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13章.銀の龍 瑠璃色の姫君を愛でる

04.

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ジョシュアの膝から降りて、湖の畔に佇む。

冴えわたる水面。さざめく草の根。香り立つ新緑。
畔にしゃがみ込んで水面を覗くと、黄金の輝きの向こうにエイトリアンの姿が見えるような気がした。

「…選ばれし龍 瑠璃色の宝玉を抱きて天命を尽くす
  魂の契り 失われし星に蘇りの道しるべを与えん、…」

トーニ爺さんが傍らにひれ伏して涙混じりに繰り返し唱えている。
ジョシュアに聞くと、デドフロンティアに古くから伝わる伝承だという。

やるべきことは見えた。

ジョシュアが選ばれし龍だとしたら、使命は人界と死界の融合だろう。
俺に出来るのは、ジョシュアと一緒に、共生にかけること。俺の一歩は。例えば変わらずに、日々お茶を淹れて癒しを感じてもらうこととかは、ほんの小さな一歩だけど、再生と融合に繋がる一歩だと信じてる。

今はまだその途中で、上手くいかないことが多くて、でも、きっとたどり着けると信じてる。終わりだと思わない限り、希望は続いていく。…そうだよな、エイトリアン。

「…見ててくれよな」

湖に手をつけると、ひんやりと澄んだ黄金に包まれた。エイトリアンの優しい温もりを思い出して、また胸が軋む。

「…エイトは火炎龍なのに、水の中に居て、居心地悪くないのかな」

ふと浮かんだ疑問をそのまま口にすると、

「問題ない。俺はそこにはいないから」

背後から何だか偉そうな声が聞こえて背筋が震えた。

「エイトリアン⁉」

弾かれたように振り向くと、口の端を少しもたげて尊大な笑みを浮かべたジョシュアが、

「…よお、ラズリ」

エイトリアンそのものの口調で俺を見ていた。

え。え。なに⁉ ジョシュア⁉ エイト⁉

元々彼らは双子だから、見た目はそっくりで、唯一違うのは髪の色くらいなんだけど、…混乱を極めて理解が追い付かない。目の前に立っているジョシュアが、ジョシュアなのかエイトリアンなのか分からない。

「…来いよ」

両手を広げたジョシュアに、魅入られたようにふらふら近づいた。この誘いを拒める奴がいるなら見てみたい。宇宙規模でも滅多にお目にかかれない、種族を超えたイケメン男子が俺を呼んでいる。ジョシュアでも。エイトリアンでも。

「エ、…イト?」

ジョシュアの腕に収まったら、懐かしさが込み上げた。さっきまで抱かれていたのと同じ腕だけど、なんだかもっと、郷愁の匂いを増したような、…

「…ラズリ。お前のために、髪も銀色にしてやるって、言っただろ」

ジョシュアが得意げな笑みを浮かべて俺を見つめ、ちゅ、っと軽く口づけた。

「え、…本当にエイトリアンなのか⁇」

為されるがまま、呆けたようにジョシュアを見つめた。見た目は何にも変わらない。だけど。

え。ジョシュアが、…エイトリアンになってる⁉
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