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hage.25
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思わず絶叫してしまい、通行人が唖然として振り返り、そそくさと離れていった。
…今なら、恥ずかしさで死ねる。
「…ふ」
見ると、リツキがオレの前で笑いをこらえ、…
「あははははは」
てなく、潔いくらい大爆笑しやがった。
「やらしー、って、お前、…」
リツキがオレの髪をぐちゃぐちゃかき回す。
「やめろよっ」
万が一にもハゲが見えたらどうしてくれるんだ。
慌てて、頭をガードする。
「お前、俺にナニされると思ってんの?」
リツキがオレの頭を捕まえてガシガシ振り回す。
「…るせーな」
そんな、笑わなくてもいいと思う。
リツキはやたら経験豊富そうだけど、オレは、キスだってこの前初めてしたし、それ以上なんてまるっきり、…
「心配すんな」
リツキがオレの頭をつかんだまま、俺をのぞき込み、頬をつねる。
「何もしねーよ、バーカ」
リツキがオレの手を取り直して、歩き出す。
「なー、育毛って、市販のじゃないんだよなー?ちょっと、薬局寄ってみる?」
いつも通りのリツキに手を引かれて、後ろを歩きながら、
…胸の奥がキリキリする。
なんでだよ?
リツキは女たらしで、そこらじゅうでイチャコラしてたし、カワシマだってメロメロになるくらい経験豊富なのに。
なんで、何もしないんだよ?
「カノジョ」って、そういうんじゃねーの?
オレじゃ、その気になんねーの?
「…カピバラ体型だもんな」
「え?なに、アイ?」
「オレはカワシマみたいに、胸デカくねーからなっ!」
リツキの手を振りほどいて駆け出した。
バカみてー。
「カノジョ」とか言われて、泣いたり焦ったり、何やってんだ、オレ。
リツキは何にも変わらないのに、オレだけバカみてーじゃん。
発車直前の電車に駆け込み乗車して、リツキを振り切った。
オレだって、そういつもいつも追いつかれるわけじゃねーんだっ
いいい~っだ!
ホームに向かって歯を見せたら、頭の寂しいおっさんがぎょっとしてオレを見た。
やべー、仲間にケンカを売ってしまった…
電車の窓に映るオレは心もとなく見える。
こんな風にへこんでるなんてオレらしくねーな。
悩み事はハゲの敵だしな。
わかってるけど、ため息が出る。
どうしたいんだか自分で自分がわからねー、…
とぼとぼ歩いて団地に帰り着き、気づいたら、
「ナツキ~、お前のカピバラ見せて」
三戸隣りのリツキの家に寄っていた。
早くしないと、リツキが帰ってくるし、ナツキが寝てしまう。
「あら、アイちゃん、いらっしゃい」
「すみません、ちょっとだけお邪魔します」
…今なら、恥ずかしさで死ねる。
「…ふ」
見ると、リツキがオレの前で笑いをこらえ、…
「あははははは」
てなく、潔いくらい大爆笑しやがった。
「やらしー、って、お前、…」
リツキがオレの髪をぐちゃぐちゃかき回す。
「やめろよっ」
万が一にもハゲが見えたらどうしてくれるんだ。
慌てて、頭をガードする。
「お前、俺にナニされると思ってんの?」
リツキがオレの頭を捕まえてガシガシ振り回す。
「…るせーな」
そんな、笑わなくてもいいと思う。
リツキはやたら経験豊富そうだけど、オレは、キスだってこの前初めてしたし、それ以上なんてまるっきり、…
「心配すんな」
リツキがオレの頭をつかんだまま、俺をのぞき込み、頬をつねる。
「何もしねーよ、バーカ」
リツキがオレの手を取り直して、歩き出す。
「なー、育毛って、市販のじゃないんだよなー?ちょっと、薬局寄ってみる?」
いつも通りのリツキに手を引かれて、後ろを歩きながら、
…胸の奥がキリキリする。
なんでだよ?
リツキは女たらしで、そこらじゅうでイチャコラしてたし、カワシマだってメロメロになるくらい経験豊富なのに。
なんで、何もしないんだよ?
「カノジョ」って、そういうんじゃねーの?
オレじゃ、その気になんねーの?
「…カピバラ体型だもんな」
「え?なに、アイ?」
「オレはカワシマみたいに、胸デカくねーからなっ!」
リツキの手を振りほどいて駆け出した。
バカみてー。
「カノジョ」とか言われて、泣いたり焦ったり、何やってんだ、オレ。
リツキは何にも変わらないのに、オレだけバカみてーじゃん。
発車直前の電車に駆け込み乗車して、リツキを振り切った。
オレだって、そういつもいつも追いつかれるわけじゃねーんだっ
いいい~っだ!
ホームに向かって歯を見せたら、頭の寂しいおっさんがぎょっとしてオレを見た。
やべー、仲間にケンカを売ってしまった…
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こんな風にへこんでるなんてオレらしくねーな。
悩み事はハゲの敵だしな。
わかってるけど、ため息が出る。
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とぼとぼ歩いて団地に帰り着き、気づいたら、
「ナツキ~、お前のカピバラ見せて」
三戸隣りのリツキの家に寄っていた。
早くしないと、リツキが帰ってくるし、ナツキが寝てしまう。
「あら、アイちゃん、いらっしゃい」
「すみません、ちょっとだけお邪魔します」
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