【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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昼休み、中庭で演舞の練習をしていると、

「なぁ、コマチ。最後んトコって、こうだっけ?」

隣のクラスの鷹谷シュンが、オレに教えを乞うてきたから見てやった。

「こうなって、こうでこうだろ?」

「あ、こうでこうね」

個人練習の後に、赤軍で合わせる。
よしよし、タカヤ、上手くなったじゃん。

アイコンタクトで褒めてやると、

「チビざるっ、よそ見してんな!」

すかさず団長の喝が飛ぶ。
団長、オレに恨みでも?

「さっき、悪かったな。俺のせいでコマチ、怒られて」

教室に引き上げようとすると、タカヤが謝ってきた。

「全然、オレ、怒られ慣れてるし」

はは、っと笑っていると

「コマチ、ってさ。マジで本多と付き合ってんの?」

突然、今一番の、ナイーブな話題にとんだ。

「あ、うん。…多分?」

なんでオレ、自信ないんだろ。

「ふうん。楽しい?」

楽しい、かなぁ…

「…わかんねー」

どっちか言うと、悩ましい?

「なー、タカヤ」

階段をのぼりながらタカヤを見上げる。

「ファーストキスって、覚えてる?」

「え、…わっ」

タカヤが絵に描いたように階段にけつまずいてコケた。

「何やってんだよ、お前」

笑いながらのぞき込むと、なんかタカヤが真っ赤になっていた。

「なんだよ、そんな甘酸っぱい思い出があんのかよ~?」

タカヤを肘でグリグリつつく。
顔を手で覆ったタカヤが、指の隙間からオレを見て、

「…コマチは、覚えてるのかよ?」

反撃された。

「…覚えて、なかった、かも」

やべー、オレ、かなりしどろもどろじゃん。

タカヤは安心したように息をつき、少し考え込むようなそぶりを見せてから、

「…覚えてるよ」

低く告げると、急にオレをじっと見た。
なんだろう、なんか、射すくめられる、ような…

「よぉ、アイ。早くしないと、5時間目始まるぞ」

階段の上から同じクラスの長谷川キョウに声をかけられ、我に返って、

「あ、じゃあな、タカヤ。また放課後の練習で」

タカヤに手を振り、階段を駆け上がった。

「保健室だった!」

下からタカヤの声が追いかけてきたから

「お、おおっ」

手を上げて応えた。

「…あれ、タカヤじゃん。浮気かよ、アイ~?リツキ、怒るぞ~」

すれ違いざまにハセガワがからかい口調で言う。
ハセガワは同じクラスでサッカー部で、リツキがよくつるんでる。

「そんなんじゃねーよっ」

言い捨てて急いで教室に戻った。

やっぱ、覚えてるもんだよな。
オレだって、忘れてたけど思い出したもんな。
リツキだって、…

「アイ、また怒られてきたか~?」

教室の入り口にリツキが立っていた。

「リツっ!お前、ファースト、…っ」

勢いのままリツキに問いかけたけど、

「ん?」

妙に形のいいリツキの唇が目に入って、

「…ファーストフード、ってどこが好き?」

…勇気がくじけた。

リツキのファーストキスなんて、聞きたくねー。
腐るほどキスしてたリツキが、そこだけくっきり覚えてたら悔しいし、学芸会の時だったら、「初めてキスした」好きな子はオレじゃねー。

頭がぐるぐるする。

「アイ?帰り、ハンバーガーとか食ってく?」

リツキがオレのリボンを引っ張りながらのぞき込む。

ずっと一緒にいたと思ってたけど。
オレ、リツキのこと案外何にも知らねーんだな。
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