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3章.銀髪のイケメンに愛される
06.
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人間はエイトの森では生きられない。
エイトの土が人体に害のあるガスを発生させているらしい。
エイトは死の森。人を食らうという龍や魔物たちが住む森。その先は死界。人の世ではない世界。
つまり。
俺が柊羽に会うためにエイトの森に行くのは、自殺行為だ。
でも。あの森にいかなきゃ柊羽に会えない。
「あのさ。もし俺がエイトの森に行ってみたいって言ったら、…」
ちょっとワニ娘たちに聞いてみると、
「「「まああ、姫さま‼」」」
タミル3人娘がまたも全くそっくりな、びっくり乙女ちっくポーズを披露してくれた。まん丸に見開かれてこっちを見ているたワニの目は意外と可愛い。
「そんなこと、ジョシュア様がお許しになるはずありませんわ」
「せっかくエイトの森から救い出していらしたというのに」
「最愛の花嫁さまですのに」
口々に言いながら、咎めるように唇の先を尖らせるのもそっくりだ。
「…はは。ちょっと、言ってみただけ」
とりあえず笑ってごまかしてから、どうしたらもう一度柊羽に会えるだろうか、と考えていた。
その日の午後、タミル3人娘の後について、食事の用意や後片付けをしたり、城の掃除をしたり、洗い物を干したり取り込んだりしながら、考えてみたけど妙案は浮かばなかった。
夕暮れ時に城壁に登らせてもらった。
頬を通り抜けていく風が心地いい。
獣人たちが暮らす王都が遥かに広がっている。
雄大な自然が豊かな緑多き街並み。ランタンの灯りが揺れるレンガ造りの家々。通りを行き交う異種様々な獣人たち。悠然と流れていく時間。
夕陽に染められた街がすごくきれいに見えた。
ここは、過去のように見えて、未来なのかもしれない、と思った。
「姫さまのやきもち、すごく可愛らしかったですわ」
「ジョシュア様が帰っていらっしゃるの、待ち遠しいですわね」
「また明日の朝、湯浴みのお手伝いに伺いますわ~~~」
すっかり日も暮れてから、パワフルで乙女なタミル3人娘たちと王の居室前で別れ、一人、キングの帰りを待つことになった。
「…ラズ。どうした?」
しばらくしてキングが戻ってきた時には、床に正座して出迎えた。
「折り入ってお願いがあります」
妙案は浮かばず、もう、直談判しかないと思った。
「なんだ?」
キングは正座している俺を見て少し驚いたように目を見開いたが、すぐにその瞳を緩めて、片腕で軽々と俺を床から抱き上げた。
「あの、…え、…エイ、…っ」
そのままスタスタと豪奢な天蓋付きのベッドに直行する。
「ん?」
俺がエイト行きを申し出ようとしているのを遮るかのように、開きかけた口にキングの甘い唇が落ちてくる。
「え、…エイっ、…!」
「ん?」
柔らかく優しく。頬に瞼に鼻頭に耳たぶに。
「エイ、…っ‼」
「ん?」
ついばむように。弄ぶように。舐めて。食む。
「ちょ、…っ」
「なんだ?」
ベッドの上で膝抱きにされたまま文句を言おうと目を上げると、至近距離から美しく澄んだアースアイが笑いを滲ませながら見降ろしてきた。
…こいつ。
ぜってーわざとやってるっ‼
エイトの土が人体に害のあるガスを発生させているらしい。
エイトは死の森。人を食らうという龍や魔物たちが住む森。その先は死界。人の世ではない世界。
つまり。
俺が柊羽に会うためにエイトの森に行くのは、自殺行為だ。
でも。あの森にいかなきゃ柊羽に会えない。
「あのさ。もし俺がエイトの森に行ってみたいって言ったら、…」
ちょっとワニ娘たちに聞いてみると、
「「「まああ、姫さま‼」」」
タミル3人娘がまたも全くそっくりな、びっくり乙女ちっくポーズを披露してくれた。まん丸に見開かれてこっちを見ているたワニの目は意外と可愛い。
「そんなこと、ジョシュア様がお許しになるはずありませんわ」
「せっかくエイトの森から救い出していらしたというのに」
「最愛の花嫁さまですのに」
口々に言いながら、咎めるように唇の先を尖らせるのもそっくりだ。
「…はは。ちょっと、言ってみただけ」
とりあえず笑ってごまかしてから、どうしたらもう一度柊羽に会えるだろうか、と考えていた。
その日の午後、タミル3人娘の後について、食事の用意や後片付けをしたり、城の掃除をしたり、洗い物を干したり取り込んだりしながら、考えてみたけど妙案は浮かばなかった。
夕暮れ時に城壁に登らせてもらった。
頬を通り抜けていく風が心地いい。
獣人たちが暮らす王都が遥かに広がっている。
雄大な自然が豊かな緑多き街並み。ランタンの灯りが揺れるレンガ造りの家々。通りを行き交う異種様々な獣人たち。悠然と流れていく時間。
夕陽に染められた街がすごくきれいに見えた。
ここは、過去のように見えて、未来なのかもしれない、と思った。
「姫さまのやきもち、すごく可愛らしかったですわ」
「ジョシュア様が帰っていらっしゃるの、待ち遠しいですわね」
「また明日の朝、湯浴みのお手伝いに伺いますわ~~~」
すっかり日も暮れてから、パワフルで乙女なタミル3人娘たちと王の居室前で別れ、一人、キングの帰りを待つことになった。
「…ラズ。どうした?」
しばらくしてキングが戻ってきた時には、床に正座して出迎えた。
「折り入ってお願いがあります」
妙案は浮かばず、もう、直談判しかないと思った。
「なんだ?」
キングは正座している俺を見て少し驚いたように目を見開いたが、すぐにその瞳を緩めて、片腕で軽々と俺を床から抱き上げた。
「あの、…え、…エイ、…っ」
そのままスタスタと豪奢な天蓋付きのベッドに直行する。
「ん?」
俺がエイト行きを申し出ようとしているのを遮るかのように、開きかけた口にキングの甘い唇が落ちてくる。
「え、…エイっ、…!」
「ん?」
柔らかく優しく。頬に瞼に鼻頭に耳たぶに。
「エイ、…っ‼」
「ん?」
ついばむように。弄ぶように。舐めて。食む。
「ちょ、…っ」
「なんだ?」
ベッドの上で膝抱きにされたまま文句を言おうと目を上げると、至近距離から美しく澄んだアースアイが笑いを滲ませながら見降ろしてきた。
…こいつ。
ぜってーわざとやってるっ‼
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