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3章.銀髪のイケメンに愛される

02.

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「「「まああ、姫さま‼」」」

背後でワニ3人娘の驚きのハモリ声を聞いて我に返った。

俺は一体。今、何を。

自分のしでかしてしまったことが信じられずに呆然とする。
俺ってこんな奴だっけ。こんな衝動的なタイプだったっけ。

「なんですの、これはっ⁉」

アイスがヒットしてしまったのは、大胆な肩出しドレスに身を包んだ若い令嬢だった。アイスが当たった肩辺りを拭いながら、怒りの形相で立ち上がった彼女に、隣に居た男性が、

「何だか、甘くておいしいよ」
「ちょっと、マシュー、舐めないでいただける⁉」

能天気な感想を言って火に油を注いでいる。

「たっ、…大変申し訳ございません。手を滑らせてしまいました」

100%俺が悪い訳で、ともかくも謝罪に駆け寄る。もう自分が本当に信じられない。31年間平和だけを愛して、踏みつけられても貶められてもへらへら流して生きてきたのに。

「す、…すぐにお召し替えを、…」

床にひれ伏す勢いで令嬢に謝る俺に、

「…ラズ。どうした?」
「はああ⁉ なんであんたが、…っ‼」

玉座から降りたキングが近づいてくるのと、令嬢が100年探した親の仇を見つけたような敵意丸出しの表情で俺を睨みつけるのとが、ほぼ同時だった。

「え、…あれ? ティアラ?」

令嬢に付き従っていた隣の男性も俺を見て驚いた顔をする。

「その痣、…っ」

憎々しげに俺を見る令嬢の視線が首筋の痣に留まる。

「ラズ。俺に会いに来たのか?」

サクッと図星をさしたキングが、隣から長い指を俺の頬に伸ばした、

その時。

「ご無事でしたのね、お姉さま。会いたかったですわ~~~っ」

打って変わって殊勝な態度で令嬢が俺に抱き着いてきた。

え。ええっ。胸が当たる。あ、そんなには当たらん。結構、ない。いや、そんな感想はいらん。

女性に抱き着かれるという人生初体験をした俺は動揺のまま硬直し、

「心配してましたのよ。失意のあまりエイトの森に彷徨い出られたと聞いて。わたくし、お姉さまを案じて毎夜泣き暮らしておりましたのよ―――っ」

妙に芝居がかった勢いで大粒の涙を流す令嬢を呆然と見つめた。

「ええ⁉ 王位を好きに出来るってうっきうきだったじゃ、…」

同じく呆然と口を滑らせた男性は、目にもとまらぬ速さの肘鉄をくらわされ、わき腹を押さえてうずくまる。え。なにこのすご技。女子って怖い。

「…ラズの知り合いか」

可憐な見た目に反した怪力に絞め殺されるんじゃないかという恐怖におののいていた俺を、さり気なく令嬢から引き離し、キングが間に立つ。

「わたくしたちはアレクサンドロニカ王国セレバンティウスの爵位を継ぐ2人きりの血を分けた姉妹ですの。仲睦まじく暮らしておりましたのに、婚約者のマシュマクベスト様が姉よりわたくしを見初めてしまい、姉は失意のあまり遁走してしまったんですわっ」

「ええ⁉ まつ毛刑で追放したらゲゲック宰相に取り持ってくれるって、…」

またも、哀れな男性はすご技の踵踏みつけ術の前に沈没する。なにこの猛烈女子。こんな妹がいたんなら、俺が成り代わった美少女はずいぶん苦労したろうな。
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