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13章.銀の龍 瑠璃色の姫君を愛でる

02.

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「人間は破壊しかもたらさぬと、わしも思うておりました。死森の毒は人間が持ち込んだもの。人間は自分の行いで自分の首を絞めておる。それを、ジョシュア様は赦されると仰る。でも、人間にそんな価値があるのかと疑問に思うておりました。きっとまた、裏切られ搾取されるのではないかと、…」

トーニ爺さんの小さな目から零れ落ちた涙が、白い髭を伝って芽吹いたばかりの草にぽろりと落ちて飛び散った。

「わしは長い間薬草を研究するうちに、かつて人間が生成したシデランソウを蘇らせる方法を習得しました。そこで、姫さまがデドフロンティアに現れた日に、それを持って、ジェームズ王にお力をお借りしに行きました。人間を憎み嫌い二度と復活を許さないと誓っておられるジェームズ王に、人間を諫めて排除してもらおうと思うたのですじゃ、…」

ジョシュアは、何も言わなかった。トーニ爺さんの懺悔を、ただ静かに聞いていた。

草地に風が渡ってさやさやと音を立てる。
あの空虚なイキナ国の跡地とは想像もできないほど、明るく穏やかで豊かな緑が広がっている。美しい黄金の湖が満ちている。

「ジェームズ王は、エビルという、香りを操る使い魔を遣わしてくれました」

あ、…
それはかなり身に覚えがある。

リスザルのような形をした暗い影の集合体。「キューイ」という動物のような鳴き声。お香のような強い匂い。見えない糸でがんじがらめに縛られているような息苦しさ。全身が全く動かせなくなる恐怖。

あれはジェームズ王の使い魔だったのか。

「最初は姫さまをもといた人界のアレクサンドロニカ国に帰すつもりでした。ネメシスらの協力も得て、上手くいきかけましたが、姫さまが死森でエイトリアン様に連れ去られ、…まさか、エイトリアン様が姫さまを連れてデドフロンティアにお戻りになるとは思うておりませなんだ、…」

それは、…だって。
ジョシュアが結婚するとか言うからさ。

ジョシュアを見上げると、ついっと目を逸らされた。気まずいらしい。

「それでも、人間は欲に駆られて武器を用いました。ジョシュア様を攻撃した人間をもはや許せるはずもなく、反乱ののろしを上げる機運が高まりましたが、お戻りになったジョシュア様は、人間を断罪するのでなく、協同を提唱された。正直、…理解できませなんだ。ラピスラズリの力はかくも大きいのかと、ジョシュア様は伝説に魅入られてしまったのだと、恐れ慄きました」

トーニ爺さんは堪りかねたようにがっくりと大地に膝を埋め、地面にひれ伏した。

「わしは自ら姫さまに接近し、デドフロンティア全土の反感を買うよう、一連の事件を仕組みました。わしはわしの正義を貫いているつもりでしたのじゃ、…」

時々感じた、ほの暗い憎悪の感情は、トーニ爺さんのものだったんだ、…
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