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2章.瑠璃色の瞳の美少女になってた

01.

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「―――…ラズ」

結論から言うと、俺はどこにも行かなかったし、美少女もどこにも行かなかった。俺は前世の記憶を持ちながら、儚げな美少女として転生したままだった。

「お前、…いい加減、ちょっと離せ」

要するに、俺は死ななかった。

「ん、…?」

すごく温かいものに包まれて、心地よく安心する肌触りがあって、規則正しく落ち着きをくれる心音が響いている、…至福の眠りはぶっきらぼうな低い声に遮られた。

なんだよ。
ここ数年ついぞ縁のなかった満ち足りた俺の眠りを妨げる奴は、誰だよ。

寝ぼけ眼を開くと、鍛え抜かれた美しい胸筋が目に入った。さらさらした触り心地の良い肌。鎖骨。顎のライン。形の良い耳。官能的な唇。

「え、…あんた誰」

呆然と口を開けた俺を、切れ長の深い瞳がじっと見降ろしている。青と茶色が混ざり合った地球色の瞳。なんだっけ、これ。確か、そう…、アースアイ?

「ローズベルト、…」

銀色の髪を気だるげにかきあげて、男が低くかすれた、ため息混じりの声を漏らす。

「…・ウィリアム・ディ・アンドレ・ジョシュア」

…なっが。

「お前の唯一の男だ、ラズ」

二度見した。三度見した。
ムカつくほど整った男前な顔がどこか不遜に見返してくる。

…無理。

早々に白旗を上げて視線を逸らす。太刀打ちできない。こいつはスクールカーストのトップに君臨している男だ。社会的ヒエラルキーの頂点に立つ男だ。俺のような中の下の庶民、可もなく不可もなく、居てもいなくてもどうでもいい存在からしたら、そもそも目にも留めてもらえない孤高のキングだ。

「分かったら、ちょっと離せ」

言われて、初めて自分の醜態に気が付いた。

俺は、身体の隅々、緩く跳ねた髪の毛先から足の小指の爪まで、何もかもが美しいキングの身体をがっちりロックしていた。両腕で滑らかな背中を抱きしめて、両足を引き締まった腰に巻き付けて、これ以上ないほど密着した状態で素肌を貼り合わせていた。…全裸で。

「うお、…っ」

動揺しながら身を引くと、密着しすぎた肌が嫌がるようにキングに吸い付き、俺の中からキングがするりと引き抜かれた。その刺激で甘美な震えが湧き起こって、予想外に甘ったるくて甲高いオンナみたいな声を上げてしまい、羞恥と恍惚に震えた。

これって、…この状態って。

身体の奥から溢れ出たものが股の間を伝い落ちる。その独特な快感混じりの背徳感に奥深くが痙攣して、また声を上げそうになってしまった。

経験のない俺でもさすがに分かる。

脱・童貞。

え。俺、ヤッた? ヤッたのか。この人間離れした完璧に美しい孤高のキングと。

…ん? キング? ってことは。
やっぱ童貞のまま、なのか、…⁇
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