【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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「いやっほ~~~っ」

チナツんちで昼までダラダラした後、遊園地にやってきた。
チナツが前々から誘われていたという、バイト先の樋口くんと竹田くんがいた。
やっぱり防災訓練明けらしく、煙と起震車の話で盛り上がる。

「次、あれ乗ろうぜ、あれっ」

立て続けに絶叫系に乗ったら、テンションが戻ってきた。
遊園地に来るのは、久しぶりだ。

「アイちゃん、飛ばしすぎ~」

いくつか乗った後、汗だくになりながら、樋口くんがジュースを買ってきてくれた。

「ありがと、樋口くん」

チナツが可愛らしくお礼を言う。
チナツと隣に座る竹田くんは、さっきから話が弾んでいてなんかイイ雰囲気だ。

「アイちゃん、て…」

隣に座った樋口くんがオレを見る。

「付き合ってる人、いるの?」

とっさに、リツキの顔が浮かんで、…次いで、カワシマの顔が浮かんだ。

「いねーよ?」

答えると、樋口くんが、ちょっとはにかみながら、

「ねぇ、最後に観覧車、乗ろう?」

そう言った。

観覧車は長い列ができていて、やっと順番が来たのは、閉園間際だった。

「チナツちゃん、一緒に乗ろ」

竹田くんはチナツと二人になりたいらしく、先に乗っていった。

観覧車は結構高さがあり、高層ビルやらタワーやらが沈みゆく夕日に照らされてきれいだった。

「なー、もうすぐ頂上かなっ」

落ち着きなくあちこち見て回ってから、やっと座って樋口くんに顔を向けると、

…樋口くんの唇がオレの唇をかすった。

「アイちゃん。俺、最初に見た時から、アイちゃんのこといいなって思ってたんだ。俺と付き合ってくれない?」

狭い観覧車の中で、すぐ近くに樋口くんの真剣な目があった。

「アイちゃんのこと、好きなんだ」

動けなかった。

好き、って、なんだ…?
壊れたみたいに涙が出てくる、あれが好き?

黙っちまったオレの手を握ると、

「返事は、すぐじゃなくてイイから。…考えてみて、俺のこと」

樋口くんが優しく言う。
なんとかうなずいた、と思う。

残りの観覧車では、全く外を見れなかった。
樋口くんが、ずっとオレの手を握っていた。
地上まで、あまりにも長い。
樋口くんは優しい口調で話しかけてくれたけど、ほとんど頭に入ってこなかった。

好き、って。
言ってもらったの、オレ、初めてだ…

「…遅えな、アイ」

遊園地から帰ると、団地の入口にリツキがいた。足元にサッカーボールが転がっている。

「…よぅ」

そのまま通り過ぎようとすると、結構な力で腕をつかまれた。

「いてー…」

「なんだよ、そのカッコ!」

仰ぎ見ると、リツキはひどく機嫌が悪そうだ。
でも知らねー。

「別にイイだろ?チナツに借りたんだよ」

リツキの機嫌なんかオレには関係ねー。

「お前がスカートとか、…似合わねーんだよっ」

吐き捨てるようなリツキの言い方に、頭ン中で何かが切れた。

今日はオシャレして、ヤなこと忘れて遊ぼ、って、チナツが貸してくれた。
腫れた目も、目立たないようにメイクしてくれた。

「お前に関係ねーだろっ!」

リツキの手を振り払う。

「オレとお前は、何も関係ねーだろ!
 お前は遊んでるつもりかもしれないけど、オレは、…」

キスも。髪ゴムも。海も。
つないだ手も。
広い腕の中も。

「オレは、お前が、迷惑なんだよっ!」

はっきりと、リツキが傷ついた顔をした。
でも止められなかった。

「バラしたきゃ、バラせよっ」

リツキがくれた金の髪ゴムをむしりとって投げつけた。

「お前なんか、大っ嫌いだっ!!」
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