22 / 118
hage.22
しおりを挟む
「…首輪って何だよ」
いろいろ納得いかねーんだけど。
「お前は俺のものってこと」
しれっと言うリツキに、
「はぁっ? いつオレがお前のもんに、…」
オレが全力で抗議すると、ヤツは至極当然といった感じで、
「おもちゃって、カノジョってイミだろ」
驚愕の事実を告げた。
「はぁぁぁ?」
マジで驚きで顎が外れそうなオレに、
「知らなかったの? だからハゲんだよ」
リツキは、容赦なくトドメを刺す。
…ハゲ関係なくね?
「…浮気したら、公開キス、な」
「はぁぁぁ?」
リツキの言うことがいちいち理解できない。
バカじゃねーの。
バカじゃねーの。
「アホ面さらすな」
リツキはオレを一瞥すると、片手でオレの両頬をつぶした。
「あにす、…あっ!」
思い出した。
急いでリツキの手を振り払い、立ち止まって、じっと、リツキを観察してみる。
「なんだよ?」
「リツ、カワシマと付き合ってんじゃねーの?」
「あ?」
リツキがオレを見返した。
ぜってー、先に目をそらすもんか。
リツキが軽く、ため息をついて、視線を外した。
「なんで?」
「…カワシマ、別れたくないって泣いてた。お前、『アヤさん』て、…」
やべー、目ヂカラ弱すぎて、目が潤む。
ってか、カワシマを呼ぶリツキの声、思い出したくねー。
「防災訓練の時? お前、…居たの?」
うなずいたり、声を出したりしたら、涙が落ちてしまいそうで。
リツキを見たまま、動けなかった。
リツキがオレを引き寄せて、胸の中に抱きしめた。
クソ、泣きたくないのに、涙が落ちる。
「それで、か。あー、…ごめん」
リツキの低い声が、頭の上から響く。
なんで、謝んだよ?
リツのバカ…
「…セフレ、…だった、っつーか、…」
歯切れの悪いリツキ。
マジでバカ。最低。エロリツ。女たらし。
リツキを殴っても殴っても身体の奥からどす黒い気持ちがあふれてくる。
「アイ。…ごめん、て」
リツキはおとなしくオレに殴られるままで、緩く背中に回した手で、宥めるようにオレの頭をなでた。
胸が苦しい。
リツキはモテるから、ヤッたこととかあるだろうって分かってる。
「抱かれたい」とか女子がキャアキャア騒いでるのも知ってる。
しょっちゅう、イチャコラしてたのも覚えてる。
けど。
こいつとヤッた女なんて知りたくなかった。
あんな風に相手の名前を呼ぶリツキなんて、絶対絶対知りたくなかった。
「ちゃんと別れてるから。全部過去の話だから、な?」
リツキに一番近いところで抱きしめられたのは、オレじゃなくて。
リツキを一番近くで感じたのは、オレじゃなくて。
それが痛い。
知りたくなかった。
こんなに苦しくて、こんなに痛いくらい、リツを好きになってたなんて、
…知りたくなかったよ。
「アイ。何でも言うこと聞くから」
殴る元気もなくなったオレを、リツキが腕の中に閉じ込めて、頭をなでながら、こめかみにキスした。
「だから、…泣くなよ」
リツキにしがみついて、ヤツの制服で涙と鼻水を拭いても、全然気持ちは晴れなかったけど、
「…いくもう、…ざい」
つぶやいたら、リツキが強く強くオレを抱きしめた。
「…バカ」
リツキのかすれた声が、切なく揺れていた。
いろいろ納得いかねーんだけど。
「お前は俺のものってこと」
しれっと言うリツキに、
「はぁっ? いつオレがお前のもんに、…」
オレが全力で抗議すると、ヤツは至極当然といった感じで、
「おもちゃって、カノジョってイミだろ」
驚愕の事実を告げた。
「はぁぁぁ?」
マジで驚きで顎が外れそうなオレに、
「知らなかったの? だからハゲんだよ」
リツキは、容赦なくトドメを刺す。
…ハゲ関係なくね?
「…浮気したら、公開キス、な」
「はぁぁぁ?」
リツキの言うことがいちいち理解できない。
バカじゃねーの。
バカじゃねーの。
「アホ面さらすな」
リツキはオレを一瞥すると、片手でオレの両頬をつぶした。
「あにす、…あっ!」
思い出した。
急いでリツキの手を振り払い、立ち止まって、じっと、リツキを観察してみる。
「なんだよ?」
「リツ、カワシマと付き合ってんじゃねーの?」
「あ?」
リツキがオレを見返した。
ぜってー、先に目をそらすもんか。
リツキが軽く、ため息をついて、視線を外した。
「なんで?」
「…カワシマ、別れたくないって泣いてた。お前、『アヤさん』て、…」
やべー、目ヂカラ弱すぎて、目が潤む。
ってか、カワシマを呼ぶリツキの声、思い出したくねー。
「防災訓練の時? お前、…居たの?」
うなずいたり、声を出したりしたら、涙が落ちてしまいそうで。
リツキを見たまま、動けなかった。
リツキがオレを引き寄せて、胸の中に抱きしめた。
クソ、泣きたくないのに、涙が落ちる。
「それで、か。あー、…ごめん」
リツキの低い声が、頭の上から響く。
なんで、謝んだよ?
リツのバカ…
「…セフレ、…だった、っつーか、…」
歯切れの悪いリツキ。
マジでバカ。最低。エロリツ。女たらし。
リツキを殴っても殴っても身体の奥からどす黒い気持ちがあふれてくる。
「アイ。…ごめん、て」
リツキはおとなしくオレに殴られるままで、緩く背中に回した手で、宥めるようにオレの頭をなでた。
胸が苦しい。
リツキはモテるから、ヤッたこととかあるだろうって分かってる。
「抱かれたい」とか女子がキャアキャア騒いでるのも知ってる。
しょっちゅう、イチャコラしてたのも覚えてる。
けど。
こいつとヤッた女なんて知りたくなかった。
あんな風に相手の名前を呼ぶリツキなんて、絶対絶対知りたくなかった。
「ちゃんと別れてるから。全部過去の話だから、な?」
リツキに一番近いところで抱きしめられたのは、オレじゃなくて。
リツキを一番近くで感じたのは、オレじゃなくて。
それが痛い。
知りたくなかった。
こんなに苦しくて、こんなに痛いくらい、リツを好きになってたなんて、
…知りたくなかったよ。
「アイ。何でも言うこと聞くから」
殴る元気もなくなったオレを、リツキが腕の中に閉じ込めて、頭をなでながら、こめかみにキスした。
「だから、…泣くなよ」
リツキにしがみついて、ヤツの制服で涙と鼻水を拭いても、全然気持ちは晴れなかったけど、
「…いくもう、…ざい」
つぶやいたら、リツキが強く強くオレを抱きしめた。
「…バカ」
リツキのかすれた声が、切なく揺れていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜
green
青春
一ノ瀬財閥の令嬢、一ノ瀬綾乃は小学校一年生からサッカーを始め、プロサッカー選手になることを夢見ている。
しかし、父である浩平にその夢を反対される。
夢を諦めきれない綾乃は浩平に言う。
「その夢に挑戦するためのお時間をいただけないでしょうか?」
一人のお嬢様の挑戦が始まる。
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる