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hage.12
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「ビール、ジョッキで、あわせて10」
「オムレツ、2つ追加」
「豆腐サラダ、上がり~」
今日は料理を運ぶだけだったけど、結構な忙しさで、急ぐとひっくり返しそうになるし、テーブルを間違えたりして、バイト仲間の樋口くんと竹田くんがフォローしてくれた。
2人とも週末だけシフトに入っている高校生で、爽やかイケメンでチナツの目がキラキラしていた。
リツキは妙に仕事が早く、スマートな身のこなしとエセ笑顔で客のお姉さんたちに話しかけられたりしていた。
オレにあんなモン付けといて、何ヘラヘラしてやがる。
胸くそわりー。
と思ってたら、前から来た客にぶつかり、白ワインをぶちまけた。
「す、すみませんっ」
「大丈夫ですか。かかりませんでしたか?」
オレが焦って謝っていると、どこから見てたのかリツキが来て、一緒に片して謝ってくれた。
「うん。大丈夫。新しいバイトちゃん?頑張ってね」
客のお兄さんは優しい人だったようで、オレのちょんまげをなでると、にこやかにトイレに去って行った。
「…ハゲ」
空のグラスを拾ったリツキがおもむろに禁断の一言を口にする。
「なっ、…!」
てめーっ、ハゲを笑うヤツはハゲに泣くんだぞっ
悔しくてギリギリするオレを一瞥して、リツキは軽くちょんまげを引っ張ると、さっさと離れていった。
ちくしょー。
2時間くらいで混雑も緩和され、来週からの正式採用が決まって、バイト体験が終わった。
「疲れたね~」
と言いながらも、イケメン率が高くてチナツは嬉しそうだ。
更衣室を出ると、リツキが待っていて、
「行くぞ」
またしてもオレの手をがっちり捕まえてきやがった。
「ああ?オレは、チナツと…っ」
言いかけてチナツを見ると爽やかに手を振り、
「アイ~、月曜に感想聞かせてね~」
…何のだよ。
リツキが家とは反対方向の電車に乗る。
「どこ行くつもりだよ?」
オレが吠えても、
「おもちゃは黙ってついてこい」
傲慢なリツキはオレの貴重な休みを奪おうとしてくる。
クソ、バイト代が入ったら速攻、育毛剤を買ってやる。
シャンプーも育毛成分で選んでやる。
っつか、まずはワカメを買うべきか…
「起きろ、ハゲ」
人生の難問に挑んでいたら、いつの間にか寝てしまったらしく、隣の座席に座るリツキがオレのちょんまげを引っ張る。
「てめー、軽々しく引っ張んなよっ! 広がったらどうしてくれんだ!」
「…よだれ拭け」
オレの抗議を軽くスルーして、リツキがハンカチを押し当ててきた。
ふん。
寄りかかってたっぽい、リツキの服にもよだれを垂らした跡があるから、まあ許してやる。
電車を降りると、海が見えた。
「オムレツ、2つ追加」
「豆腐サラダ、上がり~」
今日は料理を運ぶだけだったけど、結構な忙しさで、急ぐとひっくり返しそうになるし、テーブルを間違えたりして、バイト仲間の樋口くんと竹田くんがフォローしてくれた。
2人とも週末だけシフトに入っている高校生で、爽やかイケメンでチナツの目がキラキラしていた。
リツキは妙に仕事が早く、スマートな身のこなしとエセ笑顔で客のお姉さんたちに話しかけられたりしていた。
オレにあんなモン付けといて、何ヘラヘラしてやがる。
胸くそわりー。
と思ってたら、前から来た客にぶつかり、白ワインをぶちまけた。
「す、すみませんっ」
「大丈夫ですか。かかりませんでしたか?」
オレが焦って謝っていると、どこから見てたのかリツキが来て、一緒に片して謝ってくれた。
「うん。大丈夫。新しいバイトちゃん?頑張ってね」
客のお兄さんは優しい人だったようで、オレのちょんまげをなでると、にこやかにトイレに去って行った。
「…ハゲ」
空のグラスを拾ったリツキがおもむろに禁断の一言を口にする。
「なっ、…!」
てめーっ、ハゲを笑うヤツはハゲに泣くんだぞっ
悔しくてギリギリするオレを一瞥して、リツキは軽くちょんまげを引っ張ると、さっさと離れていった。
ちくしょー。
2時間くらいで混雑も緩和され、来週からの正式採用が決まって、バイト体験が終わった。
「疲れたね~」
と言いながらも、イケメン率が高くてチナツは嬉しそうだ。
更衣室を出ると、リツキが待っていて、
「行くぞ」
またしてもオレの手をがっちり捕まえてきやがった。
「ああ?オレは、チナツと…っ」
言いかけてチナツを見ると爽やかに手を振り、
「アイ~、月曜に感想聞かせてね~」
…何のだよ。
リツキが家とは反対方向の電車に乗る。
「どこ行くつもりだよ?」
オレが吠えても、
「おもちゃは黙ってついてこい」
傲慢なリツキはオレの貴重な休みを奪おうとしてくる。
クソ、バイト代が入ったら速攻、育毛剤を買ってやる。
シャンプーも育毛成分で選んでやる。
っつか、まずはワカメを買うべきか…
「起きろ、ハゲ」
人生の難問に挑んでいたら、いつの間にか寝てしまったらしく、隣の座席に座るリツキがオレのちょんまげを引っ張る。
「てめー、軽々しく引っ張んなよっ! 広がったらどうしてくれんだ!」
「…よだれ拭け」
オレの抗議を軽くスルーして、リツキがハンカチを押し当ててきた。
ふん。
寄りかかってたっぽい、リツキの服にもよだれを垂らした跡があるから、まあ許してやる。
電車を降りると、海が見えた。
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