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休暇と告白
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しおりを挟むセオの休日 お留守番 ①
「何が違うんでしょうか。」
「何が違うんだろうね。でもなにか違うんだよね。」
今日はトウヤさんがお休みを取って2日目だ。
俺は今、残された昼食のお皿前にしてをノートンさんと2人台所で思案中だった。
トウヤさんの見様見真似でチビ達のおかずを小さく切ったし量も調整した。でも少しずつ残ってしまった。
ディノの皿に至ってはグチャグチャになっただけのような気がしてきた。
昨日の朝、起こしに行った時は俺の姿に大喜びしてくれたけど何時まで経っても姿を現さないトウヤさんをごまかせたのは朝食までだった。
「今日から3日間、トウヤくんにはお休みを取ってもらうことになったよ。君たちに内緒にしてたのは申し訳ないが顔を見たらきっとやめてしまったろうからね。その代わりセオが来てくれた。トウヤくんのいない間何かと不便だろうがみんなも手伝ってくれるかい?」
ノートンさんの話に子供達は「は~い」と返事をしたものの、3日は長いと思うのか声にいつもの元気が無かった。
それは子供達だけでは無かったようで朝食の回収兼昼食を運んできたカイも顔から残念感が否めなかった。
「そうですよね、本来これが当たり前なんですよね。僕らもすっかりトウヤさんに甘えきってましたね。」
子供達と遊びながら2回の洗濯は大変だった。何しろ小さいくせに着てる枚数が多い。肌着の上下に靴下、シャツにズボンにセーター。寝間着にタオルにシーツまで干していたら結構な時間になってしまい、教会から運ばれたトレイとかまで洗っていられなかった。だけどそもそもそれはこっちでやる事ではない。
そして初日はなんとかお昼寝も夕飯もシャワーも寝かしつけも俺という物珍しさからなんとか終わった。
2日目の朝はまず起こしに行ってカーテンを空け騎士団でやってる流れでついでに窓も開け放つ。
でもその時点でサーシャに「寒い」と怒られた。
「朝だぞ~起きろ~。」
その文句を無視して掛布を剥ぎ取っていく。ロイとライはお互いの体温で暖を求め、ディノは掛布にしがみついていた。
「ほら、朝だって。着替えするぞ~。」
パンパンと手を叩いて覚醒を促していると
「こんな寒くて寝間着が脱げるわけ無いだろ?」
とレインとマリーに怒られてしまった。慌てて窓を閉めて部屋の温度が上がるのを待つことになった。
「食事を食べる事まで違ってくるなんで少しトウヤさんに甘え過ぎじゃないんですか?」
やってみて分かったけれど着替えや食事の際のひと手間、昼寝や寝る前の読み聞かせ。半分くらいしかやれていないだろうけれどそれでも随分子供達に手が掛かる。
俺が『桜の庭』にいたのは1年程だったけれどその間何度も変わる働き手はあてにならずそれ故に自分でやれる事がもっとあった。
それに加えて洗濯に生活範囲の掃除。やる事がとにかく多いんだ。
「だけどトウヤくんが『僕の仕事です。』て言うんだよね。」
「それにしたって……」
ここで育つ俺達の様な者は自分で少しはやらなければ……と思ってしまう。
「いや、『甘やかすのが僕の仕事』って。自分でやりたくなるまでは親がやってあげるものでしょうって。思わず自分の古い記憶を探ってしまったらそのとおりだったよ。」
その言葉に自分の記憶を探ってみれば確かに自分で出来てしまうことも時には甘えて母の手を借りた懐かしい景色がよぎった。
「うちの子供達のいい子過ぎる所に甘えていたのは私の方だ。トウヤくんのおかげで最近は実に『子供らしい』んだよ。」
そして昼寝前。
「できた~みてみてとお……や。」
嬉しそうな顔を上げたディノがきょろきょろしてから俺を見てすごく残念そうな顔をした。
同じ顔をすでに全員にされている。そう、レインにまでされてしまった。
「なあトウヤ、袖のボタンが……と、いいか。」
俺と目が合うと、どこかに引っ掛けたであろう取れかけたボタンをハサミで切ってしまうとそれを筆入れの中に放り込んでいた。
「俺もボタンぐらいつけれるけど。」
「ああ、いいよ別に。それくらい俺もできるから。けどトウヤに直してもらったのってなんだかつけやすいんだよな。」
「あ、それわかる。できれば私の服のボタン全部つけ直して欲しいもん。」
「だよな、わざとやると怒るけど。」
相変わらずトウヤさんへの態度が気安い2人だ。この辺りが今までになかった『子供らしさ』を感じる所なのかも知れない。
「トウヤさんが怒るのはお前たちがからかうからだろう。」
「そんな事ないわよ、それに怒ると案外怖いんだから。この前なんかディノがわんわん泣いて謝ってたからね。」
意外な一面に驚いた。俺の知る限り彼の人は大抵のいたずらは笑ってやり過ごしてしまう。そんな人が一体何をそんな風に怒ったのだろうか気になってしまった。
夕食の後のシャワーはマリーとサーシャ、俺とロイ、ライ、ディノとさらにレインが一緒に入る事になった。普段はトウヤさんがチビ達をまとめて面倒見ているらしいが流石に女の子であるサーシャを俺が洗うのは問題がある様に思えた。
このシャワーも初日はちょっと困った事があった。
「レインはひとりでもいいだろう?」
「いや、俺もチビ達洗うの手伝うよ。な。」
「「「なぁ~」」」
確かに手は多いほうがいい。気持ちをありがたく受け取って男ばかりだし遠慮なしに服を脱いだ。
「せお、とおやとぜんぜんちがうね~」
「ちがうねぇ」
俺がディノの頭を洗っているとロイとライの小さな手が肩や胸や太腿をペタペタと触ってくる。
ディノには腹筋を撫で回された。
「当たり前だろ、セオさんは遠征に選ばれるくらい強いんだぞ。」
レインの褒め言葉は未熟な判断で死にかけた俺には耳が痛い。
「俺もなかなかだろ?なんせトウヤより重いからな。」
レインが腕に力を入れてチビ達に見せてやるとそれも小さい手がペタペタと触っていた。
確かに胸板もそこそこ厚くなってきている。
「そうだな、結構鍛えてるのか?」
「まあね」
嬉しそうににへっと笑うと自分の頭の泡を流してロイとライの頭を洗いだした。
「ねえせお。とおやはさわるとくすぐったいってわらうんだよ」
「あのねとおやはむねもおなかもぺったんこだよ」
「それにねぇとうやはまっしろでねぇあったまるとぴんくになるんだよぉ」
「あとねぇとうやのおしりはでぃのみたいに……」
「わぁ、ちょ、ちょっと待った!」
子供達が次々教えてくれるトウヤさんの聞いてはいけない情報に慌てて耳を塞いだ。おかげで泡が耳の中に入ってしまって洗い流すのに苦労する羽目になった。
それから夜は絵本を読むらしいのだけど1冊目の途中からトウヤさんの事を競うように俺に話してくれてその中で安心したのかだんだん寝落ちしていった。
だけど2日目の夜は名前を出すとかえって思い出して淋しく思うのかそれぞれ絵本を読むのを聴きながら掛布を深く被って眠った。
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