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hage.16
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「アイ、元気出しなよ~。まぁ、気になるけどさ。
大丈夫。リツキくんは、アイが好きだよ。見てたら分かるもん」
発作は治まったけど、なんかダルくて、サッカーもイマイチ調子でねー。
「おい、古町はどうしたんだ?食べすぎか?」
「ふふっ、恋の病ですよ」
「ぶはっ…」
「や、監督、失礼ですから」
いつも群がってるサッカー部応援女子の中に、カワシマがいた。
周囲を気にする様子もなく、一心にリツキを追っている。
スタイルが良くって、顔もきれいで、女子の中でも一際目立つ。
リツキと並ぶとモデルみたいだ。
映画みたいに、キスしてたな。
だからって、オレには関係ねーけど。
まるっきり、関係ねーけど。
「アイ、帰るぞ」
練習を終えて、部室を出るとリツキが待ってた。
なんつーか、そのいつもと変わらない感じに
ものすごくイラついて、
「カワシマと帰れよっ!!」
言い捨てて駆け出した。
「アイっ!?」
校門を出て、坂を駆け下りて、信号も突っ切って、猛然と走ったけど、駅に着く前にリツキに追いつかれた。
「待てって」
後ろから羽交い絞めにされて動けねー。
なんで、いつも追いつかれるんだ。
オレだって足は速い方なのに。
悔しい。悔しい。
「アイ、暴れんな」
リツキは大きくて、簡単にオレをその腕の中に閉じこめてしまう。
「こっち向け」
ぜってー、やだ。
いつもいつもこいつの思い通りにさせてたまるか。
リツキから顔をそむけたまま、荒い息をついていたら、
耳たぶに生温かい感触がして、続けて耳の穴に何か入ってきた。
「な、なな、…何すんだよっ」
こいつ、もしかして、耳舐めた!?
背筋がぞわぞわして、思わず振り返ると、リツキが涼しい顔で俺を向き直らせ、額に額を合わせた。
…近くね?
「なんで、川嶋が出てくるんだ?」
リツキが、逃げるのを許さないような至近距離で、
「言えよ」
うっかりキスしそうなほど近くで、オレに迫ってくるから、頭が熱くなって、やけくそに叫んだ。
「カワシマとキスしてただろ!」
言ったら、また胸の奥がギリギリ痛くなって、発作で泣きそうになったから、必死で唇を噛みしめた。
「え…」
リツキはちょっと面食らったような顔をして、マジマジとオレを見つめた後、なぜかふっと口角を上げた。
てめー、笑うトコか!?
怒りで頭が沸騰しそうなオレに、
「…してないよ」
耳元で低く告げる。
んな、かっこつけた声で全面的に嘘つくなよっ
「アイ」
リツキがオレの目をのぞき込んで、
「お前、マジで可愛いな」
オレが噛みしめている唇を親指でなぞる。
「噛むな、血が出るぞ」
「おっ、お前がっ…」
オレの言葉ごと、リツキが飲み込んだ。
そのまま、オレの唇を舐める。
「あんなの、キスじゃない。…アイとしかしない」
オレに何も言う隙を与えず、またオレの唇をふさぐ。
優しく、柔らかく、ついばむようにリツキがオレの唇に触れる。
何度も何度も繰り返した後、オレをその広い胸の中に抱きしめた。
「…ごめん」
リツキの心臓の音が聞こえる。
それを聞いていると、沸き立っていた頭も、痛かった心臓も、
癒されていくような気がした。
「アイが妬くから言うけど」
妬いてねー。
帰りの電車で当たり前みたいにオレと手をつなぐリツキは、なんか機嫌がいい。
「川嶋は、俺が中学の時、通ってた塾の先生で、まあ、…俺のサッカーを応援してくれてんだよ」
別に、興味ねー。
けど、たまたま空いてた座席に座って、規則正しく電車に揺られてるうちにうとうとして、寄りかかったリツキの肩は、すごく心地良かった。
大丈夫。リツキくんは、アイが好きだよ。見てたら分かるもん」
発作は治まったけど、なんかダルくて、サッカーもイマイチ調子でねー。
「おい、古町はどうしたんだ?食べすぎか?」
「ふふっ、恋の病ですよ」
「ぶはっ…」
「や、監督、失礼ですから」
いつも群がってるサッカー部応援女子の中に、カワシマがいた。
周囲を気にする様子もなく、一心にリツキを追っている。
スタイルが良くって、顔もきれいで、女子の中でも一際目立つ。
リツキと並ぶとモデルみたいだ。
映画みたいに、キスしてたな。
だからって、オレには関係ねーけど。
まるっきり、関係ねーけど。
「アイ、帰るぞ」
練習を終えて、部室を出るとリツキが待ってた。
なんつーか、そのいつもと変わらない感じに
ものすごくイラついて、
「カワシマと帰れよっ!!」
言い捨てて駆け出した。
「アイっ!?」
校門を出て、坂を駆け下りて、信号も突っ切って、猛然と走ったけど、駅に着く前にリツキに追いつかれた。
「待てって」
後ろから羽交い絞めにされて動けねー。
なんで、いつも追いつかれるんだ。
オレだって足は速い方なのに。
悔しい。悔しい。
「アイ、暴れんな」
リツキは大きくて、簡単にオレをその腕の中に閉じこめてしまう。
「こっち向け」
ぜってー、やだ。
いつもいつもこいつの思い通りにさせてたまるか。
リツキから顔をそむけたまま、荒い息をついていたら、
耳たぶに生温かい感触がして、続けて耳の穴に何か入ってきた。
「な、なな、…何すんだよっ」
こいつ、もしかして、耳舐めた!?
背筋がぞわぞわして、思わず振り返ると、リツキが涼しい顔で俺を向き直らせ、額に額を合わせた。
…近くね?
「なんで、川嶋が出てくるんだ?」
リツキが、逃げるのを許さないような至近距離で、
「言えよ」
うっかりキスしそうなほど近くで、オレに迫ってくるから、頭が熱くなって、やけくそに叫んだ。
「カワシマとキスしてただろ!」
言ったら、また胸の奥がギリギリ痛くなって、発作で泣きそうになったから、必死で唇を噛みしめた。
「え…」
リツキはちょっと面食らったような顔をして、マジマジとオレを見つめた後、なぜかふっと口角を上げた。
てめー、笑うトコか!?
怒りで頭が沸騰しそうなオレに、
「…してないよ」
耳元で低く告げる。
んな、かっこつけた声で全面的に嘘つくなよっ
「アイ」
リツキがオレの目をのぞき込んで、
「お前、マジで可愛いな」
オレが噛みしめている唇を親指でなぞる。
「噛むな、血が出るぞ」
「おっ、お前がっ…」
オレの言葉ごと、リツキが飲み込んだ。
そのまま、オレの唇を舐める。
「あんなの、キスじゃない。…アイとしかしない」
オレに何も言う隙を与えず、またオレの唇をふさぐ。
優しく、柔らかく、ついばむようにリツキがオレの唇に触れる。
何度も何度も繰り返した後、オレをその広い胸の中に抱きしめた。
「…ごめん」
リツキの心臓の音が聞こえる。
それを聞いていると、沸き立っていた頭も、痛かった心臓も、
癒されていくような気がした。
「アイが妬くから言うけど」
妬いてねー。
帰りの電車で当たり前みたいにオレと手をつなぐリツキは、なんか機嫌がいい。
「川嶋は、俺が中学の時、通ってた塾の先生で、まあ、…俺のサッカーを応援してくれてんだよ」
別に、興味ねー。
けど、たまたま空いてた座席に座って、規則正しく電車に揺られてるうちにうとうとして、寄りかかったリツキの肩は、すごく心地良かった。
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雨月黛狼
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