上 下
117 / 304
第二部 お兄ちゃん、待っててね!/ラッキースケベは必・・・あぁ! そんなものねぇーよ!!

ファイレル城にて

しおりを挟む

その後、ファイレルの城に戻った茜たち一行はグレーコ2世に魔王討伐の報告をした。
ゴキブリの魔王・ゴキングを退治に成功した話は衝撃的なものであった。
ゲートの話、魔王の中で人間の好意的な者がいることなど驚愕的な話であった。
功績として全員に戦功勲章・白銀という最高位の勲章を全員が授かった。
ほとんど役立たずの男子にも。
この勲章も茜の力で9割獲得したようなものであった。
この白銀というのはグレーコ2世が若い頃、呼ばれていた二つ名であり、その二つ名から取られたものであった。

アルファも当然、受賞することになり茜に深く感謝をしたのであった。
国民はアルファを称えた。
「勇気ある偉大な王子」
「救国の英雄王子」

アルファは気恥ずかしいだけだった。

自分は何もしていない。
茜様のおかげだ。

だが素直に嬉しかった。
幾度と無く魔王に苦杯を舐めさせられていたアルファにとって魔王を討伐できたことが素直に嬉しかった。
自分の王子として、騎士としての誇りより国民を苦しめていた厄際を祓うことが出来たことが嬉しかった。
ファイレル王国を救うために働けたことが嬉しかった。


茜には特別にファイレル国から初めてSSランク・冒険者としても表彰された。
受賞後、茜は一言

「・・・・・・・でも、無職なのよね」

と。



叙勲式の後、茜たちは今後どうするのか話し合いをすることになった。
一つ目は、ゲートを使って日本へ戻るか?
二つ目は、次はどの国へ行けば良いか?

まず一つ目だが、茜は日本へ戻る気はさらさら無い。
兄の碧を探してから帰るので戻る選択肢は無かった。

「私はハルフェルナに残るから」
と加奈が言う。

「私も茜ちゃんと一緒に帰る」
と詩織も言う。

「私も残る」
と千代も続いた。

「みんな無理してない?」
茜が3人に聞くと

「碧さんが心配だから」
「碧さんにはお世話になっているから」
「私は則之さんが心配」
と詩織、加奈、千代が答えた。

「私も残る。将太君が気になるから」
と理紗も続いた。

「僕も残る。僕も最後でいいよ」
と平内が言う。

「平内、無理しない方がいいんじゃないか?」

「白田さん、僕、何も役に立っていないから、この世界で人助けの一つくらいしてからでないと帰れないよ」

「平内、お前、いい奴だな~」
と茜が平内の肩を叩く。

「茜ちゃん、にぶすぎる」
と詩織はつぶやくのであった。

平内を除く男子は帰る気満々だった。

「織田、お前は勇者なんだから封印の作業があるだろ、残りなさいよ!!」

と茜が言うと。

「白田が魔王を全員倒せばいいじゃん。別に封印する必要は無いんじゃないか?」
確かにそうなのだ。
役立たずの織田がいなくても問題は何一つ無い。

そこへ詩織が手を上げて
「あの~、メアリーさんが戻れると言っていたけど複数人が戻れるの?一人だけ?」

「しまった、それを聞いていなかった!!」
と茜が顔に手をやった。
誰もがコイツ、親父臭いしぐさをすると思うのであった。

「そこまで考えが及ばなかったわね。確証をえるまでゲートを使うのは止めておいたほうが良いかも?」
加奈が慎重論を唱える。

「一人は確実に戻れるのよね。もう、私たちがこっちへ来て2週間以上経過しているわよ。
 日本も大騒ぎになっていると思うの。
 確実に帰れる一人を日本へ送り返して事情を説明した方がいいんじゃないかしら」
詩織が堅実な提案をした。

「じゃ~ 俺が日本に戻ってみんなに知らせ・・・・・」
と織田が言い終わらないうちに茜がアイアンクローを噛ませ

「お前は9番目だ!! 私と一緒に日本に帰るんだよ!!」
と。

「私は桃花に戻ってもらいたいと思うのだけど。
 僧侶だし・・・・自分で身を守るのは難しいと思う。
 なにより私が巻き込んでしまったように思うの・・・・・」
と申し訳無さそうに茜が答えた。

「私は回復が出来るからみんなの役に立つと思うの・・・・・」

「桃花、遠慮するな」

「ううん、やっぱり残る」
と首を振りながら言った。

「だから、俺が日本に戻るから」
と織田が言った瞬間、

「お前だけは無い!!」

とアイアンクローが飛んできた。

話し合いの末、明石が戻る事になった。


二つ目は明石を送る足で西側に隣接しているウインレルへ向かうことにした。
ウインレルへは茜、加奈、詩織、織田、王子とお付の騎士二人で向かう事にした。

ファイレルとウインレルはとても親密な友好国で交易や交流が盛んに行われている。
ゴキングが乗っ取った城も有事の際の防衛拠点であるのが近年は交易の中継地点としての意味合いが強かった。
子爵の懐も潤っていたようだ。
そして、この城にはファイレル西側領地とウインレルに何かあったときのための援助物資の集積地でもあった。
そのためにゴキングに狙われたのかもしれない。

そして、ウインレルにはアルファの婚約者・聖女アリア・ウインレル第一王女がいる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。

黒ハット
ファンタジー
 前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした

せんせい
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ―――

処理中です...