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5章.金髪のイケメンに愛される
05.
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俺が慌てて身を引くと、それにつられたように、俺とエイトリアンの間で申し訳程度の火花が散った。が、エイトリアンは余裕で一笑に付した。
「お前は思いっきりわかりやすいな」
この程度の火花では何の威力もないらしい。
「まあ、落ち着け。無理にはしない」
胡散臭さ全開の笑顔で傍らの酒を口に含むと、俺を引き寄せて唇を合わせ舌でねじ込んだ。
な。
なんか、言ってることとやってることが全然違うっ‼
と思うのに、ろくに抵抗できずにエイトリアンから注がれた酒が喉に落ちる。ジョシュアが注いでくれた水が濁っていくような気がして必死で首を横に振るが、頭の後ろに回された大きな手に押さえ込まれて動けない。
「や、…」
止めろと言いたいのに、差し込まれた舌に翻弄されて呼吸さえままならない。しかも多分、このチャラ男は高テクニックを持っていて、否応なしに快感が込み上げてくる。
くっそ、この美形兄弟は。
31年物の童貞が太刀打ちできるはずもなく、散々弄ばれているうちに力が抜けて自分からエイトリアンにしがみ付いていた。ふわふわする頭は、酒に酔っているせいか何に酔っているせいか、もう訳が分からない。
ただ。俺の中の一途な乙女みたいな部分が頑なに叫んでいる。
ジョシュアがいい。ジョシュアじゃなきゃ嫌だ。
「…うそつき」
ようやく唇を解かれて、精一杯の抗議を込めてエイトリアンを睨み上げると、
「お前、それ、逆効果だぞ」
奴は甘やかに微笑んで、人差し指の背で俺の頬を撫でた。すっかり力の抜けた俺の身体をぴったりと抱き寄せて、
「…ラズリ。見てみろ」
エイトリアンが熱と興奮に沸く広間に目を向ける。緩み切った視界を漂わせると、獣人と猫娘たちが絡まり合い享楽に耽っている姿が映った。獣の結合。熱が弾ける。
顔が熱くなって鼓動が速まる。興奮と欲望が伝播する。
そんな俺の内情を見透かしたみたいに、エイトリアンの長い指が俺の肌を這い上がる。
「…お前も解放したいか?」
甘い毒みたいにエイトリアンの声が俺を蝕み、身体の芯が期待にわななく。しっかりしろ、俺。この光景は童貞には刺激が強すぎる。
「見られると、快感が増すぞ?」
な、なんてこと言うんだ、この破廉恥スケベ‼︎
と罵ってやるつもりが、奴の絶妙な指の動きに変な声が出てしまった。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずか死ぬ。
「や、…だ」
羞恥の極みに意図せず涙が溢れた。首を横に振るとぽろぽろ下に零れ落ちる。エイトリアンはそこでやっと指を離すと俺を腕の中に抱きしめて、
「お前の涙は甘いな。癖になりそうだ」
舌で涙をぬぐった。
止めてくれたことに安堵したのか、次から次へと溢れる涙を止められない。しゃくり上げる俺をなだめるようにエイトリアンが背中を優しく撫でて、
「…もう少し待ってやる。お前、絶対素質あるし」
態度とは裏腹にまたも物騒なことを言い出した。
この鬼畜野郎、泣き止んだら終わりだな、と思いながら、女の涙は武器ってホントだな、と、妙な感慨に浸る。
「どうせジョシュアは、誰にも見せないように、宝物みたいに大事にお前を抱いたんだろ」
エイトリアンの低い声が少し寂し気に聞こえたのは、気のせいだろうと思った。
「お前は思いっきりわかりやすいな」
この程度の火花では何の威力もないらしい。
「まあ、落ち着け。無理にはしない」
胡散臭さ全開の笑顔で傍らの酒を口に含むと、俺を引き寄せて唇を合わせ舌でねじ込んだ。
な。
なんか、言ってることとやってることが全然違うっ‼
と思うのに、ろくに抵抗できずにエイトリアンから注がれた酒が喉に落ちる。ジョシュアが注いでくれた水が濁っていくような気がして必死で首を横に振るが、頭の後ろに回された大きな手に押さえ込まれて動けない。
「や、…」
止めろと言いたいのに、差し込まれた舌に翻弄されて呼吸さえままならない。しかも多分、このチャラ男は高テクニックを持っていて、否応なしに快感が込み上げてくる。
くっそ、この美形兄弟は。
31年物の童貞が太刀打ちできるはずもなく、散々弄ばれているうちに力が抜けて自分からエイトリアンにしがみ付いていた。ふわふわする頭は、酒に酔っているせいか何に酔っているせいか、もう訳が分からない。
ただ。俺の中の一途な乙女みたいな部分が頑なに叫んでいる。
ジョシュアがいい。ジョシュアじゃなきゃ嫌だ。
「…うそつき」
ようやく唇を解かれて、精一杯の抗議を込めてエイトリアンを睨み上げると、
「お前、それ、逆効果だぞ」
奴は甘やかに微笑んで、人差し指の背で俺の頬を撫でた。すっかり力の抜けた俺の身体をぴったりと抱き寄せて、
「…ラズリ。見てみろ」
エイトリアンが熱と興奮に沸く広間に目を向ける。緩み切った視界を漂わせると、獣人と猫娘たちが絡まり合い享楽に耽っている姿が映った。獣の結合。熱が弾ける。
顔が熱くなって鼓動が速まる。興奮と欲望が伝播する。
そんな俺の内情を見透かしたみたいに、エイトリアンの長い指が俺の肌を這い上がる。
「…お前も解放したいか?」
甘い毒みたいにエイトリアンの声が俺を蝕み、身体の芯が期待にわななく。しっかりしろ、俺。この光景は童貞には刺激が強すぎる。
「見られると、快感が増すぞ?」
な、なんてこと言うんだ、この破廉恥スケベ‼︎
と罵ってやるつもりが、奴の絶妙な指の動きに変な声が出てしまった。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずか死ぬ。
「や、…だ」
羞恥の極みに意図せず涙が溢れた。首を横に振るとぽろぽろ下に零れ落ちる。エイトリアンはそこでやっと指を離すと俺を腕の中に抱きしめて、
「お前の涙は甘いな。癖になりそうだ」
舌で涙をぬぐった。
止めてくれたことに安堵したのか、次から次へと溢れる涙を止められない。しゃくり上げる俺をなだめるようにエイトリアンが背中を優しく撫でて、
「…もう少し待ってやる。お前、絶対素質あるし」
態度とは裏腹にまたも物騒なことを言い出した。
この鬼畜野郎、泣き止んだら終わりだな、と思いながら、女の涙は武器ってホントだな、と、妙な感慨に浸る。
「どうせジョシュアは、誰にも見せないように、宝物みたいに大事にお前を抱いたんだろ」
エイトリアンの低い声が少し寂し気に聞こえたのは、気のせいだろうと思った。
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