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hage.22
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「…首輪って何だよ」
いろいろ納得いかねーんだけど。
「お前は俺のものってこと」
しれっと言うリツキに、
「はぁっ? いつオレがお前のもんに、…」
オレが全力で抗議すると、ヤツは至極当然といった感じで、
「おもちゃって、カノジョってイミだろ」
驚愕の事実を告げた。
「はぁぁぁ?」
マジで驚きで顎が外れそうなオレに、
「知らなかったの? だからハゲんだよ」
リツキは、容赦なくトドメを刺す。
…ハゲ関係なくね?
「…浮気したら、公開キス、な」
「はぁぁぁ?」
リツキの言うことがいちいち理解できない。
バカじゃねーの。
バカじゃねーの。
「アホ面さらすな」
リツキはオレを一瞥すると、片手でオレの両頬をつぶした。
「あにす、…あっ!」
思い出した。
急いでリツキの手を振り払い、立ち止まって、じっと、リツキを観察してみる。
「なんだよ?」
「リツ、カワシマと付き合ってんじゃねーの?」
「あ?」
リツキがオレを見返した。
ぜってー、先に目をそらすもんか。
リツキが軽く、ため息をついて、視線を外した。
「なんで?」
「…カワシマ、別れたくないって泣いてた。お前、『アヤさん』て、…」
やべー、目ヂカラ弱すぎて、目が潤む。
ってか、カワシマを呼ぶリツキの声、思い出したくねー。
「防災訓練の時? お前、…居たの?」
うなずいたり、声を出したりしたら、涙が落ちてしまいそうで。
リツキを見たまま、動けなかった。
リツキがオレを引き寄せて、胸の中に抱きしめた。
クソ、泣きたくないのに、涙が落ちる。
「それで、か。あー、…ごめん」
リツキの低い声が、頭の上から響く。
なんで、謝んだよ?
リツのバカ…
「…セフレ、…だった、っつーか、…」
歯切れの悪いリツキ。
マジでバカ。最低。エロリツ。女たらし。
リツキを殴っても殴っても身体の奥からどす黒い気持ちがあふれてくる。
「アイ。…ごめん、て」
リツキはおとなしくオレに殴られるままで、緩く背中に回した手で、宥めるようにオレの頭をなでた。
胸が苦しい。
リツキはモテるから、ヤッたこととかあるだろうって分かってる。
「抱かれたい」とか女子がキャアキャア騒いでるのも知ってる。
しょっちゅう、イチャコラしてたのも覚えてる。
けど。
こいつとヤッた女なんて知りたくなかった。
あんな風に相手の名前を呼ぶリツキなんて、絶対絶対知りたくなかった。
「ちゃんと別れてるから。全部過去の話だから、な?」
リツキに一番近いところで抱きしめられたのは、オレじゃなくて。
リツキを一番近くで感じたのは、オレじゃなくて。
それが痛い。
知りたくなかった。
こんなに苦しくて、こんなに痛いくらい、リツを好きになってたなんて、
…知りたくなかったよ。
「アイ。何でも言うこと聞くから」
殴る元気もなくなったオレを、リツキが腕の中に閉じ込めて、頭をなでながら、こめかみにキスした。
「だから、…泣くなよ」
リツキにしがみついて、ヤツの制服で涙と鼻水を拭いても、全然気持ちは晴れなかったけど、
「…いくもう、…ざい」
つぶやいたら、リツキが強く強くオレを抱きしめた。
「…バカ」
リツキのかすれた声が、切なく揺れていた。
いろいろ納得いかねーんだけど。
「お前は俺のものってこと」
しれっと言うリツキに、
「はぁっ? いつオレがお前のもんに、…」
オレが全力で抗議すると、ヤツは至極当然といった感じで、
「おもちゃって、カノジョってイミだろ」
驚愕の事実を告げた。
「はぁぁぁ?」
マジで驚きで顎が外れそうなオレに、
「知らなかったの? だからハゲんだよ」
リツキは、容赦なくトドメを刺す。
…ハゲ関係なくね?
「…浮気したら、公開キス、な」
「はぁぁぁ?」
リツキの言うことがいちいち理解できない。
バカじゃねーの。
バカじゃねーの。
「アホ面さらすな」
リツキはオレを一瞥すると、片手でオレの両頬をつぶした。
「あにす、…あっ!」
思い出した。
急いでリツキの手を振り払い、立ち止まって、じっと、リツキを観察してみる。
「なんだよ?」
「リツ、カワシマと付き合ってんじゃねーの?」
「あ?」
リツキがオレを見返した。
ぜってー、先に目をそらすもんか。
リツキが軽く、ため息をついて、視線を外した。
「なんで?」
「…カワシマ、別れたくないって泣いてた。お前、『アヤさん』て、…」
やべー、目ヂカラ弱すぎて、目が潤む。
ってか、カワシマを呼ぶリツキの声、思い出したくねー。
「防災訓練の時? お前、…居たの?」
うなずいたり、声を出したりしたら、涙が落ちてしまいそうで。
リツキを見たまま、動けなかった。
リツキがオレを引き寄せて、胸の中に抱きしめた。
クソ、泣きたくないのに、涙が落ちる。
「それで、か。あー、…ごめん」
リツキの低い声が、頭の上から響く。
なんで、謝んだよ?
リツのバカ…
「…セフレ、…だった、っつーか、…」
歯切れの悪いリツキ。
マジでバカ。最低。エロリツ。女たらし。
リツキを殴っても殴っても身体の奥からどす黒い気持ちがあふれてくる。
「アイ。…ごめん、て」
リツキはおとなしくオレに殴られるままで、緩く背中に回した手で、宥めるようにオレの頭をなでた。
胸が苦しい。
リツキはモテるから、ヤッたこととかあるだろうって分かってる。
「抱かれたい」とか女子がキャアキャア騒いでるのも知ってる。
しょっちゅう、イチャコラしてたのも覚えてる。
けど。
こいつとヤッた女なんて知りたくなかった。
あんな風に相手の名前を呼ぶリツキなんて、絶対絶対知りたくなかった。
「ちゃんと別れてるから。全部過去の話だから、な?」
リツキに一番近いところで抱きしめられたのは、オレじゃなくて。
リツキを一番近くで感じたのは、オレじゃなくて。
それが痛い。
知りたくなかった。
こんなに苦しくて、こんなに痛いくらい、リツを好きになってたなんて、
…知りたくなかったよ。
「アイ。何でも言うこと聞くから」
殴る元気もなくなったオレを、リツキが腕の中に閉じ込めて、頭をなでながら、こめかみにキスした。
「だから、…泣くなよ」
リツキにしがみついて、ヤツの制服で涙と鼻水を拭いても、全然気持ちは晴れなかったけど、
「…いくもう、…ざい」
つぶやいたら、リツキが強く強くオレを抱きしめた。
「…バカ」
リツキのかすれた声が、切なく揺れていた。
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