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2章.瑠璃色の瞳の美少女になってた

04.

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金木犀の香りがする。

旅館の大浴場も真っ青な広いお風呂に、黄金色の温泉。蜂蜜のようなまろやかな肌触りのお湯は、控えめに言っても最高だった。

ワニ獣人の3人娘、ターミールーは、香りのよい石鹸をしこたま泡立てて、俺の髪の1本1本から足のつま先に至るまで情け容赦なく洗いまくり(控えめに言っても最悪だった)、俺を金木犀の香りがする湯船に放り込んだ。全力で抵抗する俺をよそに、自分でも触るのを控えていたあんなところやこんなところまで隈なく洗われ(さすがワニの力強さと言えよう)、気力を根こそぎ奪われた俺は、すっかり脱力して湯船の淵に頭をのせ、もうワニ娘の為すがままになっている。もしかしたら風俗ってこんな感じなのかもしれない。

「姫さま、御髪もつやつやですわ」

タアが、良い匂いのするオイルみたいなものを滴らせながら、俺の長い髪を梳いている。絶妙な力加減の頭皮マッサージ付きで、正直かなり気持ちいい。実際、タアが手入れしている俺の髪は栗色でつやつやしていて滑らかに光り輝いている。

「姫さまのおみ足、滑らかで柔らかいんですのね」

ミイはお湯の中で俺の足つぼを刺激したり、ふくらはぎをマッサージしたりしてくれている。ワニの肉球で押されるのが堪らなく気持ちいい。折れそうに細い俺の足は蜂蜜色のお湯の中でも透けるような色の白さが際立っていて、正直自分で撫でさすりまくりたいような、アブナイ気持ちにさせられる。

「姫さま、本当にまつ毛が長いんですわね」

ルウは、羽のようなもので出来た大きな団扇で俺に心地よい風を送りながら、眉を整えたりクリームを塗ったり、俺の顔を手入れしている。浴室に入る時に鏡で顔を少し見たけれど、長いまつ毛に縁どられたパッチリと大きな瞳が、吸い込まれそうな瑠璃色に輝いていて、ここに来てみんなにラピスラズリと言われ続けたのにも納得がいった。

総合的に見て、俺が成り代わったこの肉体は、かなり、極めて、この上なく。スペシャル可愛い美少女と言えた。

「…まつ毛ってさ、長いとだめなの?」

そう言えば、俺は唯一の取り柄(まあ輝の場合だけど)であるまつ毛の長さで糾弾されたんじゃなかったか。

「まあ、そんな物騒な話、初めて聞きましたわ」
「まつ毛こそ神。長さは女の命ですわ」
「…でもワタクシ、聞いたことありますわ。隣国のアレクサンドロニカでは、そのように野蛮な法律で処刑された不遇の姫さまがいらしたとか」

「「えええ―――、恐ろしいですわ―――っ」」

ルウの話に、タアとミイが握りしめた両手を口に当てて目をパしパしさせる乙女ぶりっ子ポーズを決めた。この際デカいし怖いワニの見た目なのに、しっかり乙女に見えるからすごい。

「つーか、それ、俺だわ」

「「「えええ―――、ラズ姫さま、アレクサンドロニカからいらしたんですの⁉」」」

今度は3人娘がそろってぶりっ子ポーズを決めた。わあ、ワニの乙女ぶり、迫力―――‼
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