顔が熱い~~~

思わず目をつむったら、

ちゅ。

リツキが軽く口づけた。

あ、…頭がくらくらする。

恐る恐る目を開けると、片頬を上げて笑うリツキが見えた。

「天使のナントカ、取りに寄れよ」

リツキが手をつなぎなおして歩き出す。

「…お、おお」

リツキの背中を見ながら、息を整えた。
通り過ぎる自転車が風を巻き起こしていく。

決めた。
体育祭が終わったら、聞いてみよう。

リツキが、オレのことどう思ってるのか。

そう決めたら、やっとちょっと落ち着いて、リツキの隣に並んで歩いた。

「な~、天使育毛、効果あるかな」

「…ないんじゃね?」

「なんでだよっ」

「…円ハゲ用じゃない気がする」

…マジか!
口コミランキングで1位だったのに!

よっぽどオレが青ざめてたのか、

「別にいいじゃん、俺らだけの秘密ってことで」

リツキがオレのリボンを引っ張って笑った。

『ハゲでもいいよ。アイなら、なんでもいい』

リツキの言葉がよみがえって、胸の奥が熱くなった。

体育祭が終わったら、言ってみよう。

リツが好き、って。
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