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第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!

魔素ネットコーティング

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蒸留塔の前に到着し装甲車から降り塔を見上げる。
蒸留塔は施設の中心に建てられており高さは100m以上、地上の幅も50m。
上に行けば細くなっているが塔の最上部は20mほどはありそうだ。

現代世界を知っている我々にはそう大きな物ではないのかもしれない。
城など幅がこの塔より大きい建物は幾つもあるが高さに限って言えばハルフェルナでこれ以上に高さのある建物は見たことが無い。

「おいおい、あの悪魔のような頭部は何なんだよ!」
智弘が頭を摩りながら言う。

塔の頭部は、どう見ても悪魔のような顔にしか見えない。
2本の角が両脇に生え鋭く釣りあがった目のような筋があり口角が両脇が釣りあがり・・・・
ニタッ!と笑った悪魔にしか見えないのだ。
遠くからも分かっていたが近くで見るといっそうはっきり分かった。

この顔に見覚えがあった。
茜ちゃんが子供の頃に落書きで書く悪魔の絵がこういう感じだった。

「不気味なデザインですね~! 魔族が作ったのですか?」
七海がジーコさんに聞くと

「文献など何も残っていないのですよ。
 ただ、5,600年前に『一夜にして塔が出来上がった』と言う言い伝えは残っていますけどね」

「一夜ですか~」
と七海は感心するように頷いた。

「七海さんなら、これくらい作れるんじゃない? 
 ルホストも一瞬で囲んじゃったのだから」

そう、ガルメニアがナミラーの町へ侵攻を開始したときに、ご飯時を狙ってちょくちょく攻撃を仕掛けてくるのにキレた七海がルホストの町を土壁で覆ってしまった事件だ。
屋根まで覆ってしまい酸欠になる恐れがあったが外と中から突貫工事で通路を確保したらしい。

「多分、無理じゃないかな? 
 壁みたいに単純な物なら作れるけど、内部構造も作るとなると一瞬では無理だと思う」

「内部には階段や通路なども整っていますよ」

とジーコさんが言うと七海は静かに首を振った。

智弘が蒸留塔に近寄り熱心に見ながら、塔を手でコツコツと叩きながら検証している。

「これはコンクリートじゃないか?
 この世界で初めてコンクリートを見たぞ!」

と智弘が気がついた。

ハルフェルナの建物はレンガや石作りが多く場所によって木造を散見する事はあったが、コンクリートの建物は見たことが無かった。

「中に柱となる金属があるのかな?  あります?」
と、智弘がジーコさんに聞くと

「そこまではわかりませんね。
 考えたことも無かったですよ」

そして智弘が蒸留塔の外壁を熱心に触っている。

「なんかコーティングされているな」
 
蒸留塔に近づき触ってみると表面がコンクリートとは思えないほどツルツルしている。
目を凝らして表面を見るとガラスのような皮膜に覆われている。

「これか~これがあるから風化しないんだ」
智弘が一人得心を得たように声を上げた。

「いくらコンクリートと言っても500年も経てば風化してボロボロになるはずだからな」

「それは魔素ネットコーティングといって失われた技術だよ」
ロッシさんが教えてくれた。

「「魔素ネットコーティング?」」

不覚にも智弘と声を合わせてしまった。

「我々がなぜ、魔法を使えるかと言うと空気中に魔素があるからなんだよ。
 魔素が魔力、魔法の元になっているんだ。
 『なぜ魔法を使えるのか』謎だったのだが、それを証明したのもラーチだよ。
 魔素を手の平に集め、証明する過程で作ったのが魔素ネットコーティングと言われているんだよ」

ロッシさんが教えてくれた。

「「ラーチ!すげーー!!」」

またも俺と智弘は思わず声が合ってしまった。
ハルフェルナの魔法の謎を解明したにもかかわらずマッドサイエンティスト呼ばわり。
俺はラーチに深く同情した。

「簡単に言うと魔素を網目の様に構成して何重にもコーティングするのだよ
 皮膜に見えるけど透明な魔素がネット状になっているんだよ」

「ロッシさん、それが分かっているのなら何故出来ないのですか?」

「魔素集めるのにも魔力がいる。
 ネット状にして何重にもするのには魔力がいる。
 その辺の魔法使いには不可能なんだよ。
 知り合いの魔道師に頼んでみたのだが製作は不可能だったんだよ。
 それに魔素ネットコーティングしても雨、風、炎くらいしか防げないからね」

「へ? たったそれだけですか?」

と俺はマジマジ、ロッシさんの顔を見て聞くと

「それだけ」

「それだけ!?」

「そう、それだけ」

「剣で斬っても傷が付かないとか?」

「簡単に破れるよ」

「魔法を弾くとか?」

「無理!」

「・・・・じゃ、役立たずの技術ですか?」

「そうだね。ほとんど役に立たないね。
 魔法を弾けたら価値があるのかもしれないけど、労力の割りに有効性が低いから失われたというより誰も必要としなかったと言うのが正解かもしれないね」

俺は思った。
ラーチ・・・・色々な意味で可哀想なやつだ! と。


パチパチバチバチ

変な音がする。
音のほうを見てみると七海がいた。
七海は手を器のようにして何かを集めているようだった。
七海の手で作った器が光り、なおも光が集まってくる。

「お、お、おい、七海! お前・・・・・・」

「こうかな?」
と言い七海は手の平を上に向けたまま両手を広げた。
すると1m×1mほどの透き通った網目状のシートができた。

「あ~~どうしよう。どうしよう。
 碧くん~~どうしよう」

「そ、それは魔素ネットじゃないか!」
ロッシさんが驚く。

「私も始めて実物を見ましたよ」
ジーコさんも驚く。

「すげーー!!七海、すげーーー!!」

魔素ネットは食品用のラップシートにしか見えなかった。。

「七海さん、凄いね~ どうやったの?」

「ロッシさんに言われたように魔素を感じて魔素を手の平に集めるようにイメージしてみたの」

「僕もやってみよう」

と将太も七海と同じように手で器を作りイメージしているようだ。
すると七海と同じくバチバチと言う音をたてると50cm四方の透明のラップシートが手の上に出来上がった。

「おおお、将太スゲー」

「七海さんみたいに大きくはできないや。やっぱり七海さんは凄いね~」

が、七海は魔力が弱くなっていると言っていた。
最高の状態だったらこの巨大な塔を覆うくらいのシートが作れたのだろうか?

将太に触発され智弘と則之も真似して作ってみたが
智弘は10cm四方。
則之は作ることが出来なかった。

「拙者は魔力が少ないから作れなかったでゴザルな」

「アレックスさんの方が魔力高いから作れるのじゃない?」

と俺が言うとアレックスさんは試してみたが作ることは出来なかった。
そして、ロッシさん、ジーコさんも真似してみたがシートが出来上がる事は無かった。
俺はと言うと魔力が最初から無いから真似することさえしなかった。

「魔力の量ではなく異世界人しか作れないのかもしれない!!
 これは面白い論文が書けるかも知れんぞ!!」
ロッシさんは一人テンションが上がった。

「これ・・・・・コートとか色々貰ったから碧くんに使って欲しい」

と七海は恥ずかしそうに少しうつむきながら完成したラップシートを両手で広げながら俺に言った。
が、そのコートはイフリートの仮面を付けた西原と戦ったときに燃えてしまったけど。

「じゃ、僕もアオ君に使って欲しいな~」
と将太が上目遣いで両手で拡げている。

「あ、あ、二人ともありがとう。
 どう使おうか?」

「大きい方はボロボロになった学生服に張って上からコーティングしたらどうだ?
 小さい方はズボンの方に撒いたらどうだ?」

「モテモテでゴザルな~ 碧殿!」

「うるせ~よ、則之!!」

「では、私は差し上げる物が無いので『熱いベーゼ』を」

とアレックスさんが言った瞬間、七海と将太が二人揃って俺に背を向けシートをアレックスさんに向け広げてブロックしたのだった。
アレックスさんの後ろでは智弘と則之が膝を叩きながら大笑いしている。

ブチ噛まして~~あいつら二人にアイアンクローを力一杯、ブチ噛まして~~!!

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