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8章.獣人王宮でお茶を淹れる
02.
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次は、洗濯。
エイトリアンが放った炎とジョシュアが降らせた雨で、焼けたり焦げたりほつれたり、びしょ濡れになったものが大量にある。広大な洗濯乾燥室もあるけれど、それでは間に合わない量なので、川まで運び出して洗濯に勤しむ。水に濡れた衣類は重いが、獣人たちの力は強い。リレープレイで素洗い・石鹸洗い・すすぎ・絞り・干しを見事にやってのけている。特に赤の種族(魚類)の活躍が華々しい。川の流れを楽しみながら、華麗にジャンプ。まるでショーを見ているように心弾む。
洗い上がった洗濯物はリス獣人たちが身軽に小枝の先に干していく。高い樹木の枝に次々と並べて干された色とりどりの洗濯ものが、気持ちよさそうに風にはためいている。その牧歌的な風景は見ている方の心まで洗われる。降り注ぐ日差しが心地良く、やっぱり獣人たちは歌を口ずさんでいた。
俺は泳げない上に木登りも出来ない。リレーに加わってもリズムを乱してしまう。ため息を堪えて洗濯隊長のミイに聞いてみた。
「あのさ、ルウのとこ見て来てもいいか?」
「もちろんですわ」
最後は、調理。
崩壊してしまった食糧庫の確認と食料品の選別。まだ保管可能なもの、すぐに使った方がいいもの、残念ながら廃棄するもの。廃棄する食材は農場に運んで土壌形成に役立てる。その傍ら、農産物の状態を確認して、収穫可能なものがあれば摘み取っていく。
調理場では、大量の調理器具を洗浄し、乾かし、使えるようにしてから、穀物を製粉し、こね、丸め、焼く。野菜を洗い、皮をむき、切り、お湯を沸かし、茹でる。穀物が焼ける香ばしい匂い、野菜が煮える賑やかな音。自然と顔がほころび、空腹を感じ、味見をしてみたりする。熊獣人たちが所狭しと肩を寄せ合い、顔を見合わせて、ちょっと固いとか、塩味足してとか、ばっちりだとか伝え合い、頷き合う。
その絶妙なチームプレイを見ながら、俺は相当情けない気持ちで、早速火傷した手を水に晒していた。
「万が一にも痕が残ったらジョシュア様にお叱りを受けますわ」
ルウが優しく俺の手当てをしてくれる。
異世界転生しても鈍臭さは変わらない。罵られることはないけれど、俺はここで何が出来るだろう。何の役に立てるだろう。
「ところで姫さま、本当にあの人間の皇太子に未練がおありでしたの?」
ちょっと途方に暮れかけていたら、ルウに予想外の話を振られて絶句した。
「もちろん、人にはそれぞれ好みがありますことは承知しておりますわ。でも、ジョシュア様ほどの方に愛されながら、他の殿方を想うなんて、ちょっと異常、…いえ、特殊、いえ、変態、…いえいえ。あの、ちょっと。やっぱり、人間とは思い込みが激しいものなのかな、と」
もごもごと口籠りながらついには変態の烙印を押された俺は、
そうか。俺は元婚約者のタラコ、もとい、マシュマクベスト皇太子が忘れられずに駆け落ちしたことにされてたんだっけ、
と思い出した。
エイトリアンが放った炎とジョシュアが降らせた雨で、焼けたり焦げたりほつれたり、びしょ濡れになったものが大量にある。広大な洗濯乾燥室もあるけれど、それでは間に合わない量なので、川まで運び出して洗濯に勤しむ。水に濡れた衣類は重いが、獣人たちの力は強い。リレープレイで素洗い・石鹸洗い・すすぎ・絞り・干しを見事にやってのけている。特に赤の種族(魚類)の活躍が華々しい。川の流れを楽しみながら、華麗にジャンプ。まるでショーを見ているように心弾む。
洗い上がった洗濯物はリス獣人たちが身軽に小枝の先に干していく。高い樹木の枝に次々と並べて干された色とりどりの洗濯ものが、気持ちよさそうに風にはためいている。その牧歌的な風景は見ている方の心まで洗われる。降り注ぐ日差しが心地良く、やっぱり獣人たちは歌を口ずさんでいた。
俺は泳げない上に木登りも出来ない。リレーに加わってもリズムを乱してしまう。ため息を堪えて洗濯隊長のミイに聞いてみた。
「あのさ、ルウのとこ見て来てもいいか?」
「もちろんですわ」
最後は、調理。
崩壊してしまった食糧庫の確認と食料品の選別。まだ保管可能なもの、すぐに使った方がいいもの、残念ながら廃棄するもの。廃棄する食材は農場に運んで土壌形成に役立てる。その傍ら、農産物の状態を確認して、収穫可能なものがあれば摘み取っていく。
調理場では、大量の調理器具を洗浄し、乾かし、使えるようにしてから、穀物を製粉し、こね、丸め、焼く。野菜を洗い、皮をむき、切り、お湯を沸かし、茹でる。穀物が焼ける香ばしい匂い、野菜が煮える賑やかな音。自然と顔がほころび、空腹を感じ、味見をしてみたりする。熊獣人たちが所狭しと肩を寄せ合い、顔を見合わせて、ちょっと固いとか、塩味足してとか、ばっちりだとか伝え合い、頷き合う。
その絶妙なチームプレイを見ながら、俺は相当情けない気持ちで、早速火傷した手を水に晒していた。
「万が一にも痕が残ったらジョシュア様にお叱りを受けますわ」
ルウが優しく俺の手当てをしてくれる。
異世界転生しても鈍臭さは変わらない。罵られることはないけれど、俺はここで何が出来るだろう。何の役に立てるだろう。
「ところで姫さま、本当にあの人間の皇太子に未練がおありでしたの?」
ちょっと途方に暮れかけていたら、ルウに予想外の話を振られて絶句した。
「もちろん、人にはそれぞれ好みがありますことは承知しておりますわ。でも、ジョシュア様ほどの方に愛されながら、他の殿方を想うなんて、ちょっと異常、…いえ、特殊、いえ、変態、…いえいえ。あの、ちょっと。やっぱり、人間とは思い込みが激しいものなのかな、と」
もごもごと口籠りながらついには変態の烙印を押された俺は、
そうか。俺は元婚約者のタラコ、もとい、マシュマクベスト皇太子が忘れられずに駆け落ちしたことにされてたんだっけ、
と思い出した。
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