【完結】銀の龍瑠璃色の姫君を愛でる―31歳童貞社畜の俺が異世界転生して姫になり、王になった育ての息子に溺愛される??

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8章.獣人王宮でお茶を淹れる

03.

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「さすがにねえわ。それはない‼ 俺があのタラコを忘れられないわけねえだろ」

ついつい口調が荒々しくなってしまうが致し方ない。そんな恐ろしい誤解は早々に解かなければならない。

「まあっ‼」

俺の勢いにルウはつぶらな瞳をパチパチさせて、

「でも、でしたら、どうして抜け出されましたの? 何かご不満でもございました? 生家にご心配事でも?」

怪訝そうに首を傾げた。

「不満なんて何にもないよ。心配事も特にない」

厳密に言えば、あの頃は柊羽のことが心配だったけど、銀龍がジョシュアだと分かった今は本当に何もない。

「そうじゃなくて、…連れ出されたっていうか、ちょっと、無理やり、…」

妖術に操られたことは言った方がいいんだろうか。ネメシス女史の仕業ってはっきり証拠があるわけじゃない。なんて説明したらいいのか、考えながら口にしていると、

「んまあ、許せませんわ、あのタラコの人でなし。あらタラコは人じゃありませんわ。何もされませんでした⁉ わたくし、ちょっと一発ぶちかましてきますわっ‼」

ルウが一転して凶悪な殺人ワニみたいな表情で、すっくと立ちあがったので慌てて止めた。

…つーか、ワニ獣人から見ても奴はタラコなのね。

「待て待て、ルウ。大丈夫だから。無事戻って来れたし、何もされてない」

最終的にはパンツも履かせてもらったしな。

「…そうですの?」

ルウは止められたことに納得いかなそうだったが、ややあって表情を和らげ、

「…でも。ご不満があったのではなくて良かったですわ。ジョシュア様、本当においたわしいほどの憔悴ぶりでしたのよ」

安心したように微笑んだ。
ワニ娘たちをはじめ、獣人国民たちにジョシュアは本当に慕われている。この国にいるとそれをひしひしと感じる。だからこそ、人間の俺をよく思わない奴もいるんだろう。

でも。

『俺にはラズだけだ。今までも。これからも』

ジョシュアはそう宣言してくれた。

「心配かけてごめんな。ジョシュアにもちゃんと伝えとく」

俺もそうだって、言ったっけ。俺だってジョシュアだけだ。
さっき別れたばかりなのに、もう会いたい。ジョシュアが好きだって、何よりも大事だって、ちゃんと伝えたい。

「きっと喜ばれますわ」

ルウがにっこり笑って頷いた。

ジョシュアが慕われているのは、ジョシュアもまた国民を大切に思っているからだ。タミル3人娘も、この国も、ジョシュアが大切にしているものは俺も大切にしたい。

凹んでいる場合じゃなかった。
俺に出来ることを探そう。どんなに微力でも、俺も何か役に立ちたい。

料理が作られていく温かい匂いと立ちこめる湯気、焼ける音、炒める音、弾ける音。調理場の活気に背中を押されながら、何を手伝おうかと、もう一度農場の方を見せてもらうことにした。

広大な農場に戻ってみると、その奥にさらに植物園のような場所が続いていることに気づいた。農産物とはまた違う、多種多様な草が植えられている。ドーム状の温室のような建物も見える。

…薬草園?

独特な香りに惹かれて足を踏み入れた。
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