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10章.犯人の濡れ衣を着せられる
03.
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俺のバカ、…
悔しいくらいの快感に溺れて、気力も体力も限界を超えた。もう1ミリも動けない。のに、ジョシュアに抱き上げられた身体がわずかに触れ合うだけで、まだ、快感の余韻に震えてしまう。
「陛下? いかがなされました⁉」
「ラズ姫さまに何かございましたか?」
「…ん、ああ、いや。大丈夫。ちょっと、疲れたみたいだな」
夜も更け、灯りもまばらになった王宮内。静寂が満ちて、ここで働く獣人たちの多くも寝静まった頃。とはいえ、夜を徹して警備に励んだり、職務に勤しんだりしている者たちもそれなりにいて、俺を抱いて歩く獣人王の姿に気づくと、何事かと驚きを露わに飛んでくる。
こんな夜中に王さまが出歩いてたら、…まあ。やっぱり。目立つ。
「ジョシュア様っ⁉」
「ラズ姫さま、お加減が悪いのですか?」
「明日の挙式に障りはございませんか?」
あちらこちらから受ける善意の問いがいたたまれない。
温室に引き籠っておいて今更なんだけど、無駄に心配をかけるのは申し訳ない。
俺はすっかり元気です。エロ獣人王のせいで動けないだけです、…。
ジョシュアの腕の中で身を縮こませる。
「…大丈夫だ、心配ない。順調だよ」
ジョシュアの穏やかな声に、みんな安心して持ち場に戻るのだか、本当に申し訳なくて身がすくむ。あああ、俺の破廉恥野郎。もう、本当にダメダメだな。
俺が身じろぎするのを感じたのか、
「…もうちょっと待ってろ」
低く艶のある声に耳元で囁かれた。
…違うっ‼︎ 俺は決してまだ足りないとか、そんなことは、…っ
抗議しようと開いた口に、触れるだけの柔らかいキスが落ちてきて、理性とは裏腹に、身体の奥がきゅうきゅう鳴いて期待に俺を締め付ける。俺、いつからこんな破廉恥極まりないやつになった? 完全にジョシュアの手の内で転がされてるだろ。
いつ誰が入って来るかもわからない場所で、声を殺して背徳の限りを尽くしてしまった。見られると快感が増す、とかエイトリアンが言ってたけど、恐ろしいことに身を持って体験してしまった、かもしれない。見られるかもというスリルと緊張にこの上なく感度が高められて、死ぬほど気持ち良かったという、…
『待て、って、言ったのに』
でも死ぬほど恥ずかしくて、結局散々泣かされた俺が恨みがましく言い募ると、ジョシュアはあんまり反省してない顔でしらっとつぶやいた。
『お前が煽るのが悪い』
…煽ってねえよっ、この破廉恥獣人王っ‼ …って、共犯だけど。ジョシュアのバカ。俺のバカ。
「陛下。まだ戻られてなかったのですか」
あ。この声。
凛と通った声の持ち主は、知性溢れる大人の女性の、…
夜の帳が下りた王宮の通路でひたすら反省して、願わくはもうあんまり人に会わずになるべくひっそり居室に戻りたい、とか思っていたのに、
「…ああ。ちょっとな」
一番顔を合わせたくなかった獣人に見咎められた。
ジョシュアの側近獣人の紅一点。美しきネコ獣人のネメシス女史。怖くて目を合わせられない。
悔しいくらいの快感に溺れて、気力も体力も限界を超えた。もう1ミリも動けない。のに、ジョシュアに抱き上げられた身体がわずかに触れ合うだけで、まだ、快感の余韻に震えてしまう。
「陛下? いかがなされました⁉」
「ラズ姫さまに何かございましたか?」
「…ん、ああ、いや。大丈夫。ちょっと、疲れたみたいだな」
夜も更け、灯りもまばらになった王宮内。静寂が満ちて、ここで働く獣人たちの多くも寝静まった頃。とはいえ、夜を徹して警備に励んだり、職務に勤しんだりしている者たちもそれなりにいて、俺を抱いて歩く獣人王の姿に気づくと、何事かと驚きを露わに飛んでくる。
こんな夜中に王さまが出歩いてたら、…まあ。やっぱり。目立つ。
「ジョシュア様っ⁉」
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「明日の挙式に障りはございませんか?」
あちらこちらから受ける善意の問いがいたたまれない。
温室に引き籠っておいて今更なんだけど、無駄に心配をかけるのは申し訳ない。
俺はすっかり元気です。エロ獣人王のせいで動けないだけです、…。
ジョシュアの腕の中で身を縮こませる。
「…大丈夫だ、心配ない。順調だよ」
ジョシュアの穏やかな声に、みんな安心して持ち場に戻るのだか、本当に申し訳なくて身がすくむ。あああ、俺の破廉恥野郎。もう、本当にダメダメだな。
俺が身じろぎするのを感じたのか、
「…もうちょっと待ってろ」
低く艶のある声に耳元で囁かれた。
…違うっ‼︎ 俺は決してまだ足りないとか、そんなことは、…っ
抗議しようと開いた口に、触れるだけの柔らかいキスが落ちてきて、理性とは裏腹に、身体の奥がきゅうきゅう鳴いて期待に俺を締め付ける。俺、いつからこんな破廉恥極まりないやつになった? 完全にジョシュアの手の内で転がされてるだろ。
いつ誰が入って来るかもわからない場所で、声を殺して背徳の限りを尽くしてしまった。見られると快感が増す、とかエイトリアンが言ってたけど、恐ろしいことに身を持って体験してしまった、かもしれない。見られるかもというスリルと緊張にこの上なく感度が高められて、死ぬほど気持ち良かったという、…
『待て、って、言ったのに』
でも死ぬほど恥ずかしくて、結局散々泣かされた俺が恨みがましく言い募ると、ジョシュアはあんまり反省してない顔でしらっとつぶやいた。
『お前が煽るのが悪い』
…煽ってねえよっ、この破廉恥獣人王っ‼ …って、共犯だけど。ジョシュアのバカ。俺のバカ。
「陛下。まだ戻られてなかったのですか」
あ。この声。
凛と通った声の持ち主は、知性溢れる大人の女性の、…
夜の帳が下りた王宮の通路でひたすら反省して、願わくはもうあんまり人に会わずになるべくひっそり居室に戻りたい、とか思っていたのに、
「…ああ。ちょっとな」
一番顔を合わせたくなかった獣人に見咎められた。
ジョシュアの側近獣人の紅一点。美しきネコ獣人のネメシス女史。怖くて目を合わせられない。
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