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13章.銀の龍 瑠璃色の姫君を愛でる

08.

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獣人国の王都に戻るとすぐに、トーニ爺さんがイキナセナバナの成分を煎じてネメシス女史に服用させた。

「…ジョシュ」

王城の病室でずっと伏せったままだったネメシスさんは、イキナセナバナの効果でほどなくして目を覚まし、ジョシュアの姿を認めると、そのまま泣き崩れた。

「…ネミィ。わしらがジョシュア様を裏切った事実は変えられぬ」

その傍らで、トーニ爺さんが静かに諭すように語りかけた。

「しかし、ジョシュア様は償う猶予を下された。自らを失くすよりも与えよと仰せになられた。わしはこれからもジョシュア様に尽くす。お前もよく考えるが良い」

トーニ爺さんの告白に、その場に居合わせたカメ獣人の医師とウサギ獣人の看護師は絶句した。

人間からの、中でも俺からの、獣人社会に対する宣戦布告と思われた毒茶事件は、実はトーニ爺さんによって仕組まれたもので、被害者となったネメシスさんは毒と承知の上で自殺志願した。しかもその背景には、シデラン戦争を終わらせた4代前のジェームズ王の人間に対する深い怨念があった。

という一連の事件の真相は、瞬く間に王都全土に広がり、獣人国民たちは驚愕と混乱に陥った。ジョシュアは、そんな国民たちに、現在はジェームズ王の怨念が晴れ死森の毒素がなくなっていること、それを融和への一歩にしたいことを語りかけ、改めて獣人国王として人間の花嫁を娶り、死界と人界の融合を目指すことを掲げた。

獣人国民たちは、正直半信半疑といったところで、俺に向けられる視線にはまだ冷ややかなものも多い。

まあ実際、

「全く。けもの国って繊細さに欠けるわよね。このワタクシに対する配慮がなってないわ。労働をここまでさせたんだから、それ相応のもてなしもして欲しいものだわ。ワタクシは花嫁の妹、ひいては国王の義妹。正真正銘のプリンセスよ」

「…ってことは、僕もあの麗しい王様の義弟、…イイっ」
「そして、私は死界との仲を取り持った人界ナンバーワンの宰相。ふむ、悪くない」

獣人国民にとっては人間代表ともいえる、アレクサンドロニカ王国のソフィア嬢、マシュマクベスト皇太子、ゲゲック宰相は、相変わらず自己愛に溢れているので、人間に対する評価がそうそう上がらないのも頷ける。

でも。

「姫さま。離れている間、寂しかったですわ」
「姫さまの潔白が証明されて嬉しいですわ」
「今後ともジョシュア様とラブラブに過ごしていただきたいものですわ~~~」

ワニ獣人のタミル3人娘は俺を取り囲んで、変わらない乙女パワーを振りまいてくれ、

「俺の立ち位置はジョシュア様の右隣だ」
「いいや、俺はエイト様の左に控えていた」

側近獣人と同化したハヤブサ獣人たちは、立ち位置に戸惑いながらも勤めに励んでくれているので、幸先は良さそうな気がする。
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