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hage.19
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「いやっほ~~~っ」
チナツんちで昼までダラダラした後、遊園地にやってきた。
チナツが前々から誘われていたという、バイト先の樋口くんと竹田くんがいた。
やっぱり防災訓練明けらしく、煙と起震車の話で盛り上がる。
「次、あれ乗ろうぜ、あれっ」
立て続けに絶叫系に乗ったら、テンションが戻ってきた。
遊園地に来るのは、久しぶりだ。
「アイちゃん、飛ばしすぎ~」
いくつか乗った後、汗だくになりながら、樋口くんがジュースを買ってきてくれた。
「ありがと、樋口くん」
チナツが可愛らしくお礼を言う。
チナツと隣に座る竹田くんは、さっきから話が弾んでいてなんかイイ雰囲気だ。
「アイちゃん、て…」
隣に座った樋口くんがオレを見る。
「付き合ってる人、いるの?」
とっさに、リツキの顔が浮かんで、…次いで、カワシマの顔が浮かんだ。
「いねーよ?」
答えると、樋口くんが、ちょっとはにかみながら、
「ねぇ、最後に観覧車、乗ろう?」
そう言った。
観覧車は長い列ができていて、やっと順番が来たのは、閉園間際だった。
「チナツちゃん、一緒に乗ろ」
竹田くんはチナツと二人になりたいらしく、先に乗っていった。
観覧車は結構高さがあり、高層ビルやらタワーやらが沈みゆく夕日に照らされてきれいだった。
「なー、もうすぐ頂上かなっ」
落ち着きなくあちこち見て回ってから、やっと座って樋口くんに顔を向けると、
…樋口くんの唇がオレの唇をかすった。
「アイちゃん。俺、最初に見た時から、アイちゃんのこといいなって思ってたんだ。俺と付き合ってくれない?」
狭い観覧車の中で、すぐ近くに樋口くんの真剣な目があった。
「アイちゃんのこと、好きなんだ」
動けなかった。
好き、って、なんだ…?
壊れたみたいに涙が出てくる、あれが好き?
黙っちまったオレの手を握ると、
「返事は、すぐじゃなくてイイから。…考えてみて、俺のこと」
樋口くんが優しく言う。
なんとかうなずいた、と思う。
残りの観覧車では、全く外を見れなかった。
樋口くんが、ずっとオレの手を握っていた。
地上まで、あまりにも長い。
樋口くんは優しい口調で話しかけてくれたけど、ほとんど頭に入ってこなかった。
好き、って。
言ってもらったの、オレ、初めてだ…
「…遅えな、アイ」
遊園地から帰ると、団地の入口にリツキがいた。足元にサッカーボールが転がっている。
「…よぅ」
そのまま通り過ぎようとすると、結構な力で腕をつかまれた。
「いてー…」
「なんだよ、そのカッコ!」
仰ぎ見ると、リツキはひどく機嫌が悪そうだ。
でも知らねー。
「別にイイだろ?チナツに借りたんだよ」
リツキの機嫌なんかオレには関係ねー。
「お前がスカートとか、…似合わねーんだよっ」
吐き捨てるようなリツキの言い方に、頭ン中で何かが切れた。
今日はオシャレして、ヤなこと忘れて遊ぼ、って、チナツが貸してくれた。
腫れた目も、目立たないようにメイクしてくれた。
「お前に関係ねーだろっ!」
リツキの手を振り払う。
「オレとお前は、何も関係ねーだろ!
お前は遊んでるつもりかもしれないけど、オレは、…」
キスも。髪ゴムも。海も。
つないだ手も。
広い腕の中も。
「オレは、お前が、迷惑なんだよっ!」
はっきりと、リツキが傷ついた顔をした。
でも止められなかった。
「バラしたきゃ、バラせよっ」
リツキがくれた金の髪ゴムをむしりとって投げつけた。
「お前なんか、大っ嫌いだっ!!」
チナツんちで昼までダラダラした後、遊園地にやってきた。
チナツが前々から誘われていたという、バイト先の樋口くんと竹田くんがいた。
やっぱり防災訓練明けらしく、煙と起震車の話で盛り上がる。
「次、あれ乗ろうぜ、あれっ」
立て続けに絶叫系に乗ったら、テンションが戻ってきた。
遊園地に来るのは、久しぶりだ。
「アイちゃん、飛ばしすぎ~」
いくつか乗った後、汗だくになりながら、樋口くんがジュースを買ってきてくれた。
「ありがと、樋口くん」
チナツが可愛らしくお礼を言う。
チナツと隣に座る竹田くんは、さっきから話が弾んでいてなんかイイ雰囲気だ。
「アイちゃん、て…」
隣に座った樋口くんがオレを見る。
「付き合ってる人、いるの?」
とっさに、リツキの顔が浮かんで、…次いで、カワシマの顔が浮かんだ。
「いねーよ?」
答えると、樋口くんが、ちょっとはにかみながら、
「ねぇ、最後に観覧車、乗ろう?」
そう言った。
観覧車は長い列ができていて、やっと順番が来たのは、閉園間際だった。
「チナツちゃん、一緒に乗ろ」
竹田くんはチナツと二人になりたいらしく、先に乗っていった。
観覧車は結構高さがあり、高層ビルやらタワーやらが沈みゆく夕日に照らされてきれいだった。
「なー、もうすぐ頂上かなっ」
落ち着きなくあちこち見て回ってから、やっと座って樋口くんに顔を向けると、
…樋口くんの唇がオレの唇をかすった。
「アイちゃん。俺、最初に見た時から、アイちゃんのこといいなって思ってたんだ。俺と付き合ってくれない?」
狭い観覧車の中で、すぐ近くに樋口くんの真剣な目があった。
「アイちゃんのこと、好きなんだ」
動けなかった。
好き、って、なんだ…?
壊れたみたいに涙が出てくる、あれが好き?
黙っちまったオレの手を握ると、
「返事は、すぐじゃなくてイイから。…考えてみて、俺のこと」
樋口くんが優しく言う。
なんとかうなずいた、と思う。
残りの観覧車では、全く外を見れなかった。
樋口くんが、ずっとオレの手を握っていた。
地上まで、あまりにも長い。
樋口くんは優しい口調で話しかけてくれたけど、ほとんど頭に入ってこなかった。
好き、って。
言ってもらったの、オレ、初めてだ…
「…遅えな、アイ」
遊園地から帰ると、団地の入口にリツキがいた。足元にサッカーボールが転がっている。
「…よぅ」
そのまま通り過ぎようとすると、結構な力で腕をつかまれた。
「いてー…」
「なんだよ、そのカッコ!」
仰ぎ見ると、リツキはひどく機嫌が悪そうだ。
でも知らねー。
「別にイイだろ?チナツに借りたんだよ」
リツキの機嫌なんかオレには関係ねー。
「お前がスカートとか、…似合わねーんだよっ」
吐き捨てるようなリツキの言い方に、頭ン中で何かが切れた。
今日はオシャレして、ヤなこと忘れて遊ぼ、って、チナツが貸してくれた。
腫れた目も、目立たないようにメイクしてくれた。
「お前に関係ねーだろっ!」
リツキの手を振り払う。
「オレとお前は、何も関係ねーだろ!
お前は遊んでるつもりかもしれないけど、オレは、…」
キスも。髪ゴムも。海も。
つないだ手も。
広い腕の中も。
「オレは、お前が、迷惑なんだよっ!」
はっきりと、リツキが傷ついた顔をした。
でも止められなかった。
「バラしたきゃ、バラせよっ」
リツキがくれた金の髪ゴムをむしりとって投げつけた。
「お前なんか、大っ嫌いだっ!!」
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