【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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キスしながら、オレの髪をすくリツキの指とか、
オレの手に絡められたリツキの大きな手とか、
胸から腰まで密着した身体とか、
両脚を挟み込むように立てられた膝とか、…
なんで、こんなに全身でリツキを感じるんだ。

リツキでいっぱいになって、他には何も考えられない。

ここがどこで、自分が何をしたくて、
リツキと何を言い合ってたのか、全部吹き飛んで。

リツキの重みと、つないだ手と、甘い舌だけが、
オレの全てになる。

「リツ、…」

リツキの唇が離れたから、目を開けると、
なんでかリツキがちょっと泣きそうな顔をしていた。

「アイのくせに、誘ってんじゃねえよ」

リツキの唇が再び降りてくる。
吐く息が甘い。
キスの合間に、自分がオンナノコみたいな甘い声を、
漏らしたような気がする。



「ちゅーしてる」

ナツキの声がオレを現実に引き戻した。
部屋のドアを豪快に開け放ったまま、

「ママ~、リツキがナツのベッドでアイとちゅー、…」

デカい声を出すナツキの口を、リツキが慌てて手でふさぐ。

「っほら、ナツキ。お前、ゴーゴージャー観るんだろ。
俺、アイを送ってくるから、バイバイしな」

が。

「…いてっ」

ナツキがリツキの手に噛みついて、

「リツキばっかりずるいっ!ボクもするっ」

オレの前にやってきた。

「はい、アイ、ちゅー」

ナツキが目を閉じて、その可愛らしい唇をオレの前に突き出す。

え…

迫りくるナツキにちょっとドキドキしていると、

「もがっ」

リツキの手に口を覆われた。

「バカ、アイ。行くぞ」

そのまま強引に部屋から引きずり出される。

「ずるい~っ、リツキ、ずるいいい~~っ」

半泣きのナツキの声に見送られながら、

「すみません、お邪魔しました~」

リツキの家を後にした。

「お前、ちょっと来い」

オレんちまでもう10歩しかないのに、リツキがオレを連れて団地から遠ざかる。

「お前さ、…」

団地併設の児童遊園には、誰もいない。
リツキが滑り台にもたれかかりながらオレを見る。

「俺とシたいの?」

外灯に照らされて、リツキの顔がちょっと陰になってる。
眼だけが妙に光を帯びて、艶やかで、その眼はオレを簡単に捕まえる。

…ずるい。

オレだけ、いっぱいいっぱいで、ドキドキして、バクバクして、頭が沸騰して、泣きたくなって、…

「…わかん、ね。…でも、負けたく、ねー…」

リツキから目を逸らして、奥歯を噛みしめる。
ハゲって、涙腺も刺激するのかな?
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