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hage.31
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昼休み、中庭で演舞の練習をしていると、
「なぁ、コマチ。最後んトコって、こうだっけ?」
隣のクラスの鷹谷シュンが、オレに教えを乞うてきたから見てやった。
「こうなって、こうでこうだろ?」
「あ、こうでこうね」
個人練習の後に、赤軍で合わせる。
よしよし、タカヤ、上手くなったじゃん。
アイコンタクトで褒めてやると、
「チビざるっ、よそ見してんな!」
すかさず団長の喝が飛ぶ。
団長、オレに恨みでも?
「さっき、悪かったな。俺のせいでコマチ、怒られて」
教室に引き上げようとすると、タカヤが謝ってきた。
「全然、オレ、怒られ慣れてるし」
はは、っと笑っていると
「コマチ、ってさ。マジで本多と付き合ってんの?」
突然、今一番の、ナイーブな話題にとんだ。
「あ、うん。…多分?」
なんでオレ、自信ないんだろ。
「ふうん。楽しい?」
楽しい、かなぁ…
「…わかんねー」
どっちか言うと、悩ましい?
「なー、タカヤ」
階段をのぼりながらタカヤを見上げる。
「ファーストキスって、覚えてる?」
「え、…わっ」
タカヤが絵に描いたように階段にけつまずいてコケた。
「何やってんだよ、お前」
笑いながらのぞき込むと、なんかタカヤが真っ赤になっていた。
「なんだよ、そんな甘酸っぱい思い出があんのかよ~?」
タカヤを肘でグリグリつつく。
顔を手で覆ったタカヤが、指の隙間からオレを見て、
「…コマチは、覚えてるのかよ?」
反撃された。
「…覚えて、なかった、かも」
やべー、オレ、かなりしどろもどろじゃん。
タカヤは安心したように息をつき、少し考え込むようなそぶりを見せてから、
「…覚えてるよ」
低く告げると、急にオレをじっと見た。
なんだろう、なんか、射すくめられる、ような…
「よぉ、アイ。早くしないと、5時間目始まるぞ」
階段の上から同じクラスの長谷川キョウに声をかけられ、我に返って、
「あ、じゃあな、タカヤ。また放課後の練習で」
タカヤに手を振り、階段を駆け上がった。
「保健室だった!」
下からタカヤの声が追いかけてきたから
「お、おおっ」
手を上げて応えた。
「…あれ、タカヤじゃん。浮気かよ、アイ~?リツキ、怒るぞ~」
すれ違いざまにハセガワがからかい口調で言う。
ハセガワは同じクラスでサッカー部で、リツキがよくつるんでる。
「そんなんじゃねーよっ」
言い捨てて急いで教室に戻った。
やっぱ、覚えてるもんだよな。
オレだって、忘れてたけど思い出したもんな。
リツキだって、…
「アイ、また怒られてきたか~?」
教室の入り口にリツキが立っていた。
「リツっ!お前、ファースト、…っ」
勢いのままリツキに問いかけたけど、
「ん?」
妙に形のいいリツキの唇が目に入って、
「…ファーストフード、ってどこが好き?」
…勇気がくじけた。
リツキのファーストキスなんて、聞きたくねー。
腐るほどキスしてたリツキが、そこだけくっきり覚えてたら悔しいし、学芸会の時だったら、「初めてキスした」好きな子はオレじゃねー。
頭がぐるぐるする。
「アイ?帰り、ハンバーガーとか食ってく?」
リツキがオレのリボンを引っ張りながらのぞき込む。
ずっと一緒にいたと思ってたけど。
オレ、リツキのこと案外何にも知らねーんだな。
「なぁ、コマチ。最後んトコって、こうだっけ?」
隣のクラスの鷹谷シュンが、オレに教えを乞うてきたから見てやった。
「こうなって、こうでこうだろ?」
「あ、こうでこうね」
個人練習の後に、赤軍で合わせる。
よしよし、タカヤ、上手くなったじゃん。
アイコンタクトで褒めてやると、
「チビざるっ、よそ見してんな!」
すかさず団長の喝が飛ぶ。
団長、オレに恨みでも?
「さっき、悪かったな。俺のせいでコマチ、怒られて」
教室に引き上げようとすると、タカヤが謝ってきた。
「全然、オレ、怒られ慣れてるし」
はは、っと笑っていると
「コマチ、ってさ。マジで本多と付き合ってんの?」
突然、今一番の、ナイーブな話題にとんだ。
「あ、うん。…多分?」
なんでオレ、自信ないんだろ。
「ふうん。楽しい?」
楽しい、かなぁ…
「…わかんねー」
どっちか言うと、悩ましい?
「なー、タカヤ」
階段をのぼりながらタカヤを見上げる。
「ファーストキスって、覚えてる?」
「え、…わっ」
タカヤが絵に描いたように階段にけつまずいてコケた。
「何やってんだよ、お前」
笑いながらのぞき込むと、なんかタカヤが真っ赤になっていた。
「なんだよ、そんな甘酸っぱい思い出があんのかよ~?」
タカヤを肘でグリグリつつく。
顔を手で覆ったタカヤが、指の隙間からオレを見て、
「…コマチは、覚えてるのかよ?」
反撃された。
「…覚えて、なかった、かも」
やべー、オレ、かなりしどろもどろじゃん。
タカヤは安心したように息をつき、少し考え込むようなそぶりを見せてから、
「…覚えてるよ」
低く告げると、急にオレをじっと見た。
なんだろう、なんか、射すくめられる、ような…
「よぉ、アイ。早くしないと、5時間目始まるぞ」
階段の上から同じクラスの長谷川キョウに声をかけられ、我に返って、
「あ、じゃあな、タカヤ。また放課後の練習で」
タカヤに手を振り、階段を駆け上がった。
「保健室だった!」
下からタカヤの声が追いかけてきたから
「お、おおっ」
手を上げて応えた。
「…あれ、タカヤじゃん。浮気かよ、アイ~?リツキ、怒るぞ~」
すれ違いざまにハセガワがからかい口調で言う。
ハセガワは同じクラスでサッカー部で、リツキがよくつるんでる。
「そんなんじゃねーよっ」
言い捨てて急いで教室に戻った。
やっぱ、覚えてるもんだよな。
オレだって、忘れてたけど思い出したもんな。
リツキだって、…
「アイ、また怒られてきたか~?」
教室の入り口にリツキが立っていた。
「リツっ!お前、ファースト、…っ」
勢いのままリツキに問いかけたけど、
「ん?」
妙に形のいいリツキの唇が目に入って、
「…ファーストフード、ってどこが好き?」
…勇気がくじけた。
リツキのファーストキスなんて、聞きたくねー。
腐るほどキスしてたリツキが、そこだけくっきり覚えてたら悔しいし、学芸会の時だったら、「初めてキスした」好きな子はオレじゃねー。
頭がぐるぐるする。
「アイ?帰り、ハンバーガーとか食ってく?」
リツキがオレのリボンを引っ張りながらのぞき込む。
ずっと一緒にいたと思ってたけど。
オレ、リツキのこと案外何にも知らねーんだな。
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