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5章.金髪のイケメンに愛される

08.

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エイトリアンの舌先が俺の首筋をくすぐる。
即座に震えて甘く痺れる身体が疎ましい。防御の力が出てこないのも忌まわしい。ジョシュアの痕が薄れていくのも、ひどく心許ない。

「…触んな」

「嫌なら拒め。力をコントロールできるようにしてやってるだろう?」

エイトリアンがクスクス笑って、首筋から顎先に、耳に、こめかみに、舌を這わせる。甘い吐息がかかって、焦らされて焦がれる。エイトリアンの長い指がからかうように俺を辿る。

「やめろ、…」

声が弱弱し過ぎて自分でも分かる。嫌がってない。むしろ、…

イケメンて罪だよな。指先一つで簡単に相手をその気にさせる。要らなくなったら、あっという間に捨てるくせに。

分かっているのに防御出来ない俺は本当に間抜けだ。
俺の力は潜在意識に比例する。願いの強さが正直に現れる。つまり。取り繕えない。最低だ。やめて欲しい。

力をコントロールして、攻撃の力で念を飛ばせるようになったら、銀龍を呼べるとエイトリアンに教えられた。

俺の願いは銀龍と、…柊羽と、平和に平穏に平凡に生きていくことで。まあ、柊羽が望むなら食われてもいいんだけど。それをひたすら願っているはずなのに全然上達しないって、俺は本当はどうしたいんだと、自分で自分が分からなくなる。

俺のアイデンティティはもはやボロクズ同然だ。

「俺と交わればお前はすぐに強くなれるぞ?」

甘く唆されながら、エイトリアンに仰向かされた。
虹色の美しい瞳が間近にのぞき込んでくる。瞳の奥に宇宙が見える。宇宙に浮かぶ地球が見える。

「…嫌だ」

囚われそうなエイトリアンの瞳から目を逸らした。
俺の中の頑なな部分が依然として全力で抵抗しているし、エイトリアンはジョシュアと相対する願望を持っているわけだし、なにより、…承諾するのはエイトリアンをジョシュアの代わりにするようで嫌だった。

「頑固だな、お前は」

エイトリアンの甘美な唇が俺を開かせて、甘い舌に分け入られて、…

「…招待状?」

唐突に引き抜かれたから肩透かしを食らった。
いや別に。待ってたわけじゃないけども。…期待してたわけじゃないけどもっ‼

ジョシュアが俺の上から身を起こして空を仰ぐ。
瞳を閉じて、風の匂いを嗅いでいるようなちょっと風情ある表情をしてから、急に堪え切れないように吹き出した。

なになに、なんだよ。

「…どうしたんだよ?」

エイトリアンに釣られて俺も草地から身を起こす。エイトリアンににじり寄ると、笑いで息を詰まらせながら、面白そうに瞳を煌めかせていた。

「傑作だ。結婚を披露するらしい」

結婚? 披露、…?

全然意味が分からなくて、多分相当なアホ面をかましてしまった俺を、エイトリアンが引き寄せて抱きしめた。

「ジョシュアだよ」

瞬間、心臓が嫌な感じに引き攣れた。

「花嫁を娶ったから、人界にも死界にも広く知らしめたいらしい」

優しく俺の背中を撫でながら告げたエイトリアンの声が死刑宣告のように聞こえる。

「誰を披露するんだよ? ラズリはここにいるってのに」

ジョシュアが、結婚する、…
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