27 / 118
hage.27
しおりを挟む
キスしながら、オレの髪をすくリツキの指とか、
オレの手に絡められたリツキの大きな手とか、
胸から腰まで密着した身体とか、
両脚を挟み込むように立てられた膝とか、…
なんで、こんなに全身でリツキを感じるんだ。
リツキでいっぱいになって、他には何も考えられない。
ここがどこで、自分が何をしたくて、
リツキと何を言い合ってたのか、全部吹き飛んで。
リツキの重みと、つないだ手と、甘い舌だけが、
オレの全てになる。
「リツ、…」
リツキの唇が離れたから、目を開けると、
なんでかリツキがちょっと泣きそうな顔をしていた。
「アイのくせに、誘ってんじゃねえよ」
リツキの唇が再び降りてくる。
吐く息が甘い。
キスの合間に、自分がオンナノコみたいな甘い声を、
漏らしたような気がする。
「ちゅーしてる」
ナツキの声がオレを現実に引き戻した。
部屋のドアを豪快に開け放ったまま、
「ママ~、リツキがナツのベッドでアイとちゅー、…」
デカい声を出すナツキの口を、リツキが慌てて手でふさぐ。
「っほら、ナツキ。お前、ゴーゴージャー観るんだろ。
俺、アイを送ってくるから、バイバイしな」
が。
「…いてっ」
ナツキがリツキの手に噛みついて、
「リツキばっかりずるいっ!ボクもするっ」
オレの前にやってきた。
「はい、アイ、ちゅー」
ナツキが目を閉じて、その可愛らしい唇をオレの前に突き出す。
え…
迫りくるナツキにちょっとドキドキしていると、
「もがっ」
リツキの手に口を覆われた。
「バカ、アイ。行くぞ」
そのまま強引に部屋から引きずり出される。
「ずるい~っ、リツキ、ずるいいい~~っ」
半泣きのナツキの声に見送られながら、
「すみません、お邪魔しました~」
リツキの家を後にした。
「お前、ちょっと来い」
オレんちまでもう10歩しかないのに、リツキがオレを連れて団地から遠ざかる。
「お前さ、…」
団地併設の児童遊園には、誰もいない。
リツキが滑り台にもたれかかりながらオレを見る。
「俺とシたいの?」
外灯に照らされて、リツキの顔がちょっと陰になってる。
眼だけが妙に光を帯びて、艶やかで、その眼はオレを簡単に捕まえる。
…ずるい。
オレだけ、いっぱいいっぱいで、ドキドキして、バクバクして、頭が沸騰して、泣きたくなって、…
「…わかん、ね。…でも、負けたく、ねー…」
リツキから目を逸らして、奥歯を噛みしめる。
ハゲって、涙腺も刺激するのかな?
オレの手に絡められたリツキの大きな手とか、
胸から腰まで密着した身体とか、
両脚を挟み込むように立てられた膝とか、…
なんで、こんなに全身でリツキを感じるんだ。
リツキでいっぱいになって、他には何も考えられない。
ここがどこで、自分が何をしたくて、
リツキと何を言い合ってたのか、全部吹き飛んで。
リツキの重みと、つないだ手と、甘い舌だけが、
オレの全てになる。
「リツ、…」
リツキの唇が離れたから、目を開けると、
なんでかリツキがちょっと泣きそうな顔をしていた。
「アイのくせに、誘ってんじゃねえよ」
リツキの唇が再び降りてくる。
吐く息が甘い。
キスの合間に、自分がオンナノコみたいな甘い声を、
漏らしたような気がする。
「ちゅーしてる」
ナツキの声がオレを現実に引き戻した。
部屋のドアを豪快に開け放ったまま、
「ママ~、リツキがナツのベッドでアイとちゅー、…」
デカい声を出すナツキの口を、リツキが慌てて手でふさぐ。
「っほら、ナツキ。お前、ゴーゴージャー観るんだろ。
俺、アイを送ってくるから、バイバイしな」
が。
「…いてっ」
ナツキがリツキの手に噛みついて、
「リツキばっかりずるいっ!ボクもするっ」
オレの前にやってきた。
「はい、アイ、ちゅー」
ナツキが目を閉じて、その可愛らしい唇をオレの前に突き出す。
え…
迫りくるナツキにちょっとドキドキしていると、
「もがっ」
リツキの手に口を覆われた。
「バカ、アイ。行くぞ」
そのまま強引に部屋から引きずり出される。
「ずるい~っ、リツキ、ずるいいい~~っ」
半泣きのナツキの声に見送られながら、
「すみません、お邪魔しました~」
リツキの家を後にした。
「お前、ちょっと来い」
オレんちまでもう10歩しかないのに、リツキがオレを連れて団地から遠ざかる。
「お前さ、…」
団地併設の児童遊園には、誰もいない。
リツキが滑り台にもたれかかりながらオレを見る。
「俺とシたいの?」
外灯に照らされて、リツキの顔がちょっと陰になってる。
眼だけが妙に光を帯びて、艶やかで、その眼はオレを簡単に捕まえる。
…ずるい。
オレだけ、いっぱいいっぱいで、ドキドキして、バクバクして、頭が沸騰して、泣きたくなって、…
「…わかん、ね。…でも、負けたく、ねー…」
リツキから目を逸らして、奥歯を噛みしめる。
ハゲって、涙腺も刺激するのかな?
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
佐倉 蘭
歴史・時代
★第10回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
ある日、丑丸(うしまる)の父親が流行病でこの世を去った。
貧乏裏店(長屋)暮らしゆえ、家守(大家)のツケでなんとか弔いを終えたと思いきや……
脱藩浪人だった父親が江戸に出てきてから知り合い夫婦(めおと)となった母親が、裏店の連中がなけなしの金を叩いて出し合った線香代(香典)をすべて持って夜逃げした。
齢八つにして丑丸はたった一人、無一文で残された——
※「今宵は遣らずの雨」 「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる