18 / 118
hage.18
しおりを挟む
夜の学校は、なんか不気味だ。
窓ガラスに写る自分の姿さえ、ヒヤッとする。
化学室とか生物室とか、ちょっと近づきたくない。
廊下の水道が空恐ろしく見えるのはなぜだろう。
チナツとくっつきながら、コソコソ探っていると、
LL教室の辺りで話し声がした。
明かりはついていない。
ちょっと怖いけど、誰かいるのは間違いないだろう。
近づいて、ドアを開けようとした瞬間、
「いやっ、別れたくないっ!」
中から、涙混じりのカワシマの声がした。
本当は。
リツキを見つけたら、軽く声をかけるつもりだったんだ。
だけどなんか、切羽詰ったカワシマの声が、
ドアを開けようとしていたオレの手を止めて、
「…アヤさん」
カワシマの名前を呼んだリツキの低い声が、
…オレの心臓を止めた。
女子部屋まで、どうやって帰ってきたか、覚えていない。
「お帰り、アイ~、どうだっ…」
チナツが女子らを目で制す。
毛布を頭からかぶって丸まった。
あれは、リツキの声だった。
オレの耳元で、オレの名前を呼ぶ時と、同じ声だ。
カワシマのこと、名前で呼んでた。
カワシマ、「別れたくない」って言ってた。
いくらオレだって、わかる。
二人は恋人同士なんだって。
キス、してたもんな…
冷たいと思ったら、涙が落ちていた。
どこかが壊れたみたいに、後から後から落ちてくる。
なんでオレ、泣いてんだ?
リツキ、最初から言ってたのに。
オレのこと、「おもちゃ」って。
「楽しく遊ぼう」って。
リツキに遊ばれてるだけだって、わかってたのに。
なんでこんなに息もできないくらい、泣いてるんだろう。
そっと誰かが近づいてくる気配がしたと思ったら、
毛布の上から抱きしめられた。
「アイ、…リツキくんのこと、ホントに好きなんだね」
優しくチナツが言う。
涙が出るのは。
免疫異常も心臓発作も関係ないのか。
オレ、リツが、好きなのか?
「ね、明日の朝、防災訓練終わったら、家においでよ。明日は、ぱーっと遊ぼっ」
明るいチナツの声に、オレは毛布をかぶったままうなずいた。
朝になったら、やばいくらい目が腫れていて、
「アイ?なんかあった?」
どこからかリツキがとんできたけど、
「女子部屋で泣けるマンガ回し読みして」
チナツがかわしてくれた。
「続き読みたいっていうから、今日はアイ、あたしと帰るね」
リツキの方は見れなかった。
カワシマを呼ぶリツキの声がよみがえる。
カワシマとキスするリツキの姿がよみがえる。
リツキを見たくなかった。
窓ガラスに写る自分の姿さえ、ヒヤッとする。
化学室とか生物室とか、ちょっと近づきたくない。
廊下の水道が空恐ろしく見えるのはなぜだろう。
チナツとくっつきながら、コソコソ探っていると、
LL教室の辺りで話し声がした。
明かりはついていない。
ちょっと怖いけど、誰かいるのは間違いないだろう。
近づいて、ドアを開けようとした瞬間、
「いやっ、別れたくないっ!」
中から、涙混じりのカワシマの声がした。
本当は。
リツキを見つけたら、軽く声をかけるつもりだったんだ。
だけどなんか、切羽詰ったカワシマの声が、
ドアを開けようとしていたオレの手を止めて、
「…アヤさん」
カワシマの名前を呼んだリツキの低い声が、
…オレの心臓を止めた。
女子部屋まで、どうやって帰ってきたか、覚えていない。
「お帰り、アイ~、どうだっ…」
チナツが女子らを目で制す。
毛布を頭からかぶって丸まった。
あれは、リツキの声だった。
オレの耳元で、オレの名前を呼ぶ時と、同じ声だ。
カワシマのこと、名前で呼んでた。
カワシマ、「別れたくない」って言ってた。
いくらオレだって、わかる。
二人は恋人同士なんだって。
キス、してたもんな…
冷たいと思ったら、涙が落ちていた。
どこかが壊れたみたいに、後から後から落ちてくる。
なんでオレ、泣いてんだ?
リツキ、最初から言ってたのに。
オレのこと、「おもちゃ」って。
「楽しく遊ぼう」って。
リツキに遊ばれてるだけだって、わかってたのに。
なんでこんなに息もできないくらい、泣いてるんだろう。
そっと誰かが近づいてくる気配がしたと思ったら、
毛布の上から抱きしめられた。
「アイ、…リツキくんのこと、ホントに好きなんだね」
優しくチナツが言う。
涙が出るのは。
免疫異常も心臓発作も関係ないのか。
オレ、リツが、好きなのか?
「ね、明日の朝、防災訓練終わったら、家においでよ。明日は、ぱーっと遊ぼっ」
明るいチナツの声に、オレは毛布をかぶったままうなずいた。
朝になったら、やばいくらい目が腫れていて、
「アイ?なんかあった?」
どこからかリツキがとんできたけど、
「女子部屋で泣けるマンガ回し読みして」
チナツがかわしてくれた。
「続き読みたいっていうから、今日はアイ、あたしと帰るね」
リツキの方は見れなかった。
カワシマを呼ぶリツキの声がよみがえる。
カワシマとキスするリツキの姿がよみがえる。
リツキを見たくなかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話


隣の優等生は、デブ活に命を捧げたいっ
椎名 富比路
青春
女子高生の尾村いすゞは、実家が大衆食堂をやっている。
クラスの隣の席の優等生細江《ほそえ》 桃亜《ももあ》が、「デブ活がしたい」と言ってきた。
桃亜は学生の身でありながら、アプリ制作会社で就職前提のバイトをしている。
だが、連日の学業と激務によって、常に腹を減らしていた。
料理の腕を磨くため、いすゞは桃亜に協力をする。

ハルといた夏
イトマドウ
青春
小学6年生の奈月(なつき)が、小学生最後の夏休みに父の実家へ遊びに行くことに。
そこで出会った高校1年性の従姉、小晴(こはる)と虫取りや夏まつりに行くことで
少しだけ大人になる物語。

あの音になりたい! 北浜高校吹奏楽部へようこそ!
コウ
青春
またダメ金か、、。
中学で吹奏楽部に挫折した雨宮洸。
もうこれっきりにしようと進学した先は北浜高校。
[絶対に入らない]そう心に誓ったのに
そんな時、屋上から音が聞こえてくる。
吹奏楽部で青春and恋愛ドタバタストーリー。

コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜
青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。
彼には美少女の幼馴染がいる。
それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。
学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。
これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。
毎日更新します。
消えていく君のカケラと、進まない僕の時間
月ヶ瀬 杏
青春
青山陽咲、藤川大晴、矢野蒼月は、幼稚園の頃からの幼馴染。小学校までは仲の良かった三人だが、十歳のときに起きたある出来事をキッカケに、陽咲と蒼月の仲は疎遠になった。
高二の夏休み、突然、陽咲と蒼月のことを呼び出した大晴が、
「夏休みに、なんか思い出残さない?」
と誘いかけてくる。
「記憶はいつか曖昧になるから、記録を残したいんだ」
という大晴の言葉で、陽咲たちは映画撮影を始める。小学生のときから疎遠になっていた蒼月と話すきっかけができた陽咲は嬉しく思うが、蒼月の態度は会う度に少し違う。
大晴も、陽咲に何か隠し事をしているようで……。
幼なじみの三角関係ラブストーリー。

青春クロスロード ~若者たちの交差点~
Ryosuke
青春
高校2年の主人公の二郎をはじめ、青春真っ只中の高校生達がそれぞれの想いを交差させながら様々な学園ドラマを巻き起こしていく、笑いあり、友情あり、恋愛ありの青春恋愛群像劇。そして、それぞれの交流を通じて成長していく中で各々がそれぞれの人生の選択をし、どんな道を歩んでいくのか。それを知るものはまだいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる