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しおりを挟む食事は一日一回になった。
掃除洗濯は全て少女の仕事。
仕事をしていないときは、物置の隅で静かに息を潜める。
躾と称した暴力は日常茶飯事。
態度が気に入らないと蹴られ、表情がムカつくと殴られ、声が耳障りだと首を絞められた。
ふくよかだった体は常に生傷が絶えず、細く小さくなった。
艶やかだった長い金髪は、親戚達の子供によって切られ短くされた。
元々は感情豊かな子供だったが、日が経つにつれ人形のように表情は変わらなくなりほとんど喋ることはなくなっていた。
そんな生活が三年ほど続き、少女が十歳の誕生日を一人物置で迎えた頃。
いよいよ家計が苦しくなった親戚は少女を売ることに決めた。
少女を買い取ったのは、気持ちの悪い男だった。
何年も日に当たってないような青白い肌に、ひょろりと長い体躯。ぼそぼそと話す声は聞き取りにくいのに、時折何が面白いのかヒヒッ笑う声だけは妙に甲高い。
まともに寝ていないのか目の下に出来た隈が酷く、窪んだ目はぎょろぎょろとしていた。
別れはあっさりとしたものだった。
「お世話になりました」
少女は黙ったままで泣きもせず家を出ていく間際小さな声で、それだけ言って去っていった。
少女の売値は銀貨一枚。
家族の一ヶ月の食費額だった。
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