【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

文字の大きさ
上 下
12 / 118

hage.12

しおりを挟む
「ビール、ジョッキで、あわせて10」
「オムレツ、2つ追加」
「豆腐サラダ、上がり~」

今日は料理を運ぶだけだったけど、結構な忙しさで、急ぐとひっくり返しそうになるし、テーブルを間違えたりして、バイト仲間の樋口くんと竹田くんがフォローしてくれた。

2人とも週末だけシフトに入っている高校生で、爽やかイケメンでチナツの目がキラキラしていた。

リツキは妙に仕事が早く、スマートな身のこなしとエセ笑顔で客のお姉さんたちに話しかけられたりしていた。

オレにあんなモン付けといて、何ヘラヘラしてやがる。

胸くそわりー。

と思ってたら、前から来た客にぶつかり、白ワインをぶちまけた。

「す、すみませんっ」
「大丈夫ですか。かかりませんでしたか?」

オレが焦って謝っていると、どこから見てたのかリツキが来て、一緒に片して謝ってくれた。

「うん。大丈夫。新しいバイトちゃん?頑張ってね」

客のお兄さんは優しい人だったようで、オレのちょんまげをなでると、にこやかにトイレに去って行った。

「…ハゲ」

空のグラスを拾ったリツキがおもむろに禁断の一言を口にする。

「なっ、…!」

てめーっ、ハゲを笑うヤツはハゲに泣くんだぞっ

悔しくてギリギリするオレを一瞥して、リツキは軽くちょんまげを引っ張ると、さっさと離れていった。

ちくしょー。

2時間くらいで混雑も緩和され、来週からの正式採用が決まって、バイト体験が終わった。

「疲れたね~」

と言いながらも、イケメン率が高くてチナツは嬉しそうだ。

更衣室を出ると、リツキが待っていて、

「行くぞ」

またしてもオレの手をがっちり捕まえてきやがった。

「ああ?オレは、チナツと…っ」

言いかけてチナツを見ると爽やかに手を振り、

「アイ~、月曜に感想聞かせてね~」

…何のだよ。

リツキが家とは反対方向の電車に乗る。

「どこ行くつもりだよ?」

オレが吠えても、

「おもちゃは黙ってついてこい」

傲慢なリツキはオレの貴重な休みを奪おうとしてくる。

クソ、バイト代が入ったら速攻、育毛剤を買ってやる。
シャンプーも育毛成分で選んでやる。
っつか、まずはワカメを買うべきか…

「起きろ、ハゲ」

人生の難問に挑んでいたら、いつの間にか寝てしまったらしく、隣の座席に座るリツキがオレのちょんまげを引っ張る。

「てめー、軽々しく引っ張んなよっ! 広がったらどうしてくれんだ!」

「…よだれ拭け」

オレの抗議を軽くスルーして、リツキがハンカチを押し当ててきた。

ふん。
寄りかかってたっぽい、リツキの服にもよだれを垂らした跡があるから、まあ許してやる。

電車を降りると、海が見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春はあじ

えすかるご
青春
自然と食べ物が豊富な米馬町に住む女の子の優瓜(ゆうり)と米馬町にやってきた菊乃(きくの)が米馬町で初の子ども食堂の開催を目指す物語。 1章4話(各800字程)×6章予定。 毎週火曜日20時1話更新。 初投稿なので、ご意見ご指摘していただけると嬉しいです。

隣の優等生は、デブ活に命を捧げたいっ

椎名 富比路
青春
女子高生の尾村いすゞは、実家が大衆食堂をやっている。 クラスの隣の席の優等生細江《ほそえ》 桃亜《ももあ》が、「デブ活がしたい」と言ってきた。 桃亜は学生の身でありながら、アプリ制作会社で就職前提のバイトをしている。 だが、連日の学業と激務によって、常に腹を減らしていた。 料理の腕を磨くため、いすゞは桃亜に協力をする。

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

ハルといた夏

イトマドウ
青春
小学6年生の奈月(なつき)が、小学生最後の夏休みに父の実家へ遊びに行くことに。 そこで出会った高校1年性の従姉、小晴(こはる)と虫取りや夏まつりに行くことで 少しだけ大人になる物語。

リリーの幸せ

トモ
恋愛
リリーは小さい頃から、両親に可愛がられず、姉の影のように暮らしていた。近所に住んでいた、ダンだけが自分を大切にしてくれる存在だった。 リリーが7歳の時、ダンは引越してしまう。 大泣きしたリリーに、ダンは大人になったら迎えに来るよ。そう言って別れた。 それから10年が経ち、リリーは相変わらず姉の引き立て役のような存在のまま。 戻ってきたダンは… リリーは幸せになれるのか

消えていく君のカケラと、進まない僕の時間

月ヶ瀬 杏
青春
青山陽咲、藤川大晴、矢野蒼月は、幼稚園の頃からの幼馴染。小学校までは仲の良かった三人だが、十歳のときに起きたある出来事をキッカケに、陽咲と蒼月の仲は疎遠になった。 高二の夏休み、突然、陽咲と蒼月のことを呼び出した大晴が、 「夏休みに、なんか思い出残さない?」 と誘いかけてくる。 「記憶はいつか曖昧になるから、記録を残したいんだ」 という大晴の言葉で、陽咲たちは映画撮影を始める。小学生のときから疎遠になっていた蒼月と話すきっかけができた陽咲は嬉しく思うが、蒼月の態度は会う度に少し違う。 大晴も、陽咲に何か隠し事をしているようで……。 幼なじみの三角関係ラブストーリー。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら
現代文学
恵まれた能力と資質をフル活用し、望まれた在り方を、望むように実現してきた彼女。 長子としての在り方を求められれば、理想の姉として振る舞った。 客観的な評価は充分。 しかし彼女自身がまだ満足していなかった。 周囲の望み以上に、妹を守りたいと望む彼女。彼女にとって、理想の姉とはそういう者であった。 理想の姉が守るべき妹が、ある日スルドと出会う。 姉として、見過ごすことなどできようもなかった。 ※当作品は単体でも成立するように書いていますが、スルドの声(交響) primeira desejo の裏としての性質を持っています。 各話のタイトルに(LINK:primeira desejo〇〇)とあるものは、スルドの声(交響) primeira desejoの○○話とリンクしています。 表紙はaiで作成しています

処理中です...