112 / 114
13章.銀の龍 瑠璃色の姫君を愛でる
10.
しおりを挟む
「…で。何でお前が沈んでんだ?」
すっかり夜も更けてから、王城の居室にジョシュアが戻ってきた。
一日中王都の様子を見て、獣人国民の声を広く聞いてきたらしい。
「疲労回復か。ぴったりだな」
と、俺が淹れたハイビスカスとローズヒップのビタミンブレンドティを味わってくれてから、徐に俺を膝に抱えて後ろから頬を摘まむ。背中に感じるジョシュアの熱が、心に温かい。
「ネメシスになんか言われた?」
後ろからのぞき込まれて慌てて首を横に振った。
「…や。恋って、難しいと思って」
今更だけど。
俺はジョシュアしか知らないし。恋なのか愛なのか分からないし。他の人がどうなのかも分からないけど。でも。
甘くて苦くてしょっぱくて、…切ない。
相手の幸せを願うことが愛なのだとネメシスさんは言った。
ネメシスさんは、幼いころからずっと一途にジョシュアを想っていたのに報われなくて、死にたくなって、一連の事件に加担した。吹っ切れたようだったけど、やっぱり寂しそうでもあった。
俺だって死ぬほどジョシュアが好きだから、こればっかりは譲れないけど、切ない。どうしようもないけど、切ない。
「…まあ。シューノが何とかするんじゃないか」
…え。
俺の胸中を察したらしいジョシュアが、俺の頬を引っ張りながら放った一言に、勢いよく振り向くと、ジョシュアの瞳が優しく緩んだ。
ネメシスさんの死森行きには、蛇獣人だったシューノ(今はハヤブサ獣人のハヤテに宿っている)が同行したらしい。
「…そっか。そっかぁ」
何だか頬が緩む。
ちょっと突っ走り気味のシューノときりっと美しいネメシスさんは、意外とお似合いなのかもしれない。微妙な立場のハヤテは、…どうなんだろう。でもまあ、一緒に行ったってことは、一応納得しているんだろう。
「…シューノの尻尾攻めは癖になるって言うしな。お前も満更じゃなさそうだったもんな」
何となく胸を撫で下ろしていたら、ジョシュアがちょっと意地悪な声音で、俺の耳を舐めた。
「…な⁉」「は?」
俺とジョシュアの声がかぶる。
「「満更じゃないって何だよ⁉」」
焦ってる俺を見て、ジョシュアがニヤニヤする。
いや、これは絶対エイトリアンだ。耳舐めたあたりからエイトリアンだ。
シューノの尻尾攻めってマリンブルーの宮殿でのことだよな。あの時のこと、覚えてるのか。
スケスケで振り回された記憶がよみがえり、恥辱で顔が赤くなる。
「…お前。やりたい放題しやがって」
「そう羨ましがるな。今から再現してやるから」
ジョシュアとエイトリアンが何やら言い合ってから、唐突に俺を担ぎ上げて浴室に向かった。
「すげえな、ハーブバス」
「お前は見るなよ」
「見るのはお前だろ」
「ラズに触るなよ」
「触るのも、お前」
や、なんか。
ジョシュアが一人で喧々囂々しながらも、慣れた手つきで俺の服を脱がせてくるんだけど。別にジョシュアと風呂入んのは初めてじゃないし、ジョシュアになら何されてもやぶさかではないんだけど、…でもこれは。
どうにも落ち着かないんですけど⁉
「…お前。見られながらスんの好きだもんな」
エイトリアンがチラチラし過ぎるんですけど⁉
「…やっぱ湖に置いてくるんだったな」
「そんなこと言って。寂しいくせに」
クソ、エイト。俺の完璧に麗しいジョシュアのキャラを壊すなよっ
すっかり夜も更けてから、王城の居室にジョシュアが戻ってきた。
一日中王都の様子を見て、獣人国民の声を広く聞いてきたらしい。
「疲労回復か。ぴったりだな」
と、俺が淹れたハイビスカスとローズヒップのビタミンブレンドティを味わってくれてから、徐に俺を膝に抱えて後ろから頬を摘まむ。背中に感じるジョシュアの熱が、心に温かい。
「ネメシスになんか言われた?」
後ろからのぞき込まれて慌てて首を横に振った。
「…や。恋って、難しいと思って」
今更だけど。
俺はジョシュアしか知らないし。恋なのか愛なのか分からないし。他の人がどうなのかも分からないけど。でも。
甘くて苦くてしょっぱくて、…切ない。
相手の幸せを願うことが愛なのだとネメシスさんは言った。
ネメシスさんは、幼いころからずっと一途にジョシュアを想っていたのに報われなくて、死にたくなって、一連の事件に加担した。吹っ切れたようだったけど、やっぱり寂しそうでもあった。
俺だって死ぬほどジョシュアが好きだから、こればっかりは譲れないけど、切ない。どうしようもないけど、切ない。
「…まあ。シューノが何とかするんじゃないか」
…え。
俺の胸中を察したらしいジョシュアが、俺の頬を引っ張りながら放った一言に、勢いよく振り向くと、ジョシュアの瞳が優しく緩んだ。
ネメシスさんの死森行きには、蛇獣人だったシューノ(今はハヤブサ獣人のハヤテに宿っている)が同行したらしい。
「…そっか。そっかぁ」
何だか頬が緩む。
ちょっと突っ走り気味のシューノときりっと美しいネメシスさんは、意外とお似合いなのかもしれない。微妙な立場のハヤテは、…どうなんだろう。でもまあ、一緒に行ったってことは、一応納得しているんだろう。
「…シューノの尻尾攻めは癖になるって言うしな。お前も満更じゃなさそうだったもんな」
何となく胸を撫で下ろしていたら、ジョシュアがちょっと意地悪な声音で、俺の耳を舐めた。
「…な⁉」「は?」
俺とジョシュアの声がかぶる。
「「満更じゃないって何だよ⁉」」
焦ってる俺を見て、ジョシュアがニヤニヤする。
いや、これは絶対エイトリアンだ。耳舐めたあたりからエイトリアンだ。
シューノの尻尾攻めってマリンブルーの宮殿でのことだよな。あの時のこと、覚えてるのか。
スケスケで振り回された記憶がよみがえり、恥辱で顔が赤くなる。
「…お前。やりたい放題しやがって」
「そう羨ましがるな。今から再現してやるから」
ジョシュアとエイトリアンが何やら言い合ってから、唐突に俺を担ぎ上げて浴室に向かった。
「すげえな、ハーブバス」
「お前は見るなよ」
「見るのはお前だろ」
「ラズに触るなよ」
「触るのも、お前」
や、なんか。
ジョシュアが一人で喧々囂々しながらも、慣れた手つきで俺の服を脱がせてくるんだけど。別にジョシュアと風呂入んのは初めてじゃないし、ジョシュアになら何されてもやぶさかではないんだけど、…でもこれは。
どうにも落ち着かないんですけど⁉
「…お前。見られながらスんの好きだもんな」
エイトリアンがチラチラし過ぎるんですけど⁉
「…やっぱ湖に置いてくるんだったな」
「そんなこと言って。寂しいくせに」
クソ、エイト。俺の完璧に麗しいジョシュアのキャラを壊すなよっ
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
家族と移住した先で隠しキャラ拾いました
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」
ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。
「「「やっぱりかー」」」
すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。
日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。
しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。
ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。
前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。
「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」
前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。
そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。
まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる