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6章.結婚相手の結婚式に招待される

02.

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夜明け前のあけぼの色の空を、翼の生えた一角獣の背に乗って渡る。

「お前、…こんな綺麗な姿を持ってたんだな」

一角獣の背をそっと撫でると、奴は尊大に鼻で笑った。

エイトリアンが、月の光の中で、美しい金色の角と純白の翼をもつ馬のような精悍で神々しい動物に姿を変えた。たてがみが月の雫を受けて黄金に輝く。

「ジョシュアが銀色の獅子で、エイトリアンは翼を持つ一角獣、…」

獣人王族ともなると、獣の姿もさすがに気高くて神聖なものになるらしい。他の獣人たちは動物と人間が掛け合わさった二足歩行の姿で、それを変えることはないけれど、王族は普段人間のような姿をしていて、必要に応じて動物のような姿に変わるらしい。

「お前は、…」

俺がエイトリアンのもう一つの姿にひたすら感動していたら、奴はふわりとたてがみを立てて、俺の頰をくすぐった。

「無知で可愛いな」

…俺。なんか馬鹿にされた?

ぶす腐れていると一角獣の背中が笑いで小刻みに揺れた。

「俺たちの変容は一つじゃない。いずれ知ることになるだろうが」

エイトリアンは翼を立てて俺が滑り落ちないように支えてくれた。

朝焼けの神秘的な空に純白の翼が映えて、言葉に出来ないくらい美しい。壮大な自然の摂理に畏敬の念を抱く。初めて城砦に連れられて行った時、金龍が鱗を立てて支えてくれたことを思い出した。金龍の背の上も幻想的で、深い感銘を受けた。金龍は、…高いところが苦手な弟がいるって言ってたな。

厳かに柔らかいたてがみに頬をすり寄せると、また、エイトリアンが背中で笑った。エイトリアンは弟のジョシュアに会いに行くことをどう思っているんだろう。

俺たちは、広大な死森を越えて、ジョシュアが統治する獣人国に向かっている。
日の出とともに催されるという、結婚披露パーティーに参列するために。ジョシュアが娶ったという花嫁の姿を見るために。

俺がいなくなったことに気づいただろうか。どう思っているんだろうか。

なんて。
ジョシュアを思い出して胸を騒がせていた自分がバカみたいだ。
奴はとっくに代わりを見つけていた。俺のことなんて、探してもいない。あの切れ長で甘くて深い瞳にはもう違う誰かが映っている。

クソ。
胸が痛い。キリキリする。どうしようもなく焦げて苦しい。怒りのパワーを発散させても全然治らない。

会って、文句言ってやる。
俺を無理矢理、自分のものにしたくせに。ジョシュアのクソ馬鹿野郎。

死森の雄大な樹海の果てに、最初の陽光とともに開けた大地が見えてきた。豊かな自然。美しい街並み。活力溢れる獣人社会。

その中心に、高々とそびえ立つ王城が見える。あの中にジョシュアがいる。

ジョシュアを思うと胸が締め付けられて苦しいのに、どうしようもなく会いたくて疼く。

クソ馬鹿野郎は俺の方だ。
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