【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

文字の大きさ
上 下
16 / 118

hage.16

しおりを挟む
「アイ、元気出しなよ~。まぁ、気になるけどさ。
大丈夫。リツキくんは、アイが好きだよ。見てたら分かるもん」

発作は治まったけど、なんかダルくて、サッカーもイマイチ調子でねー。

「おい、古町はどうしたんだ?食べすぎか?」
「ふふっ、恋の病ですよ」
「ぶはっ…」
「や、監督、失礼ですから」

いつも群がってるサッカー部応援女子の中に、カワシマがいた。
周囲を気にする様子もなく、一心にリツキを追っている。
スタイルが良くって、顔もきれいで、女子の中でも一際目立つ。
リツキと並ぶとモデルみたいだ。

映画みたいに、キスしてたな。

だからって、オレには関係ねーけど。
まるっきり、関係ねーけど。

「アイ、帰るぞ」

練習を終えて、部室を出るとリツキが待ってた。
なんつーか、そのいつもと変わらない感じに
ものすごくイラついて、

「カワシマと帰れよっ!!」

言い捨てて駆け出した。

「アイっ!?」

校門を出て、坂を駆け下りて、信号も突っ切って、猛然と走ったけど、駅に着く前にリツキに追いつかれた。

「待てって」

後ろから羽交い絞めにされて動けねー。
なんで、いつも追いつかれるんだ。
オレだって足は速い方なのに。
悔しい。悔しい。

「アイ、暴れんな」

リツキは大きくて、簡単にオレをその腕の中に閉じこめてしまう。

「こっち向け」

ぜってー、やだ。
いつもいつもこいつの思い通りにさせてたまるか。

リツキから顔をそむけたまま、荒い息をついていたら、
耳たぶに生温かい感触がして、続けて耳の穴に何か入ってきた。

「な、なな、…何すんだよっ」

こいつ、もしかして、耳舐めた!?

背筋がぞわぞわして、思わず振り返ると、リツキが涼しい顔で俺を向き直らせ、額に額を合わせた。

…近くね?

「なんで、川嶋が出てくるんだ?」

リツキが、逃げるのを許さないような至近距離で、

「言えよ」

うっかりキスしそうなほど近くで、オレに迫ってくるから、頭が熱くなって、やけくそに叫んだ。

「カワシマとキスしてただろ!」

言ったら、また胸の奥がギリギリ痛くなって、発作で泣きそうになったから、必死で唇を噛みしめた。

「え…」

リツキはちょっと面食らったような顔をして、マジマジとオレを見つめた後、なぜかふっと口角を上げた。

てめー、笑うトコか!?

怒りで頭が沸騰しそうなオレに、

「…してないよ」

耳元で低く告げる。

んな、かっこつけた声で全面的に嘘つくなよっ

「アイ」

リツキがオレの目をのぞき込んで、

「お前、マジで可愛いな」

オレが噛みしめている唇を親指でなぞる。

「噛むな、血が出るぞ」

「おっ、お前がっ…」

オレの言葉ごと、リツキが飲み込んだ。
そのまま、オレの唇を舐める。

「あんなの、キスじゃない。…アイとしかしない」

オレに何も言う隙を与えず、またオレの唇をふさぐ。
優しく、柔らかく、ついばむようにリツキがオレの唇に触れる。
何度も何度も繰り返した後、オレをその広い胸の中に抱きしめた。

「…ごめん」

リツキの心臓の音が聞こえる。
それを聞いていると、沸き立っていた頭も、痛かった心臓も、
癒されていくような気がした。


「アイが妬くから言うけど」

妬いてねー。

帰りの電車で当たり前みたいにオレと手をつなぐリツキは、なんか機嫌がいい。

「川嶋は、俺が中学の時、通ってた塾の先生で、まあ、…俺のサッカーを応援してくれてんだよ」

別に、興味ねー。

けど、たまたま空いてた座席に座って、規則正しく電車に揺られてるうちにうとうとして、寄りかかったリツキの肩は、すごく心地良かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

暴走♡アイドル3~オトヒメサマノユメ~

雪ノ瀬瞬
青春
今回のステージは神奈川です 鬼音姫の哉原樹 彼女がストーリーの主人公となり彼女の過去が明らかになります 親友の白桐優子 優子の謎の失踪から突然の再会 何故彼女は姿を消したのか 私の中学の頃の実話を元にしました

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

【完結】あの日、君の本音に気付けなくて

ナカジマ
青春
藤木涼介と清水凛は、中学3年のバレンタインで両片思いから両想いになった。しかし高校生になってからは、何となく疎遠になってしまっていた。両想いになったからゴールだと勘違いしている涼介と、ちゃんと恋人同士になりたいと言い出せない凛。バスケ部が楽しいから良いんだと開き直った涼介と、自分は揶揄われたのではないかと疑い始める凛。お互いに好意があるにも関わらず、以前よりも複雑な両片思いに陥った2人。 とある理由から、女子の好意を理解出来なくなったバスケ部男子と、引っ込み思案で中々気持ちを伝えられない吹奏楽部女子。普通の男女が繰り広げる、部活に勉強、修学旅行。不器用な2人の青春やり直しストーリー。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

燦歌を乗せて

河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。 久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。 第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

処理中です...