【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

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「え?リツキくんが好きな人? アイに決まってんじゃん」

チナツが鉢巻を締めながらオレを見る。
オレとチナツは体育祭で応援団になり、朝から練習に励んでいる。

「応援団の朝練に付き合って、早くから登校してるんでしょ~~?」

チナツがオレを肘でつつきながらニヤニヤする。

オレが朝練に行くと言ったら、それに間に合う時間にリツキが迎えに来た。
リツキは、サッカーの自主練をするらしい。

「…でも、さ」

リツキ、好きな子とこの前初めてキスしたって言ってた。

オレ、思い出したんだけど、リツキとキスしたの、初めてじゃないかもしれない。

「なかよし保育園のスミレ組で、オレ、リツと、…確かにあの時、リツと、…」

「おいっ、そこの赤軍のちっちぇーヤツ!早く整列しろ!」

悶えていたら、応援団長に注意された。

やべー、周りにもう誰もいねー。
いつの間にかチナツは黄軍に並んでいた。

うちの高校の体育祭は、3学年合同で、赤・青・黄の3つの軍に分かれて得点を競う。
応援団はそれぞれの軍を盛り上げる役だけど、出し物の一つに演舞があって、それが代々、完成度が高い。
演舞を楽しみにしてるヤツらもいるくらいだから、気合を入れて練習しなきゃいけねー。

太鼓の音に合わせながら、振りと掛け声を覚える。
こういうのは、得意だ。
風にはためく鉢巻がオレのテンションを上げる。
当日は衣装もそろえるから更にワクワクする。

校庭の端の方でリツキが部のヤツらと自主練しているのが目に入った。

とたんに思い出す、初めてのキス。
仲良し保育園。スミレ組。学芸会。
白雪姫の演目で、オレが王子、リツキがお姫様、だった気がする。

学芸会当日、本番で頭に血が上ったオレが、
勢い余ってリツキに突っ込んだら、唇が触れた。

リツキにすげー嫌な顔で見られた挙句に、
目の前で唇を拭われた、ような、気がするんだけど。

「チビざるっ、振りがおせーんだよっ」

遥か過去にさかのぼっていた頭を、団長にはたかれた。
う、…ハゲに刺激は禁物なのに。

「アイ~、ちゃんとやれよ」

練習が終わって引き上げてると、リツキに声をかけられた。
タオルで汗を拭く姿が無駄に爽やかで、

「きゃあああ~」
朝からご苦労にも親衛隊がきっちりマークしている。

「うるせー」

オレが怒られたのは、もとはと言えば、お前のせいだぞ。

初めてのキス、って。

もしかしたら、オレのことじゃない?
もしかしたら、リツキ、他に好きな子がいたりする?
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