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第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!
碧・抹殺指令!!
しおりを挟む4人の前にウエイトレスが左腕を器用に使い3皿乗せ、右手で1皿持ち人数分のカレーライスを持ってきた。
ウエイトレスがテーブルの上にカレーライスを置き下がろうとするときカクさんは黒い飲み物を4つ追加した。
「カクさんも好きねぇ~」
「そりゃそうだろ! 『ペカーラ』を嫌いな魔族なんているわけ無いだろ!
これを飲むと好戦的な気分が和らぐからな!
しかも、定期的に飲みたくなる」
「カクの言うとおりだぜ!
この飲み物で魔族界を統一したようなもんだから恐ろしい中毒性があるよな」
「ワシも初めて飲んだときは脳みそが痺れたもんじゃ!
宰相閣下も考えたもんだな。『ペカーラ』を使って魔族界を統一させるとは!
たいしたものじゃ!うんうん」
と自分を納得させるように言った。
「生物は甘いものを食べているときは好戦的な気分が抑えられますからね。
うちの宰相ちゃんもやりますね。ご隠居様。
友好的な部族には『ペカーラ』を提供し、反抗的、敵対する部族には提供しない。
コピー製品は作れますけど上質なものは我が国でしか作れませんからね。
とくに好戦的な部族ほど上質な『ペカーラ』を好みますからね」
「力ずくで奪おうとする部族は情け容赦なしに排除!
うん、悪魔的で分かり易いから俺は好きなやり方だぜ!」
とカクさんは頷きながら言った。
「分かりやすいやり方じゃな。
大体、滅ぼした部族はやたらと好戦的で人間をエサにしか思っていない問題のある連中ばかりじゃからワシも心が痛まんわ」
「私はスケさん、カクさんが粛清リストに入っていないことが不思議だわ」
「俺もカクも宰相閣下の前では大人しくするようにしているからな」
「『机叩き3時間の刑』を受けてから絶対服従してるからな。
最初は獣王の事を馬鹿にしていたが・・・・・
あいつの気持ちがよく分かった」
と声のトーンが暗くなるカクさんだった。
「俺もご隠居が宰相閣下に逆らわないのがよく分かりましたよ。
『机叩き3時間の刑』が終わったとき、樫の木で作られたテーブルが真っ二つになっていたから・・・・・
宰相閣下はお譲とは別の意味で恐ろしい」
と遠い目でスケさんは語った。
4人はカレーライスを食べながら良い思い出なのか悪夢なのか分からない過去の話で盛り上がり、盛り下がった。
「お譲たちがハルフェルナに来て食生活が随分変わたな~
米なんて無かったし、このカレーもお譲たちが持ち込んだものだからな~」
「カレーはいつ食っても美味い!」
カクさんはカレーを流し込むようにして食べた。
「カクさん、もう少し落ち着いて食べなさいよ~ 誰も取ったりしないから!」
「あん? 『カレーは飲み物!』って、ハチベーが言っていたぜ!」
「えっ!? まさか! 固形状の物を飲み込むなんてありえないわよ!
ハチベーにからかわれているのよ!」
と、おメアは上品に一口一口、口に運び咀嚼した。
「あぁ、そうそう、カレーといえばナミラーの町で『BLカレー』というのが大人気だそうですよ。
見た目は今までの物と変わらないのですが、
味が桁違いに美味しい!
口に入れた瞬間、雷に撃たれた様な衝撃!
と、うちの子たちから情報が上がってきましたよ」
「なんじゃ? その『BL』っというのは」
「『BL』が何かまでは書かれていませんでしたけど、一度食べるとまた必ず食べたくなるそうですよ」
とおメアはご隠居様に向かい答えた。
「ほう~それはそんなに美味いのか!
一度食してみたいものじゃが何か特別なものが入っているのかもしれんな。
注意した方が良いかもしれんぞ」
「BL・・・BL・・・BLか。
『ボーイズ・ラブ』ってヤツじゃねーか? おメア!」
3人が一瞬まじめな顔をした後、
ハハハハハハハ
と3人の笑い声が響いた。
「スケさん、何、馬鹿な事を言っておるのじゃ!
そんな訳なかろう!」
「あ~ら、ご隠居様。そんな流行言葉もご存知なのですか?」
「おメア、ワシを普通の老人と思っておるな。
これでもナウでヤングな老人のつもりじゃぞ!」
「あ~~~ら」
と言うとおメアはクスクスと笑った。
隣ではカクさんがまじめな顔をしながらポツリと呟いた。
「ブラッド・ライトニング・・・・・・」
その言葉を聞いた瞬間、ご隠居、スケさん、おメアの3人はスプーンを持ちながら固まってしまった。
それはハルフェルナの禁句の一つであり呪われた言葉であった。
ブラッド・ライトニング、正確には『ブラッド・ライトニング現象』と言われ、人間が悪魔の血を飲むとき体に雷が落ちたような衝撃を受けるところから付けられた言葉だった。
人間が悪魔の血を飲むとどうなるか?
ほぼすべての人間は飲んだ瞬間に体が耐え切れずにショック死する。
が、ごく一部の人間は魔族の血に耐えることが出来る。
するとどうなるか?
人間を超える力を手に入れることが出来るのだ。
飲めば飲むほど力は増す。
ある者は筋力が、ある者は魔力が、ある者はスピードが。
だが限界は何れやってくる。
ハルフェルナの人間ではいつか耐えられず死が訪れる・・・・・
が、様々なギフトを貰った異世界からの召喚者だったらどうなるだろうか?
その異世界からの召喚者が魔族の血に耐性を持っていたら。
やたら体力のある異世界召喚者だったら。
カミラーズ人のように戦闘に長けた召喚者だったら・・・・
勇者であったら・・・・・
吸血鬼であったら・・・・
ハルフェルナに『マルベラス・死の大行進』の傷跡が癒えた頃、一人のバトランティス人のバンパイアが召喚された。
このバトランティス人はカミラーズ人と同じように好戦的で戦闘能力に長けた人種だった。
そして、一人の魔王を生む事になった。
ハルフェルナの歴史上、ただ一人!
勇者が魔王になってしまった例だ。
その者は『魔王勇者』と呼ばれ恐れられた。
魔族を殺し血を吸い、亜人を殺し血を吸い、人間を殺して血を吸う。
彼は元々の世界では吸血鬼であったため悲劇は加速した。
常に血を求め殺戮を繰り返した。
召喚した国の人間の血をすべて吸い尽くし、亜人の村を襲い血を吸い尽くす。
魔族であろうが構わずに吸い尽くした。
その中には、おメアの部下のサキュバスも多くいた。
サキュバスの色香を使い多くの血を集め1万以上の血を吸っただろう。
悪い事にその中にはメガデーモンのみならずデビルロードもいた。
『魔王勇者』はデビルロードの血さえも平気で吸い自分の力にした。
デビルロードの血を吸ったことでハルフェルナ世界の絶対強者の一種族である高位の悪魔族の力を手に入れ、悪魔族からの攻撃に耐えうる耐性も手に入れてしまった。
現にスケさん、カクさんは『魔王勇者・討伐』の任を与えられ向かったのだが討伐に失敗した苦い過去があった。
スケさんはその事を思い出し不快な表情になった。
カクさんは「チッ!」と舌打ちをした。
が、それは仕方が無いことだろう。
二人の主人たるご隠居様でさえも討伐に失敗したのだから。
そう!この『魔王勇者』を討伐したのも勇者・茜であった。
茜がハルフェルナに来るのがもう少し遅かったら一体どうなっていたのだろうか?
原液のまま飲める人間はほとんどいないことが分かったと思うが、では100倍くらいに薄め人間に与えるとどうなるか?
薄めさえすれば多くの人間も耐える事が出来る。
それを飲み続けると麻薬のような中毒状態を引き起こすのだ。
ある者は幻覚を見て恐怖に駆られ、ある者は理性を失い狂気に走り、ある者は働く気力を煩悩に溺れる。
悪魔の血で作られた料理が世界に蔓延すれば社会生活が崩壊してしまうだろう。
ご隠居様はテーブルの肘を着き禿げた頭を撫でながら考えた。
(これはちと危険かもしれないな・・・・・
そのカレー屋、自体が悪魔・・・・魔族なのかもしれない。
そのような事をする魔族を放ってはおけないじゃろう。
もし人間だった場合。
それはその人間が悪魔を殺しているか、使役しているのか・・・・・。
どちらにしても・・・・・やる事は同じか)
「放置してはおけんな。
そのカレー屋は気をつけないといかんな」
とご隠居様はつぶやいた。
「至急、手の者を手配させます」
おメアが即答する。
「そのカレー屋、行き合ったら俺たちの独断で始末しても良いのでは無いでしょうか?」
「あぁ、俺もそう思いますよ。
お譲たちがいつ来るか分からないから、そんな危険なヤツなら勝手に判断しても宰相閣下も文句は言わんでしょ」
「そうじゃの。『魔王勇者』のような混乱を巻き起こす可能性がある者を放置しておくことの方ががマズイじゃろう。
一人くらい殺めても女子も宰相も文句は言わんじゃろ」
ご隠居様は自分で言うと黙って2度、3度頷いた。
この判断は悲劇を生むのか?
それとも喜劇を生むのか?
それは神にも分からないことだった。
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