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1章.輝、異世界に転生する
06.
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それが降り立った勢いで風が起こり、地面にひっくり返る。
両手の自由を奪われているため後ろに手をつけず、しこたま腰を打ちつけながら苔むした地面を転がった。俺の尻と背中はもはやあざだらけなんじゃないかと思う。髪に枯れ枝や葉っぱが絡みつく。弾みでスカートが捲れあがって素足がスース―した。
風圧がおさまってから恐る恐る目を開くと、
「りゅ、…う?」
木漏れ日を浴びて銀色に輝く巨大な龍のような姿が見えた。
艶やかに煌めく銀色の鱗。美しく伸びた壮大な翼。
固く尖った角。綺麗な曲線を描く髭。鋭利な刃物よりも鋭い牙と爪。
そして何より。吸い込まれそうに美しく澄んだ虹色の瞳。
初めて目にするその荘厳な姿に畏敬の念を抱けども、恐怖心は沸かなかった。足元にひれ伏したいくらい美しく誇らしく力強く心惹かれる。
《…ラピスラズリ》
圧倒的な龍の美しさに、動くことはおろか息をすることもままならず、頭を起こしたまま固まっている俺を、銀の龍の虹色の瞳が真っすぐに射抜く。頭の中に、低く掠れて少し甘い、龍の声が不思議な響きを持って届いた。
ラピスラズリ、…って何だっけ。と思ったけれど、龍の言葉の意味を深く考えている余裕はなかった。
「…しゅ、う?」
―――柊羽だ。
なんだろう。なんでだろう。
俺だけを欲して俺だけを見つめ、俺だけに全てを委ねる柊羽の無垢な瞳が、龍のそれと重なった。
柊羽は、その聡明な瞳でいつもじっと俺のことを見ていた。俺が課長に死ぬほどどやされてへこんでいることも、取引先で土下座させられて屈辱にまみれていることも、派遣社員の平目さんに『お疲れ様です』と言われてそれが若干笑顔だったから舞い上がっていることも、柊羽は全部知っていた。
俺が柊羽のおむつ替えに執念を燃やしていることも(柊羽のキュートなお尻をかぶれさせてはいけない‼︎)、うんこが漏れたパンツの洗濯でさえ楽しいことも、柊羽が俺の作ったご飯を残さず食べてくれた時の満足感も、柊羽の小さな手を握って眠る時の幸福感も、柊羽には全部バレていた。
俺は柊羽を自分よりはるかに愛していたから、
「しゅう、だよな…」
柊羽が分かったんだと思う。
「…お前。かっけーな」
手錠に繋がれた両手を柊羽に差し出す。自然と笑みが浮かんでいた。
見つけた、俺の柊羽。
こんなに大きく強く格好良くなってるなんて。
銀龍は虹色の瞳を細めて俺を見ると、その口を大きく開けた。薄桃色の柔らかそうな舌と鋭く尖って美しく輝く牙が見える。
「しゅ、…っ」
次の瞬間。
その鋭い牙を首筋に突き立てられた。
両手の自由を奪われているため後ろに手をつけず、しこたま腰を打ちつけながら苔むした地面を転がった。俺の尻と背中はもはやあざだらけなんじゃないかと思う。髪に枯れ枝や葉っぱが絡みつく。弾みでスカートが捲れあがって素足がスース―した。
風圧がおさまってから恐る恐る目を開くと、
「りゅ、…う?」
木漏れ日を浴びて銀色に輝く巨大な龍のような姿が見えた。
艶やかに煌めく銀色の鱗。美しく伸びた壮大な翼。
固く尖った角。綺麗な曲線を描く髭。鋭利な刃物よりも鋭い牙と爪。
そして何より。吸い込まれそうに美しく澄んだ虹色の瞳。
初めて目にするその荘厳な姿に畏敬の念を抱けども、恐怖心は沸かなかった。足元にひれ伏したいくらい美しく誇らしく力強く心惹かれる。
《…ラピスラズリ》
圧倒的な龍の美しさに、動くことはおろか息をすることもままならず、頭を起こしたまま固まっている俺を、銀の龍の虹色の瞳が真っすぐに射抜く。頭の中に、低く掠れて少し甘い、龍の声が不思議な響きを持って届いた。
ラピスラズリ、…って何だっけ。と思ったけれど、龍の言葉の意味を深く考えている余裕はなかった。
「…しゅ、う?」
―――柊羽だ。
なんだろう。なんでだろう。
俺だけを欲して俺だけを見つめ、俺だけに全てを委ねる柊羽の無垢な瞳が、龍のそれと重なった。
柊羽は、その聡明な瞳でいつもじっと俺のことを見ていた。俺が課長に死ぬほどどやされてへこんでいることも、取引先で土下座させられて屈辱にまみれていることも、派遣社員の平目さんに『お疲れ様です』と言われてそれが若干笑顔だったから舞い上がっていることも、柊羽は全部知っていた。
俺が柊羽のおむつ替えに執念を燃やしていることも(柊羽のキュートなお尻をかぶれさせてはいけない‼︎)、うんこが漏れたパンツの洗濯でさえ楽しいことも、柊羽が俺の作ったご飯を残さず食べてくれた時の満足感も、柊羽の小さな手を握って眠る時の幸福感も、柊羽には全部バレていた。
俺は柊羽を自分よりはるかに愛していたから、
「しゅう、だよな…」
柊羽が分かったんだと思う。
「…お前。かっけーな」
手錠に繋がれた両手を柊羽に差し出す。自然と笑みが浮かんでいた。
見つけた、俺の柊羽。
こんなに大きく強く格好良くなってるなんて。
銀龍は虹色の瞳を細めて俺を見ると、その口を大きく開けた。薄桃色の柔らかそうな舌と鋭く尖って美しく輝く牙が見える。
「しゅ、…っ」
次の瞬間。
その鋭い牙を首筋に突き立てられた。
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