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9章.甘くて苦いほんのりしょっぱい味を知る
05.
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…、桃っ‼
結婚披露パーティを翌日に控えた朝。
風呂で散々泣かされて、結局またなし崩し的に何もかもジョシュアの手の内に落ちて、限界を超えて繋がったまま快感の海でまどろんで、気が付いたらベッドで目覚めた。
昨夜のジョシュアの言葉が蘇る。
桃みたい、って言ってた、俺のこと。
結婚披露パーティで淹れる俺らしいハーブティを考えていたけど。桃を使ってみようかな。ジョシュアに流され過ぎかな、…
視線を巡らせると、ジョシュアはもういない。
大抵。キスで水を注がれて、俺が潤んだ眠りを漂っている間に出かけていってしまう。肌触りの良いシーツにジョシュアの匂いと温もりがほんのり残っていて、無意識にそれに擦り寄った。
…ジョシュアがいなくて寂しいとか、思ってねえからっ‼
自分で自分に突っ込みを入れながら、戸口の辺りで話し声がするのに気づいた。
俺を爽快に目覚めさせるタミル3人娘の無駄にハイテンションな声とは違う、もっと落ち着いて艶めいた大人声。というか、オンナ声。
なんか気になって、急いでシャツを被るとそろりそろりと様子を見に行った。膝が折れる。つーか、足元がふわふわするっていうか、腰が砕けてるっていうか。自分を支えているものが心もとない。エロ獣人王め。あいつは加減てもんを知らない。俺は毎朝普通に立てるようになるまでに時間がかかる。
微妙なヨチヨチ歩きで戸口に近づくと、通路から話し声が聞こえ、次第に遠ざかっていく感じがしたので、ほんの少しだけドアを開けて隙間からのぞいてみた。クッソ格好いい銀獅子姿のジョシュアと、連れ立って歩く側近獣人たち、一歩下がって付き従う美脚美尻な後ろ姿が目に入った。
…ああ。
別に何がどうしたってわけじゃないけど、その後ろ姿は俺を打ちのめす。
本当は。
俺はあそこに立ちたいと思っているのかもしれない。仕事に勤しむジョシュアを支えられる場所。ジョシュアと並んで歩くことを認められている場所。
どうにもならない胸の痛みを感じながらそれでも目を逸らせずにいると、ふいっと、振り返ったネメシス女史と目が合った。
やべえ。覗いてたのバレた。
小心な俺はすぐさまドアの内側に引っ込んだけれど、近づいてくる気配に動くに動けず微妙な緊張感に包まれる。
「おはようございます、ラズ姫さま」
凛とした声がドア越しに、静かに通り抜ける。ネメシス女史の揺るぎなさに緊張感が増す。落ち着け、俺。覗いてたのはなんだけど、そんな悪いことしてたわけじゃない。…よな。多分。
自分をなだめて気を取り直し、挨拶を返そうとして、
「あ、…はい。おはようござ、…」
「陛下の噛み痕って、至上の恍惚ですよね」
放たれた一言に、曖昧に浮かべた笑みが冷たく貼りついた。得体のしれないひんやりとしたものが胸に込み上げて、心臓だけが狂ったように早鐘を打つ。
それって、つまり、…
「…失礼いたします」
クスッと落とされた笑いは、出来の悪い童貞をゴミカスと思っている嘲笑ではなく、もっと明確な敵意を含んだ冷笑だった。
結婚披露パーティを翌日に控えた朝。
風呂で散々泣かされて、結局またなし崩し的に何もかもジョシュアの手の内に落ちて、限界を超えて繋がったまま快感の海でまどろんで、気が付いたらベッドで目覚めた。
昨夜のジョシュアの言葉が蘇る。
桃みたい、って言ってた、俺のこと。
結婚披露パーティで淹れる俺らしいハーブティを考えていたけど。桃を使ってみようかな。ジョシュアに流され過ぎかな、…
視線を巡らせると、ジョシュアはもういない。
大抵。キスで水を注がれて、俺が潤んだ眠りを漂っている間に出かけていってしまう。肌触りの良いシーツにジョシュアの匂いと温もりがほんのり残っていて、無意識にそれに擦り寄った。
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自分で自分に突っ込みを入れながら、戸口の辺りで話し声がするのに気づいた。
俺を爽快に目覚めさせるタミル3人娘の無駄にハイテンションな声とは違う、もっと落ち着いて艶めいた大人声。というか、オンナ声。
なんか気になって、急いでシャツを被るとそろりそろりと様子を見に行った。膝が折れる。つーか、足元がふわふわするっていうか、腰が砕けてるっていうか。自分を支えているものが心もとない。エロ獣人王め。あいつは加減てもんを知らない。俺は毎朝普通に立てるようになるまでに時間がかかる。
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…ああ。
別に何がどうしたってわけじゃないけど、その後ろ姿は俺を打ちのめす。
本当は。
俺はあそこに立ちたいと思っているのかもしれない。仕事に勤しむジョシュアを支えられる場所。ジョシュアと並んで歩くことを認められている場所。
どうにもならない胸の痛みを感じながらそれでも目を逸らせずにいると、ふいっと、振り返ったネメシス女史と目が合った。
やべえ。覗いてたのバレた。
小心な俺はすぐさまドアの内側に引っ込んだけれど、近づいてくる気配に動くに動けず微妙な緊張感に包まれる。
「おはようございます、ラズ姫さま」
凛とした声がドア越しに、静かに通り抜ける。ネメシス女史の揺るぎなさに緊張感が増す。落ち着け、俺。覗いてたのはなんだけど、そんな悪いことしてたわけじゃない。…よな。多分。
自分をなだめて気を取り直し、挨拶を返そうとして、
「あ、…はい。おはようござ、…」
「陛下の噛み痕って、至上の恍惚ですよね」
放たれた一言に、曖昧に浮かべた笑みが冷たく貼りついた。得体のしれないひんやりとしたものが胸に込み上げて、心臓だけが狂ったように早鐘を打つ。
それって、つまり、…
「…失礼いたします」
クスッと落とされた笑いは、出来の悪い童貞をゴミカスと思っている嘲笑ではなく、もっと明確な敵意を含んだ冷笑だった。
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