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hage.07
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「ハナお姉さま、お金貸してください」
殊勝に頼み込むオレに、
「ああ~ん?」
ハナクソの態度は最悪だ。
「馬鹿じゃないの、アンタ。あたしがお金持ってるわけないじゃん」
ハナクソは大学生になってから、ますますシャレっ気づいて、3倍ボリュームマスカラとやらを目に塗りたくって、パンダみたいになっている。
ハナが買ってくる服やらバックやら靴やらで、オレたちの部屋はえらいことになっている。
確かにな、ハナクソに頼んだオレがバカだった…
すごすご引き下がろうとすると、
「何よ、アイ。育毛剤でも買うわけ?」
ハナクソのくせに、オレの心を読んでくる。
ネット検索した結果、育毛剤は安いのから高いのまでいっぱいあるけど、オレが狙っている即効性のありそうなやつは、わりかし高く、オレは今、金が全然ない。
「そんな焦っても変わんないと思うけど…」
うるせー。
「じゃあ、バイトする?友だちがバイトしてる居酒屋、高校生バイト募集してるって言ってたよ」
なるほど。
「はぁ?バイト?」
朝っぱらから手をつないで登校するという羞恥プレイを繰り広げるリツキが、今週末空けておけとか言ってくるから、速攻断ってやった。
「オレはサッカーバカのリツと違って、社会勉強に勤しむんだよ」
なんかオレ、かっこよくね?
「お前にバイトなんかできるのかよ」
あからさまにリツキの機嫌が悪い。
「たりめーだろ。居酒屋なんてちょろいちょろい」
「居酒屋…」
オレの偉さに恐れをなしたのか、リツキが黙り込む。
わりーな、リツ。
オレはお前とは人間としての格が違うのだよ。
「…、俺も行く」
「はあ???」
ぎょっとして隣を見ても、リツキはしれっと涼しい顔で。
「頭沸いたか、リツ? 拾い食いでもしたか?」
オレの人間性をうらやんでも遅いぞ?
「…うるさい口だな。ふさぐぞ」
リツキはチラリとオレに目を向け、つないだ手はそのままに、もう一方の手をオレの髪に差し入れる。
「!」
オレは学習した。この体勢はやばい。
急いで自分の口を押さえ、
「寄るな、エロリツ!オレはもう、お前とはキスしないからな!」
しっかりはっきり言ってやった!
「あ?」
リツキが真顔でオレを睨み下ろす。
にに、ニラまれたってゆずれねー。
精一杯睨み返したつもりが、背中が塀に突き当たる。
あれ、オレ、後退した?
「お前の都合なんて、…」
リツキが詰め寄る。
「聞いてねーよ」
リツキはオレを引き寄せ、簡単にオレの手を払いのけて唇に触れる。
噛み付くようなそれに、リツキの怒りが見えるけど、…
…胸が痛い。
こんな往来で、こんな簡単に、…ただのゲームみたいに。
殊勝に頼み込むオレに、
「ああ~ん?」
ハナクソの態度は最悪だ。
「馬鹿じゃないの、アンタ。あたしがお金持ってるわけないじゃん」
ハナクソは大学生になってから、ますますシャレっ気づいて、3倍ボリュームマスカラとやらを目に塗りたくって、パンダみたいになっている。
ハナが買ってくる服やらバックやら靴やらで、オレたちの部屋はえらいことになっている。
確かにな、ハナクソに頼んだオレがバカだった…
すごすご引き下がろうとすると、
「何よ、アイ。育毛剤でも買うわけ?」
ハナクソのくせに、オレの心を読んでくる。
ネット検索した結果、育毛剤は安いのから高いのまでいっぱいあるけど、オレが狙っている即効性のありそうなやつは、わりかし高く、オレは今、金が全然ない。
「そんな焦っても変わんないと思うけど…」
うるせー。
「じゃあ、バイトする?友だちがバイトしてる居酒屋、高校生バイト募集してるって言ってたよ」
なるほど。
「はぁ?バイト?」
朝っぱらから手をつないで登校するという羞恥プレイを繰り広げるリツキが、今週末空けておけとか言ってくるから、速攻断ってやった。
「オレはサッカーバカのリツと違って、社会勉強に勤しむんだよ」
なんかオレ、かっこよくね?
「お前にバイトなんかできるのかよ」
あからさまにリツキの機嫌が悪い。
「たりめーだろ。居酒屋なんてちょろいちょろい」
「居酒屋…」
オレの偉さに恐れをなしたのか、リツキが黙り込む。
わりーな、リツ。
オレはお前とは人間としての格が違うのだよ。
「…、俺も行く」
「はあ???」
ぎょっとして隣を見ても、リツキはしれっと涼しい顔で。
「頭沸いたか、リツ? 拾い食いでもしたか?」
オレの人間性をうらやんでも遅いぞ?
「…うるさい口だな。ふさぐぞ」
リツキはチラリとオレに目を向け、つないだ手はそのままに、もう一方の手をオレの髪に差し入れる。
「!」
オレは学習した。この体勢はやばい。
急いで自分の口を押さえ、
「寄るな、エロリツ!オレはもう、お前とはキスしないからな!」
しっかりはっきり言ってやった!
「あ?」
リツキが真顔でオレを睨み下ろす。
にに、ニラまれたってゆずれねー。
精一杯睨み返したつもりが、背中が塀に突き当たる。
あれ、オレ、後退した?
「お前の都合なんて、…」
リツキが詰め寄る。
「聞いてねーよ」
リツキはオレを引き寄せ、簡単にオレの手を払いのけて唇に触れる。
噛み付くようなそれに、リツキの怒りが見えるけど、…
…胸が痛い。
こんな往来で、こんな簡単に、…ただのゲームみたいに。
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