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第2部 『華胥の国の願い姫』
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しおりを挟む「あのね『おまえらさくらのにわのこか』っていったの。」
「でぃのは『そうだよ』っておしえてあげたの。ねぇでぃのえらい?」
「うん、えらいね。」
ダメだなんて言えるわけもなく笑顔で話すふたりにすがるように抱きしめた。
駄目なのは『桜の庭』での暮らしを望んでしまった俺だ、口では迷惑をかけたくないなんて言いながら結局子供達を巻き込んでしまった。
「怖い思いさせてごめんね。」
「こわくないよね、ライ。」
「うん、ロイもこわくないよね……だからなかないでトウヤ。」
「ふふ、泣いてなんかないよ。」
子供達が怖がっていない事がせめてもの救いだと思おう、セオがいてくれた事もジェシカさんがいてくれた事も。
だけどノートンさんにはどうやって謝ったら良いんだろう。
「さっきの強気はどこにやったんだ?」
「だって……。」
からかうような声に顔を上げるとクラウスは俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「ほら、行くぞ。」
「どこへ?」
「何が起きたのか知りたいんじゃないのか?」
もう俺が悪いんだって分かってる。なのになんでクラウスは笑ってるんだろう。
理解が追いつかず座り込んだままの俺をクラウスはひょいっと立たせてしまうと手を引いてこちらに背を向けたままのノートンさんに向かって歩き出した。
「でぃのもいく。」
「ああ、来い来い。」
手を引かれるままわけも分からず歩く俺の空いてる手を握ったディノにも気安くそんな事を言からみんな付いてきちゃったけれど確かに置いて行くのは心配だ。
俺たちを取り巻いていた人垣はいつの間にか数人の騎士によって大きく追いやられいて、近づくノートンさんの足元では今もセオによって男がうつ伏せの状態で取り押さえられたままだ。
「だ~か~ら~何回言ったらわかってくれるの?話かけただけなんだってば。」
「言い訳は聞き飽きたこちらも何度も警告したはずだ!なのに『桜の庭』の愛し子に手を出すなんて今度こそ警告だけでは済まないぞ!」
「だから愛し子には興味ないの!俺は人を探してるだけだって、そのおじいさんに聞いてみてよ今回も本当になんにもしてないって。」
抵抗はみられないものの不満を訴える大きな声についてきた子供達は俺が頼りないらしくクラウスとノートンさんの後ろに身を隠した。もちろん俺も。
「来ても平気なのかい?」
「ええまあ。」
俺に少し視線を送りクラウスと言葉を交わすノートンさんも普段と変わらなくて俺はちょっとだけ安心した。
でも言い訳を聞く限りこの男が問題の冒険者っぽいのに本当に近づいて大丈夫なんだろうか。
「オースター、悪いがそいつの顔を見せてくれ。」
「おい、久しぶりなのに挨拶もなしか?まぁお前らしいけど……セオ見せてやれ。」
クラウスが話かけたのはいつか見た赤騎士の隊長さんだ。
「まさかこの男とお知り合いですか?」
「まあな、俺が責任取るからソイツを離してやってくれ。」
「ですがこの男はこれまでに何度も子供に声を───って、えっ?はっ!?」
クラウスと知り合いと聞いて隠れていたクラウスの後ろからそっと覗いたら目が合ったセオが俺を見て目をパチパチと瞬きさせた。
そう言えばセオが色違いの俺を見るのは初めてだ。
「大丈夫だ冬夜も知り合いだ。」
「ですが!」
「え?今トーヤって言った!?」
「うわっ!」
セオが体重をかけしっかりと抑え込んでいたはずなのに胸の下にあった片手一本で上体をセオごとガバリと持ち上げた冒険者は鮮やかなオレンジ色のベリーショート、
俺の記憶が確かならば間違いなくあの人だ。
「わ~っ誰かと思ったらクラウスさんじゃん!助けに来てくれたの?だったらこいつらに言ってやってよ俺は善良な冒険者だって!」
「────ロウさん?」
「───え?……誰!?」
俺はちゃんと思い出したのにロウには色違いのせいで気付いてもらえなかったらしい。おかげで再びセオに頭を地面に押さえ付けられてしまった。
「違うじゃないですかっ!!」
「イテテッ!ちょ、まって、ホントに違うから!クラウスさん助けて!」
そんなロウの必死の訴えなど聞こえないかの様にスルーしてクラウスは俺に向かって優しい顔で微笑んだ。
「ほらな、大したことなかったろ?」
「……うん。」
まさか自分に尋ねてきてくれる人がいるなんて思ってなかったからてっきり危惧してた出来事が起きたのだと思ってしまった。
クラウスがロウに気付いて俺を引っ張ってくれなかったら今も怯えてたかも知れない。
だからロウが気づかなかったのは俺のせいなんだけど思い掛けない再会を嬉しいと思うよりもついさっき感じた恐怖の方が勝ってしまって怖い思いをさせられた分もう少しセオにやられてしまえと思ってしまう。
「本当に知り合いかい?」
「あ、はいえっと…。」
ノートンさんに聞かれて説明しようとした時、3人組の冒険者風の男達が見物人をかき分けて輪の中になだれ込んで来た。
「うわ~っばっかだなぁお前とうとう捕まったのか!」
「だから目を話すなって言ったろ!?」
「……仲間と思われたくない。」
セオに抑え込まれジタバタともがくロウを誰一人助けようとしないその人達ももちろん懐かしい顔だった。
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