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hage.06

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「アイったら、素直になりなよ。あたしは勝手に帰るから~」

事情を知らないチナツがニマニマしながら手を振る。

「悪いね、チナツちゃん。また明日」

リツキはオレを胸に抱え込んだまま、優等生スマイルを浮かべた。

チナツーっ
赤くなってんじゃねーよ!

リツキがオレの手を拘束して歩き出す。

オレの指の間にリツキの指が絡められていて、落ち着かない。
こいつ、手もデカいな。

下校中の生徒も、街行く人も、みんながオレたちを見ている気がしてそわそわする。
何度も手を離そうとするのに、リツキががっちり捕まえていて離さない。

「…一緒に帰るからさ、手、離せよ」

耐えきれなくなって、頼んでみると、

「離すか、バーカ」

悪魔、健在。

電車の中でも、団地に着いてからも、オレたちの手はしっかり絡み合っていた。

…なんなんだよ、この羞恥プレイっ

「お前、おもちゃのくせに、生意気」

オレとリツキの家の前にある共有通路で、やっと手を離してくれたかと思えば、いつの間にか壁とリツキに挟み込まれていた。

このシチュエーション、すげー嫌な予感がする。

冷や汗しかでないオレに、

「舌」

偉そうに意味不明なことを言い出すリツキ。

「した?」

訳がわからず、舌を突き出して考えていると

「んふぅ」

あっという間にリツキが舌を絡めて奪うように口づけてきた。
髪に手を差し込まれ、腰を抱かれて、ほんの少しも動けない。

リツキの舌がオレの上あごや舌先をくすぐるように動き回ると、
ゾクゾクするような快感が背筋を這い上がってきて、焦る。

身体の芯が熱くなって、頭がぼうっとして、
知らないうちにリツキにしがみついている自分に、焦る。

こいつ。
キス、うまいのかも。
ってか、
みんなにこんなキスしてるのか…

そう思ったら、何でか、急に心臓が締め付けられるような痛みを感じた。

オレは本格的に具合が悪いのかもしれない。
免疫異常でハゲるくらいだから、そうに違いない。

じゃなきゃ、なんで苦しいかわからない。
なんで、やっとリツキのキスから解放されたのに、
名残惜しいような気がするのかわからない。

「じゃあな、アイ。明日の朝、迎えに来るから。逃げるなよ」

捨て台詞を残して、リツキが三戸どなりの部屋に入っていった。

育毛剤を買おう。
絶対に買おう。

一刻も早く髪を生やして、悪魔のリツキから逃げ出さなきゃ。

じゃなきゃ。
心臓、止まる…よ。
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