149 / 304
第二部 お兄ちゃん、待っててね!/ラッキースケベは必・・・あぁ! そんなものねぇーよ!!
護送
しおりを挟むウオレル騎士との戦いを避けた茜たちはとりあえず北へと向かった。
フェネクシーの意を汲んで茜たちは北の森へ行く事になったのだが、そこにアルファたちファイレル国の人間がいるとウオレルとの軋轢が表面化する恐れがあり、ファイレル国王グレーコにも事の顛末を報告する義務もあるので加奈はアルファには帰国を提案しアルファも受け入れここで分かれる事になった。
安全を考えてウオレルの勢力が弱まる西へ迂回し国へ戻る事にした。
北の森が近づくに従い戦いの後と思われる荒地や焼けた木々が目立つようになる。
人目を避けるように林や森を進むと10人ほどの亜人たちを引き連れ護送しているウオレルの騎士団に遭遇する。
亜人たちは一様に項垂れ戦いに敗れた様子が見て取れる。
獣人、エルフ、ドワーフと思われる背の低い種族も見受けられる。
「大魔王さん、あの亜人の人たち、どうなるの?」
「護送しているところを見ると奴隷にするのじゃろうな」
「嫌な感じね。助けに行きましょうか」
「女子、簡単に言うがウオレル国と敵対するということじゃぞ。良いのか?」
「だって、このまま見過ごす方がもっと不愉快な気分になるじゃない。
宰相・加奈はどうした方がいい?」
「え?いきなり私に振らないでよ・・・・どうしたらと言われても・・・・
私もウオレル国とは仲良くやっていけそうにないし・・・・茜は助けたいんでしょ。
なら、一つしかないわね」
と加奈が言い終わらないうちに茜は飛び出しウオレルの騎士にLightの魔法を打ち込んだ。
「眩しい!!」
「敵襲だ!!」
と騎士たちが言い終わらないうちに茜は5人ほどの騎士をタナの剣の腹の部分で殴り飛ばし失神させた。
残った騎士たちは剣を構えたが目が眩んでいるのであらぬ方向へ剣を構えている。
「逃げろ~」
と背の高いエルフが叫ぶ。
犬なのか狼なのか分からない獣人が鎖を引き千切り、他の仲間の鎖を引き千切る。
捕らわれた亜人たちは雲の子を散らすようにあっという間に森へ消え去った。
その間に茜は残りの騎士たちを殴り飛ばし片っ端から気絶させる。
「貴様ら、亜人に味方するとはどこの者だ!」
騎士の一人が逃げそびれた猫のような獣人の首に短刀を突きつけ人質に取りながら叫ぶ。
その騎士は茜のLightの魔法を逃れたのかスキルを持っているのか通じなかったようだ。
「大人しくしないと、コイツを殺すぞ!」
猫のような獣人は腕からは血が流れており苦悶の表情をする。
茜は両手を挙げ降伏のポーズを取った。
「お前の剣をこっちへ投げろ!他の奴らも武器を足元へ捨てろ!
茜はタナの剣を放り投げた。
ズン!
と軽く地響きを轟かせ騎士が目をタナの剣に移した瞬間、ブラドーはウオレル騎士の背後に回り首を斬った。
血しぶきを吹き上げ騎士は絶命した。
あまりの早業に誰も声が出ない状態だった。
「ブラドーさん、何も・・・・・・・」
と茜は途中で話すのを止めた。
「女子よ。ブラドーが代わりに手を汚したんじゃ。
そなたでは人を殺めることは出来なかっただろ」
「姫様の意は存じ上げておりますが、この亜人の生存を最優先にさせていただきました」
と跪きながらブラドーは答えた。
「そうね。私では・・・・・・私だったら躊躇して失敗して亜人さんも助けられなかったかもしれない」
と茜はポツリと言うのであった。
「ヒール! 大丈夫ですか?ネコの亜人さん」
詩織がヒールを掛け近寄る。
「あ、あ、ありがとう。なぜ、人間が私たちを助ける。俺を騙そうとしているのか?」
若い猫の亜人は礼を言うが凄く警戒をしていた。
「だって、私たちはあなたに恨みなんてないから」
と茜が答えると顔には?の文字が浮かんでいた。
「私たちは異世界からの召喚者なんですよ。だからネコさんに恨みや憎しみなんてないですから。ヒール」
詩織は安心させるように優しい声で話し再度ヒールを掛けた。
「俺たちは異世界からの召喚者と戦っていたんだぞ!
多くの物がお前たちの仲間にやられたんだぞ!!」
「ひょっとすると水色の肌の人たち?」
「そうだ。あの残虐な奴らだ。お前たちも仲間なんだろ!!」
「違うわよ! あんなクソガキどもと一緒にしないでくれる。
私たちはもっと穏やかな世界から召喚されてきたのよ。
大魔王フェネクシーさんがあなたのところの親分を助けたいというから、やって来たの!!
だから案内してよ」
「騙されんぞ!フェネクシーのような大魔王がお前たちと一緒にいるわけないだろう」
「猫族よ、ワシがフェネクシーじゃて」
とフェネクシーは前に出てくるが
「人間のジジーじゃねーか!俺を謀るのか!!」
「仕方がないのー」
と変化の魔法を解き本来のナマケモノの姿に戻った。
「なんだよ、ジジーがナマケモノに変身したからって大魔王とは限らないだろう!
第一に大魔王の姿なんて殆ど知られてないんだよ!
だから、大魔王といわれても分からん!!」
茜と加奈はジト目で蔑むようにナマケモノを見た。
「あ~~軽蔑の眼差し!! う~~ん、これも美味!」
「じいさん、ヒキコモリ過ぎなんじゃないか? 大魔王と言われている割にはマイナー過ぎじゃね!?」
と織田は情け容赦のないツッコミを入れた。
「・・・・・・そ、そうかも知れん」
と膝から崩れ落ちたフェネクシーであった。
「なら、私は知っているか? 強欲の魔王・ジルド・ブラドーと言えばそこそこ名は通っていると思うのだが」
とネコの亜人の後ろから語りかけるのであった。。
「おお、ブラドー卿ではないですか。数年前、北の森の採掘場に来たので覚えています」
と振り向き後ろに立っていたブラドーを見た。
「あの時は世話になった。あの採掘場は良い鉱石が取れるからな」
「ダイヤモンドもある?」
「茜! 強奪するんじゃないわよ!」
と茜が欲の皮を張って会話に参入しようとするが加奈に注意されるのであった。
すったもんだの挙句、猫の亜人を馬車に乗せ北の森へ向かう事になった。
0
お気に入りに追加
781
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
TS剣闘士は異世界で何を見るか。
サイリウム
ファンタジー
目が覚めたらTSしていて、しかも奴隷になっていた。剣闘士として戦うことを運命づけられた"ジナ"は、『ビクトリア』という名前で闘技場に立つ。彼女はこの命が軽い異世界で、どう生き、何を見るのか。
現在更新の方を停止しております。先行更新はハーメルンにて行っているのでそちらの方をご覧ください。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる