迷子の僕の異世界生活

クローナ

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報告と警告

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目が醒めて、眠ってしまった事を凄く後悔したけれど起きた途端目の前に大好きな人の顔があるのが幸せだ。

「おはよう冬夜。」

俺を呼ぶ声が心地よく耳に届く。

大好きな空の蒼色の瞳の金髪のイケメンがまだ開ききらない俺の瞼にちゅ、ちゅ、って優しくキスを落とす。触れてもらうことが嬉しくて多分凄くだらしない顔でへへって笑いながら俺も「おはよう。」って言ったら唇にもキスをくれた。

してほしいのに照れくさいからつい唇をむにょむにょしてしまう。でも今日はその唇をクラウスの指でつままれてしまった。

「嫌なのか?」

そのまま顔を小さく横に振ったらニヤって笑って今度はクラウスの唇でつまむようにキスされてしまった。そんな事されたら恥ずかしくて顔が熱いです。口から心臓出そうだし。

多分真っ赤になっている俺の顔を見て「可愛いな。」って前髪を掻き分けて今度はおでこにちゅってしたら抱き上げられて洗面へ連れて行かれた。

クラウスに子供抱っこされた鏡に映る俺の顔は予想以上に赤くて茹でダコみたいだ。

「こ…子供扱いしないで。」

照れ隠しにずっと言いたかった事を鏡の中のクラウスに言った。だって鏡の中の俺はマリーが抱っこしてるサーシャみたいなんだ。

「子供扱い?どこが?」

「どこがって……『可愛い』とかこうやってすぐ抱っこするのとか。お、俺の嫌がることしないんでしょ。」

しまった、正直クラウスにされる抱っこは嫌じゃなかったかもしれない。

「そうか困ったな。じゃあ次からは『綺麗だ』って言えばいいか?でも抱きしめるのと『抱っこ』とはどう分けたらいいんだ?」

腕から降ろして鏡の前に立たせると後ろから抱き締めてくれたけど真面目な顔で冗談を言って俺を鏡越しに覗き込んだ。

「き、綺麗は変だよ何言ってんの!?」

「ああ、俺も『綺麗』より『可愛い』の方が冬夜に似合ってると思うけど嫌なんだろう?」

「だから子供扱いしないでってば。」

「子供扱いじゃない、恋人扱いだ。あ、でも結婚したんだから嫁さん扱い?ん?妻?伴侶?なんて呼んだらいいんだ?」

真剣に悩みだしたクラウスの腕の中で向きを替えてその首にぎゅうって抱きついた。ずっと子供扱いされていると思っていたのに『恋人扱い』なんて言われたら嬉しくて照れくさい。

「また勘違いしてごめんなさい。恋人扱いなら大歓迎なのでいっぱいして下さい。あと…それからあの……俺は『クラウスのおよめさん』がいいです。」

日本語じゃ無いんだから文字の意味なんてどうでもいい。でもせっかく呼んでくれるのならマートがヘレナをそう呼んだように俺を呼んでくれたら2人の様な家族になれる気がする。

「なんだよ急にその言葉遣い。」

「だって恥ずかしいから。」

「ふふっやっぱり可愛いな俺のよめさんは。」

クラウスはそう言うと俺を抱き上げて顔中にキスをした。幸せすぎて昨日までの自分が嘘みたい。
今が夢じゃないって確信できるのはクラウスがくれたこの指輪のおかげだ。

あれからふとお互い我に返り、時間があまりない事に気がついて慌てて顔を洗って着替えをして宿を出た。今はお馬さんの上で揺られながらいつものマントを着せてもらった俺は遠慮なくクラウスにピッタリくっついて身体を預け、左手に光る指輪を眺めたいた。

ちなみに移動はずっと抱っこされてここまでほぼ歩いていません。

「そんなに気に入ってくれると思わなかったな。」

俺がぴったりくっついたままでもクラウスは器用に馬を操っていた。不安だった気持ちの反動なのか今までを取り戻すかのように俺はクラウスに甘えてる。それに近衛騎士になったクラウスにはもう簡単に逢えないのだからこの僅かな時間できるだけくっついてクラウスの温もりを覚えていたいんだ。

「当たり前だよ。だってこれクラウスと俺が結婚したって証なんだから。」

俺達は結婚したんだから離れていても忙しくて逢えなくてももう不安にならなくていい。その証の指輪が嬉しくないわけがない。

「そうだな俺達の婚姻の証だ。そのうち俺の両親にも会いに行こう、冬夜を紹介したいんだ。」

両親に、なんて俺の事を家族に紹介してくれると思ってくれるだけで嬉しい。だけど俺みたいなのがクラウスのおよめさんってちゃんと認めてもらえるかなって考えたら自信がない。

「うん。ありがとう。でも本当に怒られたりしない?あとユリウス様とかルシウスさんとか……。」

「あの2人なら大丈夫だ冬夜の事気に入ってるからな。両親も多分平気だ。それより俺にはこの後の方が問題だよ。」

そう言って俺の頭の上に顎を乗っけてクラウスがため息をつく。俺達はこれからノートンさんに2人で結婚の報告をするつもりだ。

「びっくりするだろうけどノートンさんなら心配しなくてもおめでとうって言ってくれるよ。」

昨日の夜、クラウスの誘いに渋る俺をノートンさんが送り出してくれなかったらまだ俺はクラウスからプロポーズされていなかったかもしれない。外泊まで許可してくれたおかげで今こうしてクラウスに『およめさん扱い』してもらって心がとっても満たされている。こんなに幸せな気持ちは生まれて初めてだ。

「そうかな?」

「そうだよ。」

そんなやり取りをしながら俺は優しい金色の瞳を思い浮かべ、クラウスと2人『桜の庭』へ戻りノートンさんの執務室のドアをノックした。




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