【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

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夜の学校は、なんか不気味だ。
窓ガラスに写る自分の姿さえ、ヒヤッとする。
化学室とか生物室とか、ちょっと近づきたくない。
廊下の水道が空恐ろしく見えるのはなぜだろう。

チナツとくっつきながら、コソコソ探っていると、
LL教室の辺りで話し声がした。
明かりはついていない。
ちょっと怖いけど、誰かいるのは間違いないだろう。

近づいて、ドアを開けようとした瞬間、

「いやっ、別れたくないっ!」

中から、涙混じりのカワシマの声がした。

本当は。
リツキを見つけたら、軽く声をかけるつもりだったんだ。

だけどなんか、切羽詰ったカワシマの声が、
ドアを開けようとしていたオレの手を止めて、

「…アヤさん」

カワシマの名前を呼んだリツキの低い声が、
…オレの心臓を止めた。



女子部屋まで、どうやって帰ってきたか、覚えていない。

「お帰り、アイ~、どうだっ…」

チナツが女子らを目で制す。

毛布を頭からかぶって丸まった。

あれは、リツキの声だった。
オレの耳元で、オレの名前を呼ぶ時と、同じ声だ。
カワシマのこと、名前で呼んでた。
カワシマ、「別れたくない」って言ってた。

いくらオレだって、わかる。
二人は恋人同士なんだって。

キス、してたもんな…

冷たいと思ったら、涙が落ちていた。
どこかが壊れたみたいに、後から後から落ちてくる。

なんでオレ、泣いてんだ?

リツキ、最初から言ってたのに。
オレのこと、「おもちゃ」って。
「楽しく遊ぼう」って。

リツキに遊ばれてるだけだって、わかってたのに。
なんでこんなに息もできないくらい、泣いてるんだろう。

そっと誰かが近づいてくる気配がしたと思ったら、
毛布の上から抱きしめられた。

「アイ、…リツキくんのこと、ホントに好きなんだね」

優しくチナツが言う。

涙が出るのは。
免疫異常も心臓発作も関係ないのか。
オレ、リツが、好きなのか?

「ね、明日の朝、防災訓練終わったら、家においでよ。明日は、ぱーっと遊ぼっ」

明るいチナツの声に、オレは毛布をかぶったままうなずいた。

朝になったら、やばいくらい目が腫れていて、

「アイ?なんかあった?」

どこからかリツキがとんできたけど、

「女子部屋で泣けるマンガ回し読みして」

チナツがかわしてくれた。

「続き読みたいっていうから、今日はアイ、あたしと帰るね」

リツキの方は見れなかった。
カワシマを呼ぶリツキの声がよみがえる。
カワシマとキスするリツキの姿がよみがえる。

リツキを見たくなかった。
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