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休暇と告白
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しおりを挟むウォールのギルドを出ると、マントは脱いだまま町の中を並んで歩いた。
明るい町並は昨日の夜の賑やかさとはまるで様子が違っていたけれど、やっぱり観光客相手の土産物屋が目立っている。
紹介してもらった手芸屋もそんな通りの中にあった。
「クラウスは何色が好きなの?」
「─────黒?」
せっかくならクラウスの好きな色で作ったミサンガをプレゼントしたくて引き出しに並んだ刺繍糸を眺めながらした質問にはしばらく考えてから出した答えに何故か疑問符がついていた。
「できれば他に1つか2つ選んで欲しいな。」
「じゃあ白。」
確かに冒険者のクラウスが身につけてた服は黒ばかりだったから納得できるけどもう1つが白。即答してくれたけど、それじゃあお葬式みたいじゃん。こっちじゃどうか知らないけど香典袋の水引みたいでなんだか縁起が悪そうだ。
「も、もう1つ選んで欲しいなぁ。」
色に関してあまり興味なさそうで聞かないで作ってしまえば良かったかと一瞬思ってしまったけれど、何故か俺をじっと見たあとに「これがいい」と手にとったのは予想外の可愛いらしい薄いピンク色だった。
「クラウスって案外可愛らしい色が好きなんだね。」
「トウヤの色だからな。」
思わず口に出してしまった言葉に、クラウスは左耳にある昨日の夜に同じ色に光っていたピアスを人差し指でトントンと叩いた。
そういえばそのピアスと対だという『お守り』はクラウスの髪色と同じ金色と瞳の色と同じ空の蒼色だ。
じゃあクラウスが選んだ黒は俺の髪の色で……
手の中にあるのがクラウスの見立てた『俺の色』であることが急に照れくさくなる。必死でそれを隠しながら芯にする色に俺の好きな蒼を選んでお会計をして、それから店の外に並べてあったお土産物を覗いた。
手芸屋さんだけあって、手作りのブレスレットやぬいぐるみ、手袋なんかもある。
その中に可愛い刺繍がついたランチョンマットがあった。みんなへのお土産を何にしようか迷いながらあちこち覗いていたけど正直あんまりいいものがなくて困っていた。でもこれなら普段も使えるしいいかも知れない。悩みながらセオの分も入れて9種類の柄を見つけ出すことが出来た。
他にも戻りながら試食して美味しかったクッキーやチョコレートをお土産用に買ってクラウスのかばんにしまってもらう。
それから軽く昼ごはんを食べて1度宿に戻ることにした。
クラウスにどこか行きたいとこはないかと聞いても『ない』と云うだけだし、それなら限られている時間の中、早くミサンガを作って渡したかった。
「じゃあここ持っててくれる?」
早く作ってあげたい割には洗濯バサミなど無かった。かろうじて小さな裁縫セットの中にハサミがあったけどミサンガを抑えるものが無くてクラウスに持ってて貰うことになった。
「疲れたら言ってね?俺もなるべく早く編むから。あ、でも手を抜くわけじゃないからね、ちゃんと気持ちはたっぷり込めて作るから!」
そう宣言すると後は無駄なおしゃべりもせずひたすら手を動かした。
クラウスが怪我をしませんように、怪我をしても早く治りますように。寒い中見回りして風邪など引きませんように。
半刻ほどで編み上がったミサンガは黒とピンクと白の縦ストライプで終るまでクラウスは嫌がりもせず待っててくれた。
「前のも良かったけどトウヤみたいでいいな。」
結んだミサンガを優しい笑顔で眺められて嬉しいのと照れくさいのでいっぱいになってしまった俺は
「肩凝っちゃったからちょっとだけお風呂に浸かって来るね。」
とその場を逃げた。
「はあ~やっぱり気持ちいい。」
朝も入ってお昼もお風呂に入れるなんてホントに贅沢過ぎる。
この贅沢をプレゼントしてくれたクラウスは実は今あんまり元気がない────様に思う。
早く宿に戻りたかったのはそれが俺の気のせいか確かめたかったんだけど、さっきミサンガを結んだときも優しく笑ってくれたけどやっぱりなんか違う。それに普段もお喋りではないけど明らかに口数が減った。
原因は間違いなく俺なんだよね。ギルドで目覚めてからの会話を思い出しながら照れて熱の帯びた頬がお風呂のせいにできるぐらい温まったところでお湯から出ることにした。
明日の朝はまた早起きして王都に戻らなきゃいけない。クラウスが俺のせいで何か辛く感じてるのなら今日のうちに解決してしまいたかった。
ジャワ-を浴びて身支度を整え、鏡の前で気合を入れようと洗面台の前に立つとそこに何故か鮮血が落ちていた。
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