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5章.金髪のイケメンに愛される

04.

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エイトリアン曰く。

「お前の力は交わりによってどこまでも強くなる。だが、強すぎる力は破滅をもたらす。お前は、力を制御する術を身に着けることが必要だ」

龍神と人間の娘。獣人王とアンドロイド。
報われなかった願い。異種族間交流を果たすために俺は呼ばれた。らしい。

呆然と何もない手のひらを眺める。
白くて細くて小さな手。華奢な少女の。虐げられたか弱い少女の。
この手に託されたのは願い。この手は力を持っている。

「俺が教えてやる」

耳元に、エイトリアンの艶めいた声が落ちた。

気が付けば、広間では獣人と猫娘たちが思い思いに絡まり合い、好き勝手に盛り上がっている。煌々と燃え続けるかがり火。雑多な笑い声。照らされうごめく影。料理が焼ける香ばしい匂い。饗宴は続く。

「お前の願いは何だ?」

耳たぶが震える。

俺は、どうでもいい存在だった。何をやらせても普通よりちょっとできない中の下の男。期待外れの。いてもいなくても。どっちでもいい。使い捨ての。代わりの利く。ただの駒。

「俺は、…」

俺が望みを託された少女の役に立てるのか。俺に力を使うことが出来るのか。

「ん?」

耳たぶに生々しい感触があって、反射的に身体に震えが走った。エイトリアンの唇が耳に触れ、舌が耳殻をなぞる。震える身体をなだめるように長い手足が俺を絡めとる。背中に肌色の熱を感じて、拘束されてるわけでもないのに、動けなくなった。

「…俺。銀龍に、…柊羽に会いたい」

本音は泣き言みたいに弱弱しく漏れた。
俺は大したことが出来ない。役になんて立てない。俺の願いは、ただ。柊羽を愛することだけ。

そんな。
異世界統一の切り札とか言われても困る。異種族間交流に希望を持たれても困る。力を与えられても困る。

喧噪に沸く広間の中で、しかし、俺の弱音は密着するエイトリアンには、しっかり届いたらしい。

「お前、銀龍が誰か知らんのか」

髪に差し込まれた大きな手に促されるまま後ろを向くと、至近距離から覗き込まれた。ジョシュアに似て整い過ぎた顔立ち。ジョシュアと同じ美しい虹色の瞳。その瞳が驚いたようにゆらゆら揺れているのが、薄い膜の向こうに見えた。

「…分かった、会わせてやる」

零れ落ちないように、瞬きもせずに見つめていたら、その美しいアースアイがゆっくりと優しい笑みをかたどった。

「俺がお前の願いを叶えてやる」

エイトリアンの形のいい唇が俺の瞼の淵を撫でる。

「…だから、泣くな」

泣いてない。

言おうとした言葉は、エイトリアンの唇に飲み込まれた。

な、…⁉︎  
なんで。ジョシュアの痕があるうちは俺に手出しできないんじゃないのか。

一瞬で離れた唇がほんの少しだけ切なそうに開いた。

「言っただろう。それはジョシュアの力で、お前の力だ。お前が受け入れるなら、俺はいつでもお前を抱ける」

…そ。

そんなの聞いてねえ‼
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